スクエニ騙し合いマルチ『KILLER INN(キラーイン)』は、「人狼ゲーム」ではなく「心理戦シューター」。頼れるのは己の猜疑心と腕

『KILLER INN』は、狼チームと羊チームに分かれて競う非対称型の対戦ゲームだ。

『KILLER INN(キラーイン)』は、殺るか殺られるかの雰囲気に満ちた対戦ゲームだ。
本作は「人狼ゲーム」のように殺人鬼が善人のふりをして紛れ込んでいるため、何でもないような些細な出来事でも過剰に反応してしまう。か弱き者たちは疑心暗鬼で対立を深めていき、その利益を狼たちが得る。そうしたシナリオも存在する一方で、狼の正体を暴いて戦いから排除することも可能だ。

スクウェア・エニックスとTBS GAMESが共同して製作するタイトルとして、本作は注目を集めている。クローズドβテストの実施がせまるなか、本作のメディア向け体験会が実施された。約1時間30分の試遊を通じて得た感想を、この記事でお伝えしたい。記事で紹介しているスクリーンショットは開発中のバージョンで撮影したものとなるため、製品版で配信されるものとは異なる場合があることに留意してほしい。

人狼ゲームの要素があるシューターのようなプレイフィール

『KILLER INN』は、狼チームと羊チームに分かれて競う非対称型の対戦ゲームだ。狼チームは8人で羊チームは16人の人数構成となっており、どちらも相手チームの全員を排除すれば勝利となる。羊の場合はマップからの脱出に成功しても勝利となるが、それを満たすためには狼から逃げながら別の強敵を倒さなければならない。狼は羊たちを殲滅しても勝利となるし、羊たちの脱出を阻止しても勝利となる。

狼たちを殲滅するにせよマップから脱出するにせよ、羊たちには制限時間が設定されている。試遊では最初に提示された制限時間は15分間だった。脱出ルートを目指す場合などにこの制限時間は変動するようだが、それでも限られた時間で羊が勝利条件を満たす必要がある。限られた時間のなかで8人もの狼を倒さなければならないことは簡単ではなく、そのゆとりのなさが狼たちの付け入る隙を生じさせる。

ゲームの大きな流れとしては、狼による殺人事件の発生とその証拠品の収集だ。その合間にクエストをこなしてキャラクターのレベルアップを図ったり、クエストクリアで得られた報酬をもとに武器や防具などのアイテムを取り揃えていく。狼の場合は証拠品を隠滅することが可能で、隠滅に成功した場合は羊側の手がかりを減らすことが可能だ。とはいっても、羊が近くにいるときに証拠を隠滅してしまうと怪しまれるので、狼は証拠を隠滅するタイミングを見極める必要がある。隠滅が難しい場合は羊のふりをして、狼も証拠を集めて体裁を整えていく。

5試合を戦った試遊ではどの試合もスピーディーに事件が次から次へと発生し、あっという間に過ぎ去っていった。戦績は狼側が3勝で、羊側が2勝。狼側はゲーム開始時から仲間の狼を判別できるため、羊を抹殺するアクションを起こしやすい。そういった意味では狼側のやることは明確であり、羊に紛れ込んで行動しやすかったように思う。どちらかのチームが最初の15分以内で全滅する展開が多かったが、羊側が脱出に成功した試合も存在した。脱出ルートの確保に成功した試合では、船着き場に移動する時間や脱出用の船を準備する時間が増えていった。それでも試合の勝敗決着までは約20分といったところだ。

人狼ゲームのような議論や投票のフェイズは、本作には存在しない。羊たちは狼による殺人の証拠を集めて犯人を特定し、犯人を物理的に倒して試合から排除しなければならない。羊が狼をアクションで攻撃して倒す必要があるというのがポイントで、議論でコミュニケーションを取ることが重要な人狼ゲームとは決定的に異なる。本作が発表された当初はオンラインでプレイする「人狼ゲーム」のようなタイトルになるのかと筆者は思っていたが、試遊を通じて本作は人狼ゲームの要素のあるシューターだと認識が変化した。

疑心暗鬼で崩壊する羊と悪者になりきる狼

議論の代わりに狼を特定する手段となるのが、殺害現場に残された証拠品の収集だ。たとえば、殺害現場で黒い髪の毛が見つかれば黒髪のキャラクターたちが容疑者となる。1つの証拠で犯人を特定できることは稀であり、基本的には複数の証拠を集めて容疑者を絞り込んでいく。髪の毛、衣服の切れ端、指紋などの証拠を集めることで、狼の容疑が強まる者が出る。徐々に狼の正体が明らかになっていく感覚は独特なものであり、仲間の羊と思っていたプレイヤーが実は狼だったと判明したときはおそろしい。

人狼ゲームでは投票によって狼を退場させるが、本作では羊が狼を直接攻撃することで排除を試みる。このことは本作が基本的にアクションゲームであることを示しており、相手が狼だとわかっていたとしても銃撃戦の敗北は自分の死に直結する。銃によるヘッドショットを喰らってしまえばほぼ一撃で死んでしまうし、近接攻撃で数発殴られただけでも死ぬ。回復アイテムを飲むのに時間がかかるため、戦闘中は敵から隠れて体力回復するのも大変だ。

1対1の戦闘にかかる時間は15秒ほどで、短期決戦向きのアクションになっている。今回の試遊で狼として羊に攻撃を仕掛ける機会があったが、相手の反撃を含めて15秒で決着がついた。殺害成功後に逃走し、羊に紛れ込んで現場に戻って来るのに1分もかからない。自分の正体がバレるかもしれないというスリルに満ちていながらも、羊を欺いたときの快感はなんともいえないものだ。自分が悪人になってしまったと感じる。

殺害方法によっては、犯人特定につながる重大な証拠を現場に残す。接近状態から攻撃する「グラップル」と呼ばれるアクションが本作には存在するが、こちらで相手を殺害したときはプレイヤーキャラクターの指紋が証拠品となってしまった。グラップルを仕掛けられた側は上昇するバーに合わせてタイミングよくボタンを押すことで防御も可能となっている。グラップルは完了までに時間がかかることや指紋を証拠品として残してしまう可能性もあるため、狼のときは控えるべきだろう。

証拠集めにかかる時間からすると戦闘時間は短いものとなっているが、最初に提示される15分で羊が8人の狼を駆逐しなければならないとしたら妥当なものだ。羊でプレイするときは疑心暗鬼でチームが崩壊していく感覚が味わえるし、狼でプレイしたときは試合を滅茶苦茶にしている悪人になったような気がしてくる。戦闘自体のプレイフィールは一般的なシューターに近いが、証拠集めや戦闘を含めて1試合が約20分というのは集中力を持続させるのに適切なプレイ時間だと思う。

使い方によっては敵を撹乱可能なボイスチャット

自分が狼の場合は試合開始時に味方の狼がわかる一方で、羊の場合は他人の正体はわからない。羊が間違ってほかの羊を攻撃してしまった場合はペナルティが発生する。同士討ちが致死量に達するものだった場合は、攻撃した羊が即座に退場処分となってしまう厳しいペナルティだ。このペナルティが存在するため、羊はほかのプレイヤーをうかつに攻撃することができない。

数で勝る羊側が協力すれば狼排除に近づくかもしれないが、ほかのプレイヤーを信じきれないことからその隙を突かれる展開が試遊では多かった。これは本作がアクションゲームであり、議論のフェイズが存在しないことの影響が大きいと感じられる。ボイスチャットは存在するものの、そもそも気長に話している暇はない。テキストチャットやエモートなども搭載されているためコミュニケーションを取る手段はあるものの、それを使いこなすことができるかは別の問題だ。

1回の試合時間が短いことは狼にとって有利となり、それはボイスチャットの使い方にもあらわれてくる。死体を発見したとある羊のプレイヤーを見て、「第1発見者が怪しい」と狼の疑いをかけるプレイヤーが試遊では存在した。そう発言したプレイヤーは狼であり、別の狼のプレイヤーと協力することで疑いのかけられた羊を葬り去った。その被害者こそが羊でプレイしていた筆者であり、相手にしてやられた悔しさがいまなお残る。ボイスチャットなしでもプレイできるように設計されているため、本作はあくまでアクション主体のシューターと考えるべきだろう。

証拠集めと戦闘以外の時間では、NPCからクエストを受注することが重要だ。というのも、クエストクリアで経験値を獲得すればキャラクターのレベルが上がるし、アイテムの購入に使うゴールドも得られるからだ。銃を早い段階で購入することができれば相手チームのプレイヤーの殺害が容易になるし、自衛の手段としても大きな力をもつ。クエストは指定の場所にいって物を取って帰ってくるなどのシンプルなものが多いが、クエストによってはパズルを解くようなものも存在した。キャラクターの強化とアイテムの購入資金が得られるメリットが大きいため、試遊ではどの試合も最序盤はクエストをこなすプレイヤーが多かった。

取っつきやすさとリプレイ性の高さを両立

今回の試遊は事前情報がほとんどないまま、いきなりオンライン対戦という形だった。本作にチュートリアルモードは存在せず、それは近日中に開催されるクローズドβテストでも同様だ。人狼ゲームの役職といった複雑な要素は本作には登場しないため、相手チームの全員を倒すという原則を念頭にプレイすればいい。羊の場合は狼と戦うほかに、脱出ルートが存在することを知っていれば十分だ。

シンプルなルールで誰でもプレイを始めやすいが、上達するには本作の知識を蓄えることが重要となってくる。マップの構造や武器の使い方を覚えることは当然のことながら、キャラクターの固有能力を把握することで勝利が近づくだろう。試遊では25名のプレイアブルキャラクターが登場し、それぞれが固有スキルを2つずつ所持していた。スキルはバラエティに富んでおり、証拠を見つけるたびに最大HPが増加するキャラクターも存在すれば、相手からグラップルを受けないキャラクターも存在する。

おもしろいスキルを持っていると感じたのは、詐欺師の異名を持つ「クーロン」と呼ばれるキャラクターだ。クーロンは「慧眼」というスキルを所持しており、ほかのプレイヤーのマーク状況を確認可能。自分が羊としてマークされた場合は最大HPが上昇し、経験値も獲得できる。もう1つのスキル「偽装工作」は証拠の収集に関わる能力で、羊の場合は証拠を精査する能力が50%向上し、狼の場合は偽の証拠で特定されにくくなるというものだ。

目指すべき立ち回りや有用な武器などが変わってくるため、キャラクターのスキルは理解しておきたいところだ。スキルの概要は試合前のキャラクター選択画面で確認できるし、試合中もステータス画面からスキルを確認できる。キャラクターはランダムで決めることもできるが、最初はキャラクターを指定した方がプレイしやすいだろう。

相手チームの殲滅のほか、羊チームがマップから脱出に成功した展開も試遊で見ることができた。アクションは極力シンプルにしながらも、リプレイ性の高さは人狼ゲームに通じるものになっていそうだ。敵味方の全員がキャラクターのスキルを把握したうえで試合が行われれば、よりドラマチックな展開を生み出すだろう。

『KILLER INN(キラーイン)』は、PC(Steam)向けに開発中。クローズドβテストは2025年7月26日7:00~7月29日6:59の期間限定で開催される予定だ。Steamストアページにて、クローズドβテストの参加申込を受け付けている。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

記事本文: 56