NVIDIAのDLSS 4.5「フレーム6倍」でどれだけ変わるのか実際に検証してみた。ヌルヌル動いて自然さも前進、着実な進化を感じた最新アップデート

本稿では複数タイトルでの検証を通じて、6Xモードやダイナミック マルチフレーム生成によって数値や感覚がどう変わるのかを確認していく。

NVIDIAの超解像技術「DLSS 4.5」において、3月31日に「マルチフレーム生成6Xモード」と、状況に応じて生成倍率を切り替える「ダイナミック マルチフレーム生成」が導入された。なかでも6Xモードは、最大4倍だったフレーム生成をさらに6倍まで引き上げ、パストレーシングのような高負荷設定でも240fps以上のパフォーマンスが可能だと謳う。

6倍と聞いて浮かんだのは、「体験にどれほどの差が出るのか」という疑問だった。最大フレームレートが大きく伸びても、200fps以上の違いは正直体感しづらい。逆に遅延や破綻が増え、実際のプレイ感覚が変わってしまっては意味がないだろう。

しかし実際に触ってみると、印象はかなり違う。目立っていたのは、高いfpsといった派手な数値よりも、高負荷時の安定感だ。6Xモードは重い場面でもフレームレートを底上げし、ダイナミック マルチフレーム生成は画質と滑らかさのバランスを取りやすくしている。DLSS 4.5は、負荷の高いグラフィック設定やゲームを「無理して動かすもの」ではなく、現実的な選択肢にもう一歩近づける、想像以上に堅実なアップデートだった。

弊誌は今回、DLSS 4.5のアップデートを先行体験する機会に恵まれた。本稿では複数タイトルでの検証を通じて、6Xモードやダイナミック マルチフレーム生成によって数値や感覚がどう変わるのかを確認していく。

DLSS 4.5は何が変わったのか

DLSS 4.5の主な要素は、「第2世代Transformerモデル」「マルチフレーム生成6Xモード」「ダイナミック マルチフレーム生成」の3つだ。なお、マルチフレーム生成はGeForce RTX 50シリーズ限定の機能となる。

第2世代Transformerモデルは今年1月に実装済みのもので、従来より5倍以上に増えた学習量をもとに、精細で安定した映像表現を実現する新たなAIモデルだ。1月のNVIDIA新技術体験会でも、その効果により画面全体の空気感が向上したデモを確認できた(関連記事)。

今回追加されたマルチフレーム生成6Xモードは、1枚のレンダリングフレームに対してAI生成フレームを最大5枚追加し、表示フレーム数を大きく引き上げるという機能だ。従来のDLSS 4では最大4倍のフレーム生成が可能だったが、DLSS 4.5ではフレーム生成のペーシングや品質が改善し、最大6倍に拡張。より高いフレームレートを狙いやすくなった。

Image Credit: NVIDIA on YouTube

もうひとつの新機能であるダイナミック マルチフレーム生成は、生成倍率を固定せず、モニターのリフレッシュレートや目標fpsに応じて自動で増減させるというもの。重い場面では倍率を上げ、軽い場面では必要以上に生成しすぎないよう抑えることで、画質や応答性の向上を狙う機能だ。さらに一部のタイトルでは、ゲームエンジン由来の追加データを活用することで、ミニマップやクロスヘアといった固定UIの表示安定性も改善されている。以下では、実際に対応タイトルでどのような差が出たのかを見ていきたい。

高負荷設定とフレームレートを両立する、6Xモードの実力

今回の検証環境は、GPUにGeForce RTX 5070 Ti、CPUにAMD Ryzen 7 7800X3D、メモリ32GBという構成。モニターの解像度はWQHD(2560×1440)、リフレッシュレートは320Hzのものを使用した。

まず検証したのは『サイバーパンク2077』だ。グラフィックはパストレーシングを含む最高設定「レイトレーシング: オーバードライブ」、DLSSはクオリティに設定。DLC「仮初の自由」で訪れるブラックマーケットを1分間往復し、主にDLSS 4相当の4X生成モードと、今回追加された6X生成モードを比較した。

まず驚かされたのは、6Xモードが想像以上に自然に動いていたことだ。ブラックマーケットは人通りが多く、ネオンや蛍光灯、積まれた電子機器からの間接光も多いかなり負荷の重いロケーションである。しかも今回は別格に処理の重い、パストレーシング込みの設定だ。相応の重さを覚悟していたが、実際に歩いてみると拍子抜けするほど動きが軽い。一方で、水溜りに反射する光の質感や、柔らかい影などの表現力が明確に向上しており、しっかりとパストレーシングが効いたうえで快適な動作を実現していることがわかる。

「レイトレーシング: ウルトラ」設定
「レイトレーシング: オーバードライブ」(パストレーシング)設定

限られた光源をシミュレートするレイトレーシングと異なり、シーン全体の光の反射や散乱を再現するパストレーシングには膨大な処理能力が必要だ。『サイバーパンク2077』にパストレーシングが実装された際にNVIDIAが公開したデモ映像でも、当時の最高級モデルであるRTX 4090とDLSS 3を用いて、ようやく100前後のfpsを出すことができていた。パストレーシングは「最高級の構成でないとできない」あるいは「フレームレートを犠牲にしなければならない」という認識は、筆者だけでなく多くのゲーマーが根強く持っていたものだろう。

FrameViewによる検証結果

だからこそ、今回の検証での数字の伸びは印象的だ。ベンチマークツールFrameViewを用いた計測では、パストレーシング・6Xモード設定にて平均249fpsを記録。DLSS 4相当の4Xモードと比べても約80fps上昇していた。検証に用いたRTX 5070 Tiはミドルとハイエンドの中間的なモデルであり、単純なベンチマークスコアでは前世代のRTX 4090にまだまだ劣る。にもかかわらず前述のデモ映像よりも約2.5倍のfpsを記録しているのは、それだけDLSSやフレーム生成技術が進歩していることを意味する。NVIDIAのデモ映像とは検証環境が異なる点には注意が必要だが、6Xモードはこれまでのパストレーシングに対するイメージを覆すには十分な体験だった。

6Xモードの真価は、ピーク性能より「安定感」にある

6Xモードは数値面でのインパクトが大きい一方で、もっとも価値を感じたのはむしろそれ以外の「安定感」にある。先ほどの検証では、1%以下の高負荷時のfpsを示す「1% Low fps」は、4Xモードと比較して約25fps伸びていた。実際に人ごみや戦闘、ドライブなど高負荷な状況を試してみても、急にfpsが落ち込むような「息切れ感」を感じる場面は少なく安心感がある。

懸念していた映像の破綻や残像に関しても、通常プレイしていて気になることはなかった。視点を大きく振った場面でUIや表示が一瞬ガタつくことはあるが、感覚としてはDLSS 4の4Xモードとほぼ同じであり、これまでマルチフレーム生成で問題なくプレイできていたユーザーなら問題ないレベルに抑えられている。DLSS 4.5で導入されたAIモデルであり、ちらつきや残像を軽減し「時間的な安定性」を高めるという、第2世代Transformerの恩恵も感じられる部分だ。

遅延(レイテンシ)についても、ベンチマーク上では4Xモードの平均47msに対し、6Xモードでは平均50msとわずかに増加していたが、体感差は感じなかった。一方で、フレーム生成を使わないDLSSのみの状態と比べると約10msの差が生じており、PvPタイトルではこの差も惜しいと感じるプレイヤーはいるだろう。ただ、少なくとも今回のようなシングルプレイ作品では、その差以上に高画質かつ高フレームレートで遊べるメリットのほうが強く感じられた。

6Xモードによる200fps以上の高いフレームレートは一見魅力的だが、それ以上の数字になると違いが見えにくいのが正直なところ。高リフレッシュレートのモニターが無い環境であればなおさらだろう。その中で、処理の重い場面でのfpsの落ち込みにくさ、映像の破綻の少なさといった安定性に関しては、ゲームをプレイするうえで確かに改善されているのが実感できた。不安定な場面がゼロになったわけではないが、フレーム生成特有の違和感を一歩ずつ減らし、高画質設定をより自然にプレイできるものへ変えていく。そうした着実な進化の方向性がうかがえた。

残像感を抑え、幅広い環境で有効なダイナミック マルチフレーム生成

続いて、今回のアップデートで追加されたもうひとつの主要機能「ダイナミック マルチフレーム生成」を検証。低リフレッシュレート環境での挙動を確認するためモニターを144Hzに設定し、『ホグワーツ・レガシー』をプレイした。

FrameViewを見ると、フレーム生成倍率がリアルタイムで変化しており、fpsは平均140前後を維持している。モニター性能を大きく超える無駄なfpsが出ないよう調整しつつ、余力でフレーム生成倍率を引き下げるという仕組みだ。ちなみに目標fpsをあらかじめ設定しておくことも可能。倍率の切り替えは計測画面を見て初めて気づく程度に自然で、見え方や操作感が崩れることはなかった。

この機能の一番のメリットは、フレーム生成による残像感が目立ちにくくなっている点だろう。4倍以上のフレーム生成では、振り返りやエリアの切り替えの際に一瞬だけ輪郭が引っ張られるような場面があったのに対し、検証では多くの場面で等倍から2倍程度に抑えられ、そうした乱れがかなり薄れていた。とくに高いfpsを必要としないユーザーにとっては有効な機能となっている。

マルチフレーム生成6Xモードやその説明だけを見ると、DLSS 4.5は高リフレッシュレートのモニターを前提にした一部ユーザー向けのアップデートにも思える。だが適切なfpsを維持しながら残像を抑えられるダイナミック マルチフレーム生成が加わることで、その恩恵はより幅広い環境に広がる。現状では残像の軽減以外に劇的な変化が見られるわけではないが、高いフレームレートを無理に追うのではなく、表示環境に応じて自然な落としどころを探ってくれる機能として、両者はよく噛み合っていた。

フレーム生成の“AIっぽさ”を薄める固定UI改善

今回のアップデートでは、「拡張フレーム生成モデル(Enhanced Frame Generation Model)」と称した機能も一部タイトルに導入されている。ゲームエンジン由来の追加データを利用することで、フレーム生成時の固定UI表示がより安定するようになるものだ。検証として『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』にてフレーム生成倍率を切り替えつつ、UI表示を確認した。

DLSS 4準拠の4Xフレーム生成をONにしてみると、斧を構えた際のクロスヘアやコンパスなどの固定UIが、振り返りや戦闘といった動きの激しい場面でわずかに乱れ、ブロックノイズ状のざらつきが出ることがあった。動きやモーションを加味してAIが補完するフレーム生成では、背景は動かしつつ、一部のUIは固定するという使い分けが難しいのだろう。見逃してしまう程度の小さな乱れではあるが、一度意識すると気になってしまう部分でもある。

対してDLSS 4.5の6Xフレーム生成では、そうした一瞬の乱れが軽減し、激しい動きでもUIがより自然に固定されている。DLSS 4と比べて平均fpsも向上しているが、それ以上に画面を見たときの落ち着きが増していたのが印象に残った。大きな変化ではないが、フレーム生成特有の“AIで補っている感”を少しずつ薄め、没入感を高めている。一度見比べると元に戻りにくい、長く遊べば遊ぶほど効いてくる調整だといえるだろう。

より綺麗に、より滑らかに。着実に進化を感じたアップデート

DLSS 4.5のマルチフレーム生成6Xモードは、1枚のフレームを6倍にするという、仕様だけ見ればかなり大胆な機能だ。だが実際に複数のタイトルで試してみると、印象に残ったのはその派手さよりも、むしろ高負荷時の安定感だった。重い場面でもフレームレートが落ち込みにくく、映像の乱れやフレーム生成特有の違和感も少しずつ抑えられている。単に高いfpsを出すための機能ではなく、高画質設定をより自然に遊べるものへ近づけている点にこそ、今回の進化の本質がある。

ダイナミック マルチフレーム生成や固定UIの改善も含め、DLSS 4.5はフレームを増やすだけのアップデートにはとどまっていない。高倍率時の乱れや遅延といった問題が完全に解消されたわけではないが、複数の角度から改善が施された今回のアップデートは、想像以上に実用的。パストレーシングでの高fpsといった派手な看板を掲げながら、実際にはフレーム生成という技術そのものを、より扱いやすく、より信頼しやすいものへ整えている。

パストレーシングのような高負荷表現は、少し前まで一部のハイエンド環境だけが味わえる特別なものだった。しかし今回触れた限りでは、それが少しずつ「普通に遊べる」ものへ近づいている。DLSS 4.5は、その変化を自然なかたちで実感させるアップデートだった。

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

記事本文: 385