『オクトパストラベラー0』先行プレイ感想。町作りシステムの実装により、「日常」と「非日常」の両面から仲間たちと共に歩めるRPG体験

弊誌は本作を先行してプレイする機会に恵まれた。約2時間分の試遊を通じて得たインプレッションを、この記事でお伝えしたい。

『オクトパストラベラー0』は日常と非日常を繰り返すRPGだ。冒険の拠点となる町を作り変えることのできるタウンビルドという要素が新たに搭載されたことで、旅をしてないときのキャラクター同士のやり取りを見ることができるようになった。キャラクターたちにとって新たな故郷での日常があるからこそ、旅先での非日常が際立つ。過去作にはなかった日常と非日常の繰り返しによって、より濃密な人間ドラマが期待できるものとなっている。

弊誌は本作を先行してプレイする機会に恵まれた。約2時間分の試遊を通じて得たインプレッションを、この記事でお伝えしたい。なお、開発中のバージョンを使用してプレイしたため、一部の内容は製品版と異なるおそれがある。

8人パーティーでより多彩な攻防が実現したバトル

試遊は時間の都合上の関係で、メインストーリーがある程度進んだところから始まった。仲間はすでに8人以上が揃っており、前衛4人と後衛4人による最大戦力でモンスターと戦いを繰り広げていく。前衛と後衛はそれぞれの列に基づいている。たとえば、1列目の前衛のキャラクターを後衛に下げると、1列目の後衛のキャラクターと入れ替わるという仕組みだ。このときにペナルティは発生せず、同じ列の前衛と後衛ならば同一のターン内で入れ替えることができる。

ターンが回ってきたときは前衛のキャラクターが基本的に行動するため、後衛のキャラクターは前衛と交代するまでは出番がない。しかし、本作は各キャラが使える武器種や技が原則的に固有のものになっているので、より効果的に立ち回るうちに8人全員がバトルに積極的に参加することも多い。敵モンスターには弱点が設定されており、有効な武器種や属性の魔法で攻撃することでバトルを優位に進めていくことができる。

正直なところ、いきなり8人の仲間が存在して、その仲間の武器や技が異なるというのはかなり理解するのが大変だった。製品版ではメインストーリーに沿って仲間が順次増えていく形式のため、無理なくキャラクターの特徴を覚えていけそうで安心だ。一応バトル中にもそのキャラクターが使う武器種は表示してくれるし、技の説明文も読むことができる。

パーテイー8人が積極的に戦闘に参加すべき理由としては、「ブレイク(BREAK)」と「ブースト(BOOST)」という本作独自のバトルシステムを使いこなすことが勝利につながるからだ。ブレイクは敵の弱点を突くことでシールドポイントが減少し、0まで削れば敵を行動不能のブレイク状態に追い込むことができる。ターン制のバトルにおいて相手の行動回数を減らせるメリットは大きい。さらに、ブレイク状態の敵には弱点属性問わずに大ダメージが見込めるため、相性の関係から後衛に置かざるを得なかったキャラクターも輝かせることが可能だ。

ブレイクが相手を弱らせるバトルシステムであるとすれば、ブーストは自キャラクターが強くなるバトルシステムだ。ターン毎に溜まるBP(ブーストポイント)で行動を強化することで、攻撃の威力や、回復技や補助効果も強化される。ブーストしてから攻めに出るべきか守るに出るべきかは状況によるため、プレイヤーはまるで将棋の終局を読み切るような冷静さが要求されるといっても過言ではないだろう。そうした「オクトパストラベラー」シリーズにおけるバトルの特徴は8人編成という大所帯になっても健在であり、前衛と後衛を適切なタイミングで交代させることでより柔軟な戦い方ができるようになっている。

相手の弱点を突いてブレイクさせることが重要となってくるため、多彩な攻撃魔法を持っているキャラクターは飛び抜けて強い。今回の試遊では敵全体に闇属性の魔法を放つ「大暗闇魔法」を持つアレクシアが際立って強かった。アレクシアはしかも「ついでにしらべる」という固有のアビリティを持っており、攻撃後に未判別のものから新たな弱点を明らかにしてくれる。アレクシアの大暗闇魔法で敵の弱点を突きつつ、敵の新たな弱点も自動的に判明するといった具合だ。当然のことながら挑戦するダンジョンによって戦う敵が変わってくるため、アレクシアがメインストーリー中ずっと強いことはないだろう。そうしたことを念頭にしつつも、今回の試遊ではアレクシアの強さは一際輝いていた。

故郷の日常と旅先の非日常によるメリハリが利いたストーリー

世界各地を旅する目的がウィッシュベールの復興につながるところは、これまでのシリーズ経験者にとっては新鮮だった。過去作は旅の仲間ではあっても、成り行きで仲間になっているところがあり、心を通じ合わせた仲間に思えないこともしばしばあったからだ。故郷での生活を日常とするならば、旅先での冒険は非日常であるといえる。日常と非日常の繰り返しによってキャラクターたちの関係性がより丁寧に描写され、プレイヤーはキャラクターに愛着を持つようになる。

たとえば、フェンと呼ばれる主人公の兄貴分のキャラクターは日常と非日常では役割がまったく異なる。拠点では酒場の主人として仕事に励んでいるが、冒険に出かけるときは主人公に次ぐリーダーの1人だ。メインストーリーのとある箇所でフェンは着実に復興を遂げていくウィッシュベールを眺めながら、「今度は必ず守る」と密かに誓いを立てていた。この誓いを達成するためにフェンは積極的に冒険に出かけるし、町の復興に必要な人物の助けを求めることもいとわない。フェンの覚悟とその実践は試遊の2時間で体験したストーリーでも丹念に表現されており、日常と非日常の確かなつながりを感じさせるものだった。

たしかなつながりを感じさせる一方で、日常と非日常でギャップが生じることが本作のストーリーにメリハリをつけている。試遊でプレイしたストーリーは「ルド」と呼ばれる商人をウィッシュベールにスカウトする場面だった。ここまでなら日常といえる範囲かもしれないが、ルドが近くに巣食うリザードマンの討伐を仲間になる条件として提示してきたところから非日常感が強くなっていく。

リザードマンの群れを一掃することは主人公たちにとって簡単なことではなく、苦戦に次ぐ苦戦となってしまう。しかし、もはやこれまでという場面では胸がすくような展開が待っているし、その熱量を投入したボス戦は高揚感に満ちあふれたものだ。RPGとしての王道的な展開をきちんと踏まえた上で、フェンや主人公たちによる日常からの願いを達成させていくところが爽やかでやり甲斐があると感じた。

試遊でも遠慮なく殺りにくる歯ごたえ抜群のボス戦

『オクトパストラベラー』シリーズのバトルは、かなりの難易度といってもいいだろう。相手の弱点を突いてブレイクを狙っていくことや自身を強化するブーストを使うべきタイミングを考える1ターンには、戦局を左右する重さが存在する。とりわけ、プレイヤーの選択が重要になってくるのはボス戦だ。強敵は1撃でプレイヤーキャラクターのHPを半分以上削っていく。

そもそも、試遊のボス戦は2連戦だった。1戦目に今回の標的である「リザードマンの長」が登場しないことから薄々気がついていたが、まさか試遊で2連戦を戦うことになることは事前には予想できない。RPGのお約束でもあり、シリーズでよくある展開を踏襲した試遊の2連戦は短い時間で理解に努めた知識を発揮する絶好の機会だったといえよう。1戦目で負ったダメージの回復に真っ先に取り掛かり、相手の弱点を調べていく。弱点さえわかれば相手のシールドポイントを削ってブレイクを積極的に狙う。

相手をブレイクさせたら、こちらは溜めていたBPを使ってブーストしてから大ダメージを狙っていく。最大レベルまでブーストしてから攻撃を繰り出すことで、通常時とは桁違いのダメージを叩き出すことができる。この際のダメージは圧倒的なもので、ブレイク前で非ブースト時は3桁のダメージだったものが、マックスまでブーストした主人公の全体攻撃技の「突撃」はブレイク状態のリザードマンに2600台のダメージを与えることができた。

ブレイク状態の敵は弱点に関係なく大ダメージが見込めるので、いかにブレイク状態に攻撃を連続で叩き込めるかが勝利のカギとなる。言い換えれば、敵がブレイクしたときにこちらがブーストできるように事前に考えておくことが必要だ。前衛と後衛の8人パーティーになったことでブーストに必要なBPがターンの進行によって溜まりやすくなり、相手をブレイクさせたときにBPが溜まったキャラクターが輝く場面となる。そのキャラクターが持つ武器や技から特定のバトルで活躍が限定される場面がRPGにはよく存在するが、そうしたところを解消するバトルシステムになっているといえるだろう。

リザードマンの長と本格的に事を構える前に、お供のリザードマンを先に片付けようと目論んでいたがそれは甘かった。お供といえどもかなりHPのあるリザードマン2体を倒したあとにまっていたのは、リザードマンの長による新たな敵の補充だ。せっかく築き上げた数の優位が台無しになったようで精神的なダメージを受けたが、新たに召喚されたリザードマンは先の個体から弱点がわかっているのが救いである。相手の弱点がわかっているという情報は本作のバトルにおいて大きな強みであり、いつ相手をブレイクさせるかも思いのままだ。

情報は勝利へ直結しており、バトルを完全に支配したかのような気持ちにさせてくれる。雑魚敵のリザードマンを適当にあしらいつつ、今度は本命のリザードマンの長へダメージを与えていく。シールドポイントこそ通常のリザードマンより大きいが、戦闘を継続するうちに判明した弱点の数々を突けばブレイクさせるのは難しいことではない。完全にこのバトルをコントロールして、最後はブーストしてからの弓による全体攻撃の必殺技「狩王女ドレファンドの猛追 LV.3」で敵を一掃。この必殺技はボスに4000を超えるダメージを叩き出し、とにかく爽快な一撃でバトルを締めることができた。

新要素として可能性に満ちたタウンビルド

タウンビルドは試遊で触れられたのは少しだけだ。ウィッシュベールは思いの外広く、ストーリー進行に応じて建物や施設を設置できるエリアが広がっていくそうだ。素材さえ揃えば建物の設置は簡単で家庭用ゲーム機コントローラーのスティック操作でも、問題なく自分好みの街並みを追求できる。

作成できるものは建物だけではなく、木や花といった装飾品も町に配置可能。こだわりを感じたのは地面の装飾だ。土や石畳といったさまざまな種類が用意されているほか、塗ることのできる範囲にもこだわっており、1マスから3×3マスと広く塗ることも可能。設置済みの建物もそのままスキンを変更できるようになっているし、とにかく快適にタウンビルドを楽しめるようになっているのは好印象だ。

建築して終わりではなく、各施設に住民を配置してさまざまな恩恵を得ることも復興のために重要である。たとえば訓練場を建てると人数が多すぎてバトルに参加させることのできないキャラクターを預けることで強くなることができる。必殺技の習得などもできるようなので、メインストーリーが進むにつれて激化が予想されるバトルを乗り越えていくには重要な施設となるだろう。

タウンビルドは建築や住人の配置など、プレイヤーがウィッシュベールを故郷であると感じる大きな助けとなるが、場合によっては面倒に感じる部分もあるかもしれない。というのは、各施設は建築すればその機能をフルに発揮できるというわけではなく、貴重な素材アイテムによってグレードアップしないと真の機能を発揮できないからだ。グレードアップや住人の配置などは一部のプレイヤーにとっては面倒に受け取られかねない仕様であり、過去作と同じ旅に特化したRPGをプレイしたいユーザーは馴染めないおそれが存在する。定番化しつつあった人気シリーズに大胆な新要素を取り入れる開発陣の試みはクリエイティブの発現として称賛に値するが、それが上手くいっているかについては製品版でのチェックが必要となりそうだ。

総評

日常と非日常を繰り返すことでキャラクターへの愛着が深まるストーリーが、過去作からの大きな違いとなっている。故郷を作り込むタウンビルドと旅先で冒険するストーリーはたしかにつながっており、それぞれでの出来事を通じてキャラクターたちのやり取りが展開されていく。ドット絵と3D背景が融合したHD-2Dのグラフィックや、歯応えのあるターン制コマンドバトルといった『オクトパストラベラー』シリーズならではの持ち味も健在。相手の弱点を突いて行動不能に追い込むブレイクと、こちらがパワーアップするブーストを上手く使いこなすことができたときはターン制バトル全体を支配しているかのような高揚感をもたらしてくれる。過去作には存在しなかったタウンビルドは本作でもっとも注目すべきポイントの1つだが、膨大なボリュームのあるタウンビルドが功を奏しているかは製品版を待ちたいところだ。

『オクトパストラベラー0』は、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/Switch 2/PC(Windows/Steam)向けに12月4日に発売予定。なお、Steam版は12月5日に発売予定となっている。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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