Ocufes in Osaka開催。気軽にVRと触れあえるイベント、関西初上陸

「Oculus Rift の名前はよく聞くし、ヴァーチャル・リアリティにも興味はある。でも個人で購入して導入するのも大変そうだし、結局 YouTube で両眼表示の映像を見ているだけ」……。VR の最先鋒として注目を集める Ouclus Rift ですが、いまだ一般向けリリースではなく開発機の販売にとどまっており、デベロッパー以外のユーザー達が遊ぶには多少の壁が残っている状況となっています。

そんな Oculus Rift を一般ユーザーが手軽に体験できる場として催されているのが「Oculus Festival in Japan」こと「Ocufes」です。本イベントは、2013年8月開催にはじまり、すでに日本では通算10回目。そして今年3月29日、大阪駅直結の複合施設グランフロント大阪にて「Ocufes in Osaka」として関西初上陸を果たしました。

 


様々な VR デバイスと交わる Oculus Rift

 

Rayzar Hydra を使用した『振り子ワイヤーアクション』。クリア率は5人に1人。ステージ最後に登場する球体へとワイヤーを放てばクリアとなるものの、筆者は球体を目の前にしながらゲームオーバー。
Rayzar Hydra を使用した『振り子ワイヤーアクション』。クリア率は5人に1人。ステージ最後に登場する球体へとワイヤーを放てばクリアとなるものの、筆者は球体を目の前にしながらゲームオーバー。

 

当日は10作品以上が会議室ほどのスペースにところせましと敷きつめられていました。各出展者がノート PC と Oculus Rift をそれぞれ机に広げるなか、同時に並べられた多種多様な VR デバイスに筆者は目を奪われました。

わっふるめーかーの『振り子ワイヤーアクション』は、Razer USA が2011年に放ったPC向けのモーションコントローラー「Razer Hydra」と Oculus Rift を使用したタイトル。両腕から伸びる接着式のワイヤーを天井に放ち、自身を振り子のようにして前身していくというタイトルで、わかりやすくいうならば『スパイダーマン』を疑似体験できるゲームです。Razer Hydra で実際に両腕を交互に差し出し、さらに Oculus Rift で左右上下を見渡しつつ進んでいくと、足がすくむような感覚に襲われます。

 

3D 自動車シミュレーター。自動車の運転に不慣れであたふたする筆者に「難しいですよね」とフォローが何度も飛ぶ
3D 自動車シミュレーター。自動車の運転に不慣れであたふたする筆者に「難しいですよね」とフォローが何度も飛ぶ

 

こりん氏の『3D 自動車シミュレーター』。ひと目見ればその内容がわかります。ハンドル型コントローラーを操作して車の駐車に挑戦するという内容で、やはり最大の特徴は Oculus Rift にて視点を横や後方やへと即座に向けられる点です。今さら免許取得しようとしている筆者も憧れの「後ろを覗き込みながらバック」を体感しましたが、シフトレバーの入力をよく間違え他の車をボコボコにヘコますほどクラッシュを連発。公道デビューへの道はまだまだ遠そうです。

 

カラムーチョで脳をハイにしてプレイしていたのかもしれない『Perilous Dimension』。手前に見えるのが小型モーションコントローラー「Leap Motion」
カラムーチョで脳をハイにしてプレイしていたのかもしれない『Perilous Dimension』。手前に見えるのが小型モーションコントローラー「Leap Motion」

 

野生の男氏のタイトル『Perilous Dimension』。京都にて先日開催されたインディーゲームサミット「BitSummit 2014」へも出展されていました。2012年に Leap Motion 社が販売を開始した小型モーションコントローラー「Leap Motion」と Oculus Rift を使用したシューティングゲームです。Oculus Rift を装着した状態で首を振るとヘッドトラッキングセンサーにより自機である”オロチ”が方向転換、Leap Motion 上で10本の指を動かすと敵である鉱物生命体”ゼルガニウム”をロックオンし破壊できるという内容です。広大に広がる宇宙の中を自由に遊泳し、指をワキワキさせ破壊光線で無数のクリスタルを粉砕していく様子はなんともきらびやかです。

 


ミクさんからファンタジーさらに現代戦まで

 

魔改造で手を装着したNocint Falcon
魔改造で手を装着したNocint Falcon

 

Miku Miku Akushuの画面
Miku Miku Akushuの画面

 

GOROman 氏が公開していた『Miku Miku Akushu』は、米国の Novint Technologies 社が販売している主力デバイス「Nocint Falcon」を使用した作品。「Nocint Falcon」は、本来はビデオゲームやアプリケーションにおけるマウス操作を置き換え、実際に銃を持つような形で FPS のエイム操作などが楽しめるこのデバイスです。しかし流石ジャパンと言うべきか、『Miku Miku Akush』では 銃のグリップを手に換装しており、Oculus Rift を通して見た Tda 式 Append ミクと平和の象徴である握手ができるという、二次元仮想コミュニケーション・ソフトウェアへと進化しています。手を左右に振るとミクさんが踊り、急に引っ張ると驚き、その姿を Oculus Rift を通して観察することができるのです。筆者は個人的に一番好きなゲームキャラクター Duke Nukem さんとも握手したいなと思いました。

 

こちらは Kirurobo team のヴァーチャル着ぐるみ
こちらは Kirurobo team のヴァーチャル着ぐるみ

 

ハッと我に帰って Oculus Rift を外すと、目の前に居るのはモーションキャプチャ装置を付けた男性でした
ハッと我に帰って Oculus Rift を外すと、目の前に居るのはモーションキャプチャ装置を付けた男性でした

 

またミク関連では Kirurobo team のモーションキャプチャを使用した面白い試みも登場。「ヴァーチャル着ぐるみ」はモーション・キャプチャのスーツを装着した人を Oculus Rift を通して見ると別のキャラクターに見えるというソフトウェアです。装着している人物、いわゆる中の人は男性なのに、Oculus Rift を通して見るとミクさんというなんとも不思議なフィーリングです。そしてモーションキャプチャゆえに握手したり相手から肩を掴んで貰ったりといった行為も可能で、思わず脳内でアンモラルな空気が漂います。「Ocufes in Osaka」で体感した中では「向こうの世界に精神を引っ張られる感」を最も強く感じ入りました。もし複数人で Oculus Rift を装着すれば、まさにバーチャル着ぐるみ、バーチャルコスプレ、夢の国の住人となるような感覚を楽しむことができるでしょう。

 

Kinect とスマートフォンで動作する『VRアクションゲーム』
Kinect とスマートフォンで動作する『VRアクションゲーム』

 

華麗な剣捌きを見せるのほほん氏
華麗な剣捌きを見せるのほほん氏

 

のほほん氏が手がける『VRアクションゲーム』は Unity 製の剣戟アクションゲーム。両手に持ったスマートフォンが各種操作デバイスとなり、さらに剣で斬ったり盾で敵の攻撃を防ぐといった腕を振るう動作をモーションセンサー Kinect で感知します。わかりやすく言うならば一人称視点の『キングスフィールド』あるいは『Demon’s Souls』。プレイアブルデモは敵が一体出てくるだけという内容でしたが、盾で敵の攻撃を防いだり、自身の位置を調整して敵の攻撃を避けたり、隙を見て敵に斬撃を入れていく剣戟のフィーリングは好感触でした。

 

イベントスペースで豪快なエアガンの音を鳴り響かせていた『VR-FPS システム』
イベントスペースで豪快なエアガンの音を鳴り響かせていた『VR-FPS システム』

 

プレイしたタイトルは『Battlefield 4』。すでにクリアした筈が実際に身体を使って遊ぶと全く違うプレイフィーリングに
プレイしたタイトルは『Battlefield 4』。すでにクリアした筈が実際に身体を使って遊ぶと全く違うプレイフィーリングに

 

会場でひときわインパクトを放っていたのがyytune氏による「バーチャル・リアリティFPSシステム」。Kinect による音声認識とジェスチャー、Wii リモコンによる姿勢推定、さらに Oculus Rift による立体視とヘッドトラッキングが融合したシステムで、ただ単に銃口で狙いをつけるだけでなく、自身が取る姿勢に連動してゲーム内のキャラクターが立ったりしゃがんだり、銃のボディに頬をつけるとエイムしたりします。『Battlefield 4』など一般的な FPS であれば基本的にはどんなものでも動作させることが可能だそうです。身体を動かし銃を振り敵をエイムして撃つのは、普段マウス&キーボードで操作するのとは全く別の感触、まさに VR シューター。銃はマルイ製のエアガンを採用しており重量およそ 3kg、運動不足で貧弱な肩の筋肉が壊れました。

 

編集長兼主筆の安田が BitSummit 2014にてアイディア賞ものであると述べ、また BitSummit でも大賞である「BitSummit アワード」を獲得した『Modern Zombie Taxi Driver>』。Ocufes in Osaka の中ではかなり高い完成度を誇っていたタイトルで、思わず商品化するの?と聞いてみると「GDC で興味のあるパブリッシャーと話してきたよ」とチラリ
編集長兼主筆の安田が BitSummit 2014にてアイディア賞ものであると述べ、また BitSummit でも大賞である「BitSummit アワード」を獲得した『Modern Zombie Taxi Driver>』。Ocufes in Osaka の中ではかなり高い完成度を誇っていたタイトルで、思わず商品化するの?と聞いてみると「GDC で興味のあるパブリッシャーと話してきたよ」とチラリ

 

Epic Games Japan からは Unreal Engine 4 のプレイアブルデモも登場、雪原の上に立つ城を散策し、光弾を放つことが可能。美麗なパーティクルに埋もれる。先日からサブスクリプションモデルも開始された Unreal Engine は Oculus Rift への統合サポートも行われており、Unity などと並んで Oculus Rift 用のゲーム作成に使えるエンジンの1つ
Epic Games Japan からは Unreal Engine 4 のプレイアブルデモも登場、雪原の上に立つ城を散策し、光弾を放つことが可能。美麗なパーティクルに埋もれる。先日からサブスクリプションモデルも開始された Unreal Engine は Oculus Rift への統合サポートも行われており、Unity などと並んで Oculus Rift 用のゲーム作成に使えるエンジンの1つ

 


コントローラーでもありパノラマモニターでもある Oculus Rift

 

日本に見せる日本人のための日本人が作った「Oculus最初の一本」という着想、そしてふとスポーツニュースで見た女子高生スキージャンパーが融合して生まれた『VR SKI JUMP』
日本に見せる日本人のための日本人が作った「Oculus最初の一本」という着想、そしてふとスポーツニュースで見た女子高生スキージャンパーが融合して生まれた『VR SKI JUMP』

 

大阪だからと頼んでもいないのにポーズを取ってくださった桜田 一門氏
大阪だからと頼んでもいないのにポーズを取ってくださった桜田 一門氏

 

「大阪だから」とコメディアンポーズで迎え入れてくれた桜花一門氏の作品『VR SKI JUMP』は、スキージャンプが体感出来る VR ソフトウェア。Oculus Rift に搭載された加速度センサーがジャンプ後の姿勢の伸びを計算する仕組み。多種多様な追加ハードウェアが並ぶ中、頭に Oculus Rift を装着するだけでプレイが可能な作品となっていました。スキー後はしっかりテレマークをキャラクターが取り、記憶新しいオリンピックなど大会さながらに視線を上方へ向けると電光掲示板でスコアを確認することができます。

 

ドラゴンシミュレーター『Dralus』。手前はミクが立体に見える AR イメージ
ドラゴンシミュレーター『Dralus』。手前はミクが立体に見える AR イメージ

 

同じくヴァザプライ氏が公開していたドラゴンシミュレーターこと『dralus』もほぼ Oculus Rift のみで動作する作品。ドラゴンを操作して空中に浮かぶリングを全て集めるという同作は、マウスのクリックで前へ進む以外は全て Oculus Rift のヘッドトラッキングにて操作することが可能。ようするに自分が首を向けた方向へとドラゴンが進んでくれるというわけです。位置トラッキングでの操作はコツが求められるものの慣れるとレースゲームのカーブを格好良くキメるような感覚で曲がることが可能でした。ニンテンドー64の『スーパマン64』よりもはるかにスムーズな操作ができます(個人の感想です)。「ドラゴンが実際に空を飛ぶ時ってこんな感じなのかなあ」と思いつつ、なんとか全てのリング獲得に成功しました。

 

海外ではプレイ映像もアップロードされている『Hunted Rift』
海外ではプレイ映像もアップロードされている『Hunted Rift』

 

さてここまではコントローラーや Oculus Rift での操作を有する VR ソフトウェアを紹介してきましたが、会場にはこの他にも Oculus Rift にてムービーやイメージを360度見渡す作品も登場していました。Unity で作成されたという yuujii 氏の『Haunted Rift』は、洋館の中を移動していく「バーチャルお化け屋敷」とでもいう内容で、美麗なレベルエリアに思わず興味津々になってしまいました。エログロホラーゲーム好きとして興味深かったのは「横へ視線を向ける」という動作で、例えば音が鳴った方に視線を向けたり、意味深に開いている扉の隙間から部屋の中をのぞいたりと、どこから恐怖現象が飛びだしてくるのか、ホラー好きにとってはまるで宝物探しのような気分にひたれます。

 

ゲーム関連ではないものの、inouek3d氏が公開していたのがニューヨークの美術館「Metropolitan Museum」などのパノラマイメージ。実写ということもあってか群を抜いて臨場感のある作品で、まさにバーチャル美術館。その他にも博物館や世界遺産、そして会場となったグランフロント大阪などの3Dパノラマムービーを見せていただきました
ゲーム関連ではないものの、inouek3d氏が公開していたのがニューヨークの美術館「Metropolitan Museum」などのパノラマイメージ。実写ということもあってか群を抜いて臨場感のある作品で、まさにバーチャル美術館。その他にも博物館や世界遺産、そして会場となったグランフロント大阪などの3Dパノラマムービーを見せていただきました

 

撮影に使ったカメラ機材の1つ。ウェアラブルカメラである GoPro3 を複数使用しており、これで360度を全て一度に撮影できる
撮影に使ったカメラ機材の1つ。ウェアラブルカメラである GoPro3 を複数使用しており、これで360度を全て一度に撮影できる

 

二宮 章氏はパノラマコンテンツを専業でやっているデザインスタジオ <a data-cke-saved-href="http://pencil-jp.net/ target=" href="http://pencil-jp.net/ target=" _blank"="">Pencil の主宰であり、パノラマムービー情報ブログ Qtvr Diary の編集長。京都での祭りを撮影したパノラマムービーは、Oculus Rift を使用するとダンジリがまるで目の前を通っているような圧倒的な臨場感
二宮 章氏はパノラマコンテンツを専業でやっているデザインスタジオ <a data-cke-saved-href=”http://pencil-jp.net/ target=” href=”http://pencil-jp.net/ target=” _blank”=””>Pencil の主宰であり、パノラマムービー情報ブログ Qtvr Diary の編集長。京都での祭りを撮影したパノラマムービーは、Oculus Rift を使用するとダンジリがまるで目の前を通っているような圧倒的な臨場感

 

二宮氏によると沖縄の海でダイビングの際に撮影する機器とのこと。360度見渡せる VR ダイビングは非常に興味深いものとなりそうです。Pencil では10万円以下からパノラマコンテンツの製作を請け負っており、家庭で Oculus Rift を使いつつ旅や結婚式の記録を見る……という未来も遠くはない模様
二宮氏によると沖縄の海でダイビングの際に撮影する機器とのこと。360度見渡せる VR ダイビングは非常に興味深いものとなりそうです。Pencil では10万円以下からパノラマコンテンツの製作を請け負っており、家庭で Oculus Rift を使いつつ旅や結婚式の記録を見る……という未来も遠くはない模様

 


関西初上陸の「Ocufes」、Oculus Rift の可能性に触れられるイベント

 

VR の可能性に叫ぶヴァザプライ氏(※ 装着しているのは Oculus Rift ではありません)
VR の可能性に叫ぶヴァザプライ氏(※ 装着しているのは Oculus Rift ではありません)

 

当日会場となった梅田グランフロント7階はショップが並ぶ1階や2階と比較すると人の流れはけっして多くありません。にもかかわらず会議室ほどの大きさの部屋は人であふれかえり、数十分ごとに主催者が交代をうながすような状況が続いていました。また、Oculus Rift について興味をもっていなかったであろう層が、VR に触れ感嘆の声を挙げていた場面も。主催者の方々に聞いてみたところ、筆者が足を運んだタイミング以前には1時間待ちの状況が続いていたそうで、イベント全体では軽く200人以上もの来場者数だったとのこと。

Layzer Hydra から Wii コントローラーで装飾したエアガン、Kinect、さらには GoPro 3 までを所持している人などそうそう実在しません。「Ocufes」はmOculus Rift を持っていない人が参加するという VR 初体験の場にはとどまりません。 様々なデベロッパー達による Oculus Rift と VR ハードウェアの新たな試みや、VR の可能性を垣間見ることができるイベントとなっていました。すでに Oculus Rift を所持しているゲーマーやデベロッパー、そしてもちろん Oculus Rift に興味があるゲームファンにも強くお薦めできます。

次回の Ocufes はニコニコ超会議3にてニコニコ運営支援企画の「超 Ocufes」として4月26日および27日に開催予定です。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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