『レインボーシックス シージ エックス』6v6の新モード「Dual Front」先行プレイ感想。タクティカルだがかなり難解 、連携要求強めのMOBAライク体験

本稿では大きな目玉となる「Dual Front」モードをリリースに先立ってプレイしたインプレッションをお届けする。

ユービーアイソフトは3月14日(金)、『レインボーシックス シージ』の大型アップデートを発表した。タイトルの名称が『レインボーシックス シージ エックス(以下、シージ X)』に刷新され、グラフィックの高解像度化などを含む複数のアップデートがなされるほか、6対6で戦う新モード「デュアルフロント(Dual Front)」が登場する。

本稿では大きな目玉となる「Dual Front」モードをリリースに先立ってプレイしたインプレッションをお届けする。『シージ』をリリース当初からプレイしている筆者としては“『シージ』の魅力を活かした新たなアプローチでありつつも、新規プレイヤーが手に取るにはややハードルが高い”と結論付けた。どのように『シージ』のゲームプレイが変化するのかも含めて詳しくみていこう。

「Dual Front」は“攻守を同時に行う”新モード

「Dual Front」とは、名前の通り二正面のフィールドを舞台に、6v6に分かれて攻守を同時に行う常設ゲームモードだ。

マップは左右対称のデザインでゾーンAとゾーンBにわけられている。両チームはそれぞれのゾーンに設けられたセクターを順番に開放し、どちらかが最終セクター(HQ)を確保することを目標に戦う。拠点の確保は「サボタージュキット」を敵陣のエリア内に設置して一定時間守り抜くことで達成できる(つまるところディフューザーだ)。

サボタージュキット起動中のセクター確保には2つのチェックポイントがあり、チェックポイントに到達すれば、次回の設置時はその地点から再開される(チェックポイントに達すれば、そこまでの努力は無駄にならない)。なお、互いにセクター確保できず試合が長引くと、サボタージュキット設置後に必要な時間が短縮される措置がなされる。

また、マップ中央部では「追加ミッション」も発生する。達成すると“バフ”のようなものを獲得できる。今回の先行プレイでは、ミッション地点に登場するDokkaebiを保護して回収するというものであった(人質確保の要領だ)。

「Dual Front」の最大の特徴は「同時攻防」であり、両チームにアタッカーとディフェンダーの役割が常に用意されている。自陣を守りながら敵陣を攻めるという複雑な戦術判断が求められ、常に全体の戦況を見据えたプレイが必要となるだろう。

既存モードとの違い―自由なオペレーターピックと戦略性

オペレーター(キャラクター)については、通常のモードではアタッカー・ディフェンダーでわけられているが、「Dual Front」では関係なくピック(選択)可能だ。選択できるオペレーターは25人で、シーズンごとに変化していく。なお、試合中ではリスポーンが可能であり、オペレーターも変更可能だ。

そのほか、セクターには破壊(補強)可能な壁や落とし戸があるほか、有刺鉄線やトラップを設定するなど、通常のモードのように『シージ』の特徴であるクリエイティブな攻防を楽しめる。お馴染みのドローンもあるが、バッテリー式となっていて、試合の間ずっと同じ場所にカメラのように置いておくことはできない。

新要素「ラペリングダッシュ」や環境オブジェクト

『シージ X』に追加される新たな要素も「Dual Front」を通じて確認することができた。破壊すると一時的にスモークが展開され、爆発の近くに居るとコンカッションを食らう「消化器」や、一定時間にわたって火を放ち、通行を阻害する「ガスパイプ」などマップに仕掛けが追加されている。エリア分断や新たな駆け引きに用いられるだろう。

そのほか、ラペリングでのスプリント(ダッシュ)が可能となり、さらに建物外壁の角を曲がれるようになった。「Dual Front」は広大なマップ故にこれを上手く活用し、スピード感のある移動をすることでライバルに差を付けられるかもしれない。

また、コミュニケーションホイールも追加された。感謝や助けを求めるほか「破壊する」「補強せよ」といった本作ならではのコミュニケーションも、チャットせずにとれるようになった。

ニッチだが「武器を見る」モーションも登場。スキンやチャームをゆっくり眺められる。これまで多くのコスメティックアイテムを集めてきたプレイヤーや、銃火器が大好きなミリタリーファンにとっては念願の機能だろう。

チームプレイが鍵、連携が勝利の決め手

「Dual Front」を3戦ほどプレイした第一印象は“難解”であった。単純な攻防ではなく、前線の押し引きと情報収集力、ときに必要となる思い切りの良さなど、『シージ』の魅力と難しさを少し押し上げている。一方で、考えることが非常に多いモードだ。攻撃する場所、防衛する場所の位置関係をしっかりと把握したうえで敵の情報をさぐり行動を決定していくスキームは、MOBAにも近いように感じた。追加ミッションの時間管理などもMOBAの要素に近い。

また、(これはローンチまでに変更される可能性もあるとのことだが)通常のモードと比較して体力は高めに設定されているようだ。負傷した際の体力も同様に高く、ちょっと撃っただけで確定キルまでもっていけない。

これにより交戦時間は長くなり、例え負傷させられてもカバーがあればなんとかなる場面も生まれる。連携すること(複数人で共に行動すること)の重要性は、通常のモードよりも高いと考えてよいだろう。

リスポーンについては、倒されても約30秒後に復活できる。マップが広いため前線の復帰まではやや時間がかかるため、ソロで動いて倒された際のペナルティやデメリットは大きい。あまたのFPSでは「結局はガンプレイで解決する」という勝利への究極の近道があり、『シージ』も通常のモードではそうだが、「Dual Front」ではそれがしにくくなっているというわけだ。

新規プレイヤーにはやや高いハードル、改善余地は多い

ここまで述べてきた通り、総じて“連携をさせたい”という意図を感じさせるデザインのゲームモードである。それぞれの目標へ攻撃・防衛するために時間を管理しながら下準備をする様子や、リスポーンはあるが倒された際の大きなデメリットはMOBAのようで、しっかり身体を寄せ合ってカバーを取り合う堅実さが求められる。

『シージ』の魅力はその難解さゆえに、細かなガジェットの組み合わせや破壊可能な壁を用いた立ち回りなど“巧みの技”が光るため、「Dual Front」も理解が深まることで味が染み出てくるのだろう。

また、『シージ X』から追加される、ラペリング中のダッシュやコミュニケーションホイール、「武器を見る」モーションなどは、本作をより“モダン”なゲームに感じさせる。この大規模アップデートは「次の10年の始まりとなる」位置づけとされ、そのスタートラインに立ったと言えるのかもしれない。

一方で、「Dual Front」は新規プレイヤーにとって高いハードルであるようにも感じた。攻守が同時に展開される難解さに加えて、なにをすべきかがイマイチわかりにくい。画面UIがゲームの進行を表現しきれていないほか、自身が攻撃・防衛のどちらをすべきかの判断を下すのが難しい。

2人・4人にわかれて攻撃・防衛をそれぞれ担うなどの戦略性はあるが、新たに追加されたコミュニケーションホイールでは力不足に感じた。意思を示す機能の追加など、ミニマップを含むUIには大幅な改良の余地があるだろう。

つまるところ「Dual Front」は、ガジェットのシナジーや破壊可能なマップを活かした戦略など『シージ』の魅力を題材に、ゲームルールの拡張にアプローチしている。『シージ』は噛めば噛むほど味の出るスルメゲーであり、「Dual Front」も噛み砕いていくことで、既存モードと張り合えるほど魅力的なモードとして定着するポテンシャルはあるだろう。

一方で『シージ』の基本的なゲームメカニクスとはまったく異なり、このモードで得た知識が既存モードであまり活きにくい。「Dual Front」を新規プレイヤーにオススメしたいかと聞かれたら、筆者としての答えはNOだ。

意欲的な取り組みであるものの、総じて「たまに追加されるイベントモードのひとつ」のような印象であった。少なくともタイトル名称が変更されるほどのインパクトをもたらす要素のひとつかは疑問である。とはいえ、新たな挑戦は始まったばかり。今後どのようにこうしたモードやゲームが拡張されていくのか、注視していこう。

『レインボーシックス シージ』はPC/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売中。『レインボーシックス シージ エックス』はYear10 season2にて実装予定だ。なお、本作ではフリーアクセスを導入。「Dual Front」を含むカジュアル、AI戦、アンランクは無料版でもプレイ可能だが、ランクおよびシージカップは有料版でのみアクセス可能となる。既存のプレイヤーは全てのモードに引き続きアクセスできる。

Sakutaro Okano
Sakutaro Okano

フッ軽ゲームライター。生きている実感を得るため、FPSを中心にド派手なハリウッド的アクションゲームを貪って生きている。

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