『S.T.A.L.K.E.R. 2』「PS5版」先行試遊プレイ感想。PS5 Proで味わう、常にギリギリの感覚でサバイバルする体験

今回プレイしたのは2025年11月20日に発売されるPS5版だ。なお、試遊ではPS5 Proでプレイしている。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、原子力発電所の大爆発によって汚染された地域が舞台のFPSだ。放射線の影響によって突然変異した生物が生息する「ゾーン」は危険でありながらも、人間に特殊な力をもたらす「アーティファクト」が入手可能な貴重な場所だ。アーティファクトを欲しがる人々は数多く存在し、「ストーカー」と呼ばれる無法者たちが集まる。ゾーンをめぐってさまざまな派閥が登場し、主人公は生き残るために死闘を繰り広げていく。

弊誌はそんな『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』を、先行プレイする機会を得た。本作は2024年にPC/Xbox Series X|S版が発売済みだが、今回プレイしたのは2025年11月20日に発売されるPS5版だ。なお、試遊ではPS5 Proでプレイしている。本稿では、約2時間の試遊を通じて得た本作のプレイフィールをお伝えしたい。


「死にゲー」的な難しさによって昂るサバイバルの達成感

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズの第4作目であり、2009年に発売された『S.T.A.L.K.E.R.: Call of Prypiat 』以来15年ぶりのシリーズ新作である。本作を開発するのは、ウクライナを拠点とするデベロッパーのGSC Game Worldだ。2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻という厳しい情勢のなかで開発に集中できない期間が存在した。大変な苦労がありながらも発売後の売上は好調であり、開発費を上回る黒字を計上しているという(関連記事)。

シリーズの特徴としては、とにかく高難易度であることが挙げられる。2007年に発売された『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chornobyl 』には今でいう死にゲーともいうべき要素が盛り込まれていた。数や装備で勝る敵に蜂の巣にされてゲームオーバーになってしまうこともしばしばで、トライ・アンド・エラーで難所を突破していくゲームだったといえよう。

本作でも原子力発電所によって汚染された地域を行き来することになるため、主人公の体力やスタミナのほかに、放射線蓄積量についてもプレイヤーは考慮しなければならない。ガイガーカウンターによって放射線を検知し、できるだけ放射線を避けていくことが重要となる。といってもこれは簡単なことではなく、混沌と化したゾーン周辺では戦闘が頻発に巻き起こるし、放射線の影響で変異してしまった動物であるミュータントも襲いかかってくる。生き残るために適切な判断を下し、それを迅速に実行していくことが求められるゲームとして、今回の試遊は常に緊張感に包まれた。であるからこそ、「死にゲー」的な難しさを突破したときに得られるサバイバルの高揚感はシリーズの大きな特徴といえるだろう。久しぶりの新作であるからといっても、シリーズの魅力の1つである高難易度とそれを乗り越えたときの達成感は健在だ。


美しくも暗いグラフィックと恐怖を掻き立てるサウンド

今回の試遊では冒頭のストーリーを体験できるデータと、ある程度装備がそろった状態の中盤に発生するミッションに挑戦するデータの2つが用意されていた。最初にプレイしたのは、冒頭のストーリーを体験できるほうだ。冒頭に流れるムービーによって、本作の主人公が置かれた状況や今後何をすべきかが説明されていく。

本作の主人公はスキフと呼ばれる男性だ。彼はアーティファクトをゾーンの外に持ち出してしてしまい、ゾーンの外ではアーティファクトは力を失って、「ダミー」となってしまう。アーティファクトがダミーになってしまう理由としては、ゾーンのなかで発生する「アノマリー」の力を失ってしまったことが原因になるようだ。そこで、ダミーにアノマリーを再充填させるためにゾーンへ再び赴くことになる。アノマリーの再充填にはスキャナーという装置が必要であり、その使い方を説明してくれるという科学者のネホダに会いに行く。

夜の闇を歩いて目的地に向かうことになるのだが、この闇は本当に暗い。ライトを付けなければほとんどなにも見えないほどの暗さだ。原子力発電所の大爆発によって封鎖されたエリアは崩壊しているため、とりわけ夜は真っ暗闇となる。音もリアルかつ不気味なもので、自分以外の足音がしたかと思えば、獣のような咆哮が聞こえてくることもあった。敵と遭遇する前から自分が恐ろしい場所にいることが理解できるほど、高品質のグラフィックとサウンドは本作のホラー要素を強調している。

その一方で、昼間は美しさに目を奪われるような光景も目にすることができる。崩壊したゾーンはどこも退廃的ではありながらも、降り注ぐ太陽によってきらびやかな自然の営みを感じられる部分もあるのも事実だ。PS5 Pro向けにグラフィックの最適化もうまく行われているようで、光の表現についてはとりわけ目を奪われるほど美しい。


数的不利の戦いやシリーズお馴染みの強敵も出現する序盤

本作の冒頭を試遊するデータでは、知らぬ間にミュータントの接近を許していたこともあった。犬のようなミュータントの動きは機敏でプレイヤーを翻弄し、こちらの銃撃はロクにあたらない。犬の一撃の威力は高くないものの、ほかの犬もやってきて1対2や1対3のような数的不利になってしまうと話が違ってくる。敵意を持つ犬の接近はゲームオーバーにつながってくるため、聞こえてくる音に耳を済ませてできるだけ無用な戦闘を回避することを試みた。

なんとか犬を振り切って、当初の目的である科学者のネホダの居場所へと急ぐ。たどり着いたのはいいものの、彼を含めた科学者たちは全員死んでいた。科学者たちはどうやら誰かに殺されたようだが、その犯人はわからない。主人公の目標であるダミーの力を取り戻すために、アノマリーをセットできる場所を探す。アノマリーはゾーン内で発生する超常現象で、雷や炎を発生させる危険なものだ。当然のことながらアノマリーに曝されると、あっという間に死んでしまう。ダミーにアノマリーの力を再充填させるのは命がけの行為なので、細心の注意が必要だ。具体的にはセンサーの鳴る音の大きさで、アノマリーとの距離を推察し、地面を注意深く観察しながら足を進めていく。

さらに、センサーの音を辿ることで新たなアーティファクトを見つけることができた。アーティファクトはベルトに装着することで、さまざまな効果を得られる装備品のようなものだ。被爆率が下がったり、体力が向上したりするアーティファクトは攻略上も有用なものとなっている。早速アーティファクトを装備しようとしたが、何やら様子がおかしい。周囲に敵はいないことを確認したにもかかわらず、どこからか攻撃を食らっている。混乱しながらも辺りをあらためて観察していると、シリーズでお馴染みの吸血鬼ブラッドサッカーが襲いかかってきているところだった。ブラッドサッカーは透明能力を持っているため、極めて手強い相手だ。とてもじゃないが、序盤からもっている精度の低い銃では楽に勝てる相手ではない。ここは逃げの一手だ。

這々の体で逃げた先にまっていたのは、訓練された兵士だった。しかも、相手は3人は確実にいる。おびき寄せて1対1で処理したいところだが、誘いに乗ってこない。それどころか、離れた距離から手榴弾を放ってきてこちらが隠れているところがバレてしまった。防戦一方で時間をかけて突破したが、冒頭のミッションでこれほどまでの殺意の高さを見せてくれるのは、『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』ならではといっていいだろう。


ギリギリの感覚で困難を乗り越える醍醐味が生き残った実感に

試遊の後半でプレイしたのは、「星を目指す」というミッションだ。沼地の基地に設置されたビーコンを無力化させていくミッションで、本作のストーリー中盤で登場するものになるという。中盤まで進めたセーブデータを用いて装備が充実していたので、装備の整わない序盤のセーブデータよりも快適に戦闘をすることができる、と思っていた。しかし、こちらはこちらでまた別の問題が待ち受けている。

ビーコンは沼地の4つの離れた場所に設置されている。1つずつビーコンを探し出して無力化させていくことになるが、沼地に生い茂る草によって見通しが悪い。さらに沼地に足を取られて思うような速度で進むことができない。そうしたプレイヤーの隙をつく形で、ミュータントや敵対勢力が襲いかかってくる。視界不良のなかで聞こえてくるミュータントの唸り声と、けたたましく鳴り響く銃声は恐怖そのものだった。

沼地に足を取られながらも目的に向けて敵を蹴散らしていくが、どうやら様子がおかしい。一度倒したはずの敵が復活する。ゾンビのようなもので、倒しても倒しても復活してくる敵には心底うんざりさせられた。敵の復活に気づいた時点で殲滅することは諦め、いかに敵の攻撃を回避してビーコンを無力化させるべきかを考えるようになった。かなりリスクのある進め方だったが、適切なタイミングでダッシュをすることで敵を翻弄することができたと思う。ゾンビのような敵も1度倒すと少しの間は止まるので、ダッシュと攻撃を組み合わせてハイペースで先に進んでいく。銃の性能にもよるが、DualSenseによるエイムアシストはかなり使い勝手がよかったように思う。DualSenseのハプティックフィードバックやアダプティブトリガーに対応しているため、高い没入感でプレイ可能だ。

なんとか4つのビーコンを無力化したときは、回復薬も弾丸も残り少なくなっていたが、初見でここまでやれたのは上出来だといえるかもしれない。本作はたしかに高難易度ではあるものの、周囲の状況に気を配って正しい判断をすることでゲームを先に進めていけるようになっている。このぎりぎりな感覚で困難を乗り越えることこそが『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』の醍醐味であり、生き残った時間をプレイヤーにもたらす。また、難易度設定については開発が推奨する「ストーカー」よりも1つ簡単な「ルーキー」も用意されている。試遊の残り時間で「ルーキー」を試したところ、被ダメージなどが格段に減っていた。プレイ中はいつでも難易度を変更できるので、自分に合った難易度でプレイするといいだろう。オートセーブは搭載されているが、本作はかなり短い頻度で新しい展開が巻き起こる。セーブデータのロードは短いながらも、瞬時に読み込みが完了するものではなかった。強敵に出くわしてゲームオーバーになりそうだと感じた場合は手動セーブも適宜行うと、快適にプレイできるので使い分けていきたいところだ。


総評

カルト的な人気を誇ったシリーズの最新作として、『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は過去作の魅力を失っていない。高難易度でありながらもそれを乗り越えたときの達成感は抜群であるし、リアルなグラフィックと環境音によって適切な状況判断が生き残りに直結してくる。PS5のコントローラーであるDualSenseによる操作性も洗練されており、直感的に操作できる部分が大きいだろう。原子力発電所とさまざまな勢力がひしめき合う世界観は独自のものがあり、本作はストーリー重視のシングルプレイFPSとして独自の存在感を放っている。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』のPS5版は、2025年11月20日に発売される。価格はStandard Editionが8778円(税込)、Deluxe Editionが1万1528円(税込)、Ultimate Editionが1万5928円(税込)。なお、パッケージ版はStandard Editionのみで販売される。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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