基本プレイ無料で再誕『サカつく2025』ベータテスト30時間先行プレイ感想。不満はありながらも、どっぷり熱中させた『サカつく』らしさ

過去作との違いから細かな不満点も抱いたものの、筆者個人の総評としては『サカつく2025』は間違いなくシリーズの遺伝子を受け継いでいると考えている。

スポーツを題材にしたゲームに求められる要素は何だろうか?筆者はそれをリアリティとロマンだと考えている。2025年現在、グローバルでのサッカークラブ経営シミュレーションを代表するゲームといえば『Football Manager』シリーズだ。こちらにもロマン要素は当然存在するものの、本来的にはリアリティ重視のシリーズとなっている。

その一方で同じくセガが手がける『プロサッカークラブをつくろう!』シリーズは、ロマン重視のサッカークラブ経営シミュレーションだ。1996年にシリーズ第1作目がセガサターンで発売された『プロサッカークラブをつくろう!』はヒット作となり、ワールドカップ出場といった日本サッカーの発展とともにシリーズは大きく成長していった。

そんな『プロサッカークラブをつくろう!』シリーズの最新作として、プロサッカークラブをつくろう!2025(以下、『サカつく2025』)が2025年にリリースされる(関連記事)。本作は基本プレイ無料タイトルではありつつも、家庭用ゲーム機を含むマルチプラットフォームでリリースされるのはシリーズ初の試みだ。シリーズをこよなく愛する筆者としては、基本プレイ無料タイトルに伴う選手ガチャの導入などについてプレイ前から不安があったことは否定できない。弊誌は『サカつく2025』のクローズドベータテストに参加する機会に恵まれた。約30時間の試遊を通じて得たインプレッションを、この記事でお伝えしたい。過去作との違いから細かな不満点も抱いたものの、筆者個人の総評としては『サカつく2025』は間違いなくシリーズの遺伝子を受け継いでいると考えている。なお、本記事の内容は開発中のもので、製品版の仕様とは異なる場合がある。

リアリティと非現実的な要素のほどよい融合が魅力的
『サカつく2025』では、プレイヤーは全権監督としてクラブを勝利へと導いていく。全権監督の仕事は多岐にわたるものだ。プレイヤーは選手交代や戦術変更といった試合中の采配はもちろん、選手の育成やクラブの経営にも関与する重要な存在となっている。プレイヤーが選手を直接操作するアクションのサッカーゲームではないからこそ、手繰り寄せた勝利の味わいはひとしおだ。プレイヤー自身のサッカーの知識と情熱が正しかったと思わせてくれる。

世界を相手に日本サッカーが強くなっていくファンタジーの要素が『サカつく』の魅力であったともいえる。育成シミュレーションと経営シミュレーションの要素が強いゲームシステムは最初こそ複雑に感じるかもしれないが、本作は丁寧なチュートリアルによって覚えていくことが可能だ。トレイラーで「Powered by Football Manager」の文言が登場していたように、本作のプレイフィールは同じくセガから販売されている『Football Manager』シリーズと似たものとなっている。

とはいえ、当然ながら『Football Manager』シリーズとはゲームとしてはかなり異なる。選手のスキルが発動することで意外な展開となったり、「光プレイ」と呼ばれる『サカつく』シリーズでお馴染みのスーパープレイも発生したりする。そうした『サカつく』ならではの華といえる要素は健在であり、本作が紛れもないシリーズの最新作であることを証明している。

試合の描写は、キックオフから試合終了までの展開は試合ごとに異なる。今回は手持ちのややスペック低めのiPadで試遊を行ったが、グラフィックを最高設定にした場合の60fpsで描写される選手たちの動きは終始滑らかだった。選手によるスキル発動が取り入れられた過去作では選手たちのグラフィックがデフォルメされていることもあったが、本作では選手たちが、等身大で描かれるようになっている。個人的にはこのことは歓迎しており、スーパーゴールが決まったときはまるで現実のサッカー中継を観ているかのように錯覚することもある。

過去作よりもリアリティが増していると感じる部分としては、実在するクラブのライセンスが搭載されていることが大きい。Jリーグのチームこそ以前から実名で収録されていたが、本作ではマンチェスター・シティFCといった海外の有名クラブも実名で登場する。ヨーロッパのナンバーワンを決めるUEFAチャンピオンズリーグを制するようなクラブが登場することはサッカーファンにとっては刺激的なことだ。

『サカつく』シリーズの初期はプレイヤーオリジナルのクラブを率いる形だったが、近作は既存のクラブを指揮することも可能となっている。それは本作でも変わらない。チュートリアルを兼ねた1年目はイングランドのコヴェントリー・シティFCでプレイしたが、2年目以降は指揮するクラブをプレイヤーが選択可能となっている。プレイヤーの分身である主人公は、ヘッドコーチから監督に抜擢された逸材だ。シリーズでは珍しくメインストーリーが展開されていき、ライバルの監督や手厳しいジャーナリストなどが登場する。

リーグ優勝や選手獲得などゲーム内の実績システムに相当するものをクリアしていくことで、「監督レベル」と呼ばれるプレイヤーのレベルが上がる。レベルが上がるにつれて選手を指名して獲得することができるようになったり、メインストーリーの続きを見ることができる仕組みだ。プレイヤーのやり込みに応じてシステムが開放されていくのは基本プレイ無料タイトルとしてはお馴染みだが、本作のメインストーリーとは噛み合わせが悪いように思う。というのもプレイヤーによってはクラブを転々とする場合があるため、主人公と登場人物とのやり取りがチグハグに感じてしまうところは否めない。

熱狂的にクラブを支えるコアサポーターやライバル監督が登場するストーリーは心に残るが、そうしたものをプレイヤーが見出していくのが『サカつく』の余白でもあったはずだ。そもそもがメインストーリーを読むタイミングがプレイヤーに委ねられており、本作で絶対的に必要であるとまでは思えない。ただし、メインストーリーの進行に応じてプレイヤーが就任可能な外国のリーグのクラブが開放されていくため、海外で指揮したい場合はストーリーを進めることが必須となっている。ストーリー形式の採用は理解できる。しかし、ストーリーそのものがやや遊び方を強制し窮屈に感じた。

シリーズお馴染みの架空選手も実在レジェンドも獲得可能

強い選手を自分のクラブに迎え入れるのが『サカつく』の醍醐味であり、毎月1回に更新されるリストを眺めるのは本作でもっとも心躍る瞬間の1つだ。各国の代表に名を連ねる有名選手がリストアップされたとき、その選手のリアルの情報を調べれば調べるほど獲得したくなる。クラブの予算や戦術との兼ね合いによって、どの選手を獲得するのかも全権監督の腕の見せ所といえる。

ほかのクラブから自分のクラブに選手を加入する際に発生する移籍金や、シーズン毎に選手に支払う年俸などは過去作より簡略化されている。選手獲得時の年俸交渉は存在するが、所属選手の契約更新時における契約年数や年俸交渉などは本作には存在しない。限られた予算をいかに節約するかはシリーズの特徴であったが、モバイル向けにも展開される本作ではテンポをより重視した結果になるだろう。

年俸の細かな駆け引きがなくなり『サカつく』の奥深さが減ってしまったようで少し残念ではあるが、テンポの良さは本作の長所の1つだ。進行速度を変更可能な試合を等倍速で観ても、1試合にかかる時間は10分に満たない。倍速や3倍速で試合を進行することもできるためシーズンを重ねることが過去作より快適となっており、本作は約30時間で7シーズンをプレイすることができた。

選手は実在する選手が登場するほか、『サカつく』シリーズオリジナルの架空選手も登場する。河本鬼茂といった作中の日本人選手でも最強格のストライカーの名前を見つけたときは、過去作で共に戦った記憶が蘇ってうれしくなった。2025年の現在こそ海外のクラブに所属して世界的に活躍している日本人選手は数多く存在するが、かつてはそうした選手は少なく最強を目指すうえで架空選手は重要な戦力だった。選手を獲得さえできれば三笘薫を左ウイングに配置して、センターフォワードの河本鬼茂で得点を量産することもできる。その可能性を楽しめるのは『サカつく』だけであり、これだけでもシリーズファンにとっては嬉しいことだ。

「マイナーズ」とファンから親しまれているコストパフォーマンスに優れた架空選手が登場するのも見逃せない。たとえば、アルガンチューワというサイドバックのマイナーズ選手に過去作でお世話になった人も多いだろう。アルガンチューワは本作にも登場し、彼を見つけたときは旧友と再会できた気持ちになった。ほかにも、GKからFWまでの各ポジションを兄弟でカバーする野呂兄弟も本作に登場する。ライセンスを取得して選手が実名で登場するようになっても『サカつく』オリジナルの架空選手は戦力的にも重要であるし、シリーズ経験者を喜ばせる。

リストアップされた選手を獲得するだけでなく、監督レベルを上げることで名前やポジションなどから検索した選手を直接獲得できる機能も開放される。ただし、資金さえあればどのような選手でも自分のクラブに加入させることができるわけではない。下位リーグに所属しているようなクラブの格が低い場合は、有名選手はプレイヤーのクラブに興味を示さない形だ。どうしてもその選手に来てほしい場合はそのクラブで実績を築き上げていくか、またはプレイヤーがより格の高いクラブの監督になるほかない。

選手側のキャリア形成という観点からするとリアルな仕組みであるが、本作ではいわゆるガチャでも選手を獲得可能になっているため一貫性に欠けている印象だ。ガチャで獲得した選手はクラブの格を問わずに加入させることができるため、レジェンド級の選手を下位リーグで無双させることも可能だ。

ガチャでのみ獲得可能な選手は、本作では「SP選手」と呼ばれる。ガチャで手に入る選手はやはり能力が高く設定されており、クローズドベータテストではクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシといった世界的なスーパースターたちを入手可能だった。ガチャはおそらく期間限定で選手が入れ替わる仕組みとなっているため、製品版ではレジェンド級の選手や急成長中の若手選手などが入手できるかもしれない。

強い選手をガチャで引き当てたときはテンションが上がるのだが、本編で獲得可能な選手よりもかなり強い印象だ。強い選手がガチャで気軽に手に入ることは喜ばしい。しかし、予算をやり繰りしたり、有名選手を口説いて自分のクラブに加入してもらうことへの苦労を台無しにしてしまいかねない。この点についてはゲーム開始後にプレイヤーが就任可能なクラブの格が低いことの影響が大きいと考えられるため、プレイしていくうちに本編ではより強い選手を獲得しやすくなっていくはず。

ガチャの運によって強い選手を獲得できるのだけでなく、全権監督としてのプレイヤーの腕前で強いクラブを築き上げる部分は残してほしいところだ。なお、ガチャは選手のほかに練習メニューのガチャも存在し、レアリティの高いものほど選手が成長する仕組みになっている。

プレイヤーのオリジナルクラブも設立可能

チュートリアルが充実していることは本作の美徳の1つに挙げられる。就任するクラブをオススメとして教えてくれるのは親切であるし、既存のチームを率いる場合は戦力もある程度揃っていてプレイしやすい。既存のクラブの全権監督になることができる一方で、プレイヤーがオリジナルクラブを立ち上げることも可能だ。オリジナルクラブを設立する場合はクラブ名はもちろん、本拠地やユニフォームのデザインなどを細かく設定できる。

チュートリアル後のガチャでメッシを入手できたため、筆者はメッシを中心としたオリジナルクラブでJリーグ制覇を目指すことを決意した。メッシの愛称である「レオ(Leo)」と過去作でオリジナルクラブを作成する場合に選択可能だった「レオーネ」をクラブ名として、そこに本拠地である大阪を付け加えた。メッシによるメッシのためのクラブ「レオーネ大阪」として、筆者オリジナルのクラブが誕生した瞬間だ。ちなみに、本拠地の大阪はAUTOMATONの本拠地である大阪に由来している。

レオーネ大阪はJ3からスタートし、まずはJ2への昇格を目指す。ガチャの選手は1シーズンにつき2名までしか加入させることができないため、チームを急激に強くすることはできない。初期所属選手である架空選手たちはそれなりの能力をもっているが、J2昇格やJ1優勝を考えるといずれは入れ替える必要もでてくるだろう。

率直に言ってメッシがJ3のクラブに加入することはリアリティに欠けるが、そこはファンタジーとして楽しめばいい。本作では所属選手に関するイベントがいくつも発生するため、選手への愛着が湧きやすいようになっている。さすがに個別の選手によるイベントが存在するわけではなさそうだが、選手の性格や特性に応じた反応が返ってくるのがおもしろい。たとえばメッシにはより優れたチームへの移籍願望を表明するイベントが発生したが、その後翻意してクラブに忠誠を誓ってくれるイベントが発生した。そうしたイベントを体験すると、メッシのためにレオーネ大阪を作った甲斐があったというものだ。

心温まるイベントも存在すれば、バッドイベントも存在する。たとえば、特定の選手を1か月起用しないことが求められるイベントであったり、選手のSNS炎上でコンディションが悪化したりといったプレイヤーにとってネガティブな影響しかないものだ。豊富なイベントはシーズンを繰り返すうえで刺激をプレイヤーにもたらすが、ネガティブなイベントばかりに遭遇するとなかなか気が滅入る。イベントは会話シーンを読み進めることで進むが、途中の文章をスキップできる機能は潔いといっていいだろう。見慣れたイベントを繰り返し体験するよりは、スキップして結果のみ把握できる方が断然いい。

日本から世界を目指せる難易度

オリジナルクラブでJリーグの各ディビジョンを駆け上がっていく場合、その難易度は適切だった。J3からJ2へ、J2からJ1へと昇格するのは簡単すぎず、難しすぎずといった印象だ。選手獲得や戦術が上手く噛み合えば1シーズンで昇格することも可能であるし、そうでない場合もシーズンを通して選手を鍛えることでクラブは確実に強くなっていく。

ただし、毎シーズンに1回につき難易度を調整する場面が存在する。同じリーグを簡単に連覇できるとつまらなくなってしまうことを防ぐ有用な機能だが、うかつに難易度を上げてしまうと後悔するだろう。1つ難易度を上げることで敵の強さがかなり変わってしまい、前シーズンは優勝争いをしていたにもかかわらずに、その翌シーズンは残留争いを強いられることもある。

本作では選手の能力やクラブの強さが数値化されている。これはプレイヤーが参照できる情報が増えたことを喜ぶべきかもしれないが、そのぶんロマンが減ってしまったところも否定できない。たとえば、チームの総合値でこちらが5万で相手が10万だったとするとほとんど勝ち目がなく、試合をする前から負けることがほぼわかってしまう。

ありとあらゆる能力が数値化されている一方で、アルファベットによるランク付けも存在する。強さの優劣をプレイヤーにわかりやすくするために搭載されていることは理解できるが、それにしても数字やランクに終始追い立てられているような印象も受けた。過去作でもお馴染みの選手評価コメントに出てくる「世界に通用」や「世界屈指の」といったテキストは残されているので、そうした表現でマイルドに余白をつけてくれると筆者は嬉しかった。が、できるだけデータは可視化させたほうがいいというアプローチも理解できる。

格下が格上を倒すことはサッカーではよく「ジャイアント・キリング」と呼ばれるが、それを自分のクラブで成し遂げたときはやはり興奮する。いくらメッシといった優れた数名のガチャ選手が存在しても、日本最高峰のJ1でチャンピオンになることは簡単ではない。数値的には自分のクラブを上回る存在が複数存在したが、ときおりそうしたチームに勝つことができた。最終節に勝利し、逆転でJ1チャンピオンになったときは達成感に包まれた。

最終節でゴールを決めてくれたのはメッシで、そのシーズンはメッシが得点王とアシスト王を受賞している。メッシによるメッシのためのクラブであるレオーネ大阪は、ついにその目標を達成して栄冠に輝いた。しかし、レオーネ大阪の戦いは終わらない。J1で優勝し、初めてリーグ戦で上位になったことでアジアナンバーワンのクラブを決める地域大会に翌シーズンは挑戦する。もしアジアを制することができれば、ヨーロッパや南米の強豪クラブと戦う機会もあるだろう。Jリーグは世界とつながっている。日本を代表するクラブから、世界的なクラブを目指すレオーネ大阪の新たな戦いは始まったばかりだ。

総評

最新の選手データを収録していることやトレンドの戦術をプレイヤーが使用できることは、サッカーゲームとしてのリアリティの担保につながっている。しかし、ときには現実ではありえないような移籍劇が起こったり、格下のクラブがはるかに格上のクラブを倒したりすることでロマンあふれる歴史が刻まれていく。サッカークラブ経営シミュレーションゲームとは、いわばプレイヤーだけの箱庭世界で歴史を積み重ねていくゲームでもあるのだ。

基本プレイ無料タイトルになったことによるガチャ要素やメインストーリー導入によるリーグ開放はノイズになっているものの、作中世界で続いていく歴史はプレイヤー独自のものであり、そうした歴史を継続的に楽しむことのできるポテンシャルが『サカつく2025』にはある。事実、筆者はいろいろ言いながらも30時間熱中してしまった。

『プロサッカークラブをつくろう!2025』は、2025年に配信予定。基本プレイ無料のタイトルとして、PS5/PS4/iOS/Android/PC(Steam)のマルチプラットフォームで展開される。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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