前作2000時間プレイ者による『Football Manager 26』3時間先行プレイ感想。これは「進化」か「改善」か、大掛かりな変化ではなく“地道な向上”が光った3時間

リアル志向サッカーゲーム『Football Manager 26』を、『Football Manager 2024』を2000時間以上プレイしている筆者が先行プレイした感想を伝えたい。

まさかの発売中止となってしまった『Football Manager 25』の悲劇を乗り越えて、リアル志向のサッカーゲーム『Football Manager 26』が新作として復活する。しかも単に帰ってくるわけではない。シリーズ経験者がよりゲームプレイに没頭できるようにするUIの改善はもちろん、初心者がゲームやサッカーに詳しくなることも可能な新しいチュートリアル要素も導入。2年待った甲斐があったといえるだけの進歩を遂げている。

弊誌は本作を先行してプレイする機会に恵まれた。約3時間の試遊を通じて得たインプレッションを、この記事でお伝えしたい。『Football Manager 2024』を2000時間以上プレイしている筆者からすると3時間は序盤も序盤もいいところだが、それでも開発会社が本作にかける意気込みが垣間見えることができた。今回は、試遊を通じて得た感想を本稿でお伝えしたい。なお、開発中のバージョンを使用してプレイしたため、一部の内容は製品版と異なるおそれがある。


無理やり発売せずに発売中止の決断をしたところに好感

『Football Manager』シリーズは、監督としてサッカークラブを率いるシミュレーションゲームだ。試合の采配や移籍市場での立ち回りなど、プレイヤーはクラブの運営面すべてを担う全権監督としてクラブを成功へと導いていく。実在する多数の選手やクラブがゲームに収録されているため、リアル志向のサッカーシミュレーションゲームとして高い人気を誇る。『Football Manager 26』イングランドのプレミアリーグの公式ライセンスを獲得しており、そのリアリティについては最新作でさらに磨き上げられている。

リアル志向のサッカーゲームであり、クラブの全権獲得として成り上がっていくプレイフィールは高く評価されており、毎年のように発売されたサッカーファンやシミュレーションゲームから絶大な人気を誇った。そうした人気シリーズであるため、『Football Manager 25』が発売中止になってしまう悲劇はファンを深く傷つけてしまったといっていいだろう。実際筆者も『Football Manager 2024』を2000時間以上プレイしており、いくら好きでも選手データや現実の最新のトレンドを『Football Manager』で味わえなかったのはストレスだった。『Football Manager』はサッカーを愛する膨大な数のプレイヤーにとって、よりサッカーを楽しむための欠かせないものとなっている。

発売中止になってしまった『Football Manager 25』では従来作から使用されてきたゲームエンジンの変更やUIの変更など、かなりの新要素に開発チームは取り組んでいた。これは数十年にわたるシリーズが積み上げてきたものを一変させるものであり、上手くいかなければシリーズの魅力や醍醐味を減じてしまうものになってしまうだろう。

そうしたリスクを背負って、かつ『Football Manager 25』の発売による利益を受け取ることをよしとせずに、開発チームの理想とする『Football Manager』を追求しつづけるところに感銘を受けた。『Football Manager』は世界的に人気スポーツであるサッカーファンに広く愛されており、多少は出来が悪くともリリースさえすれば莫大な利益を生むタイトルなのだ。目先の利益ではなく、信念を守り理想を追求する開発チームの姿勢は称賛されてしかるべきだろう。


新UIは古参をより満足に、新規の継続プレイを促すものに

ゲームエンジンを変更したメリットは、『Football Manager 26』にさまざまなメリットをもたらした。筆者がもっとも価値あるメリットに感じたのはUIの変化だ。「タイル&カード」というUIを採用したことで、プレイヤーの興味のある情報をクリックすればそれに関連する情報を深堀りすることができる。

なにより、新たなUIで追加された「ポータル」がすばらしい。ポータルは旧UIの受信トレイを中心にして試合日程やさまざまな情報を直感的に把握可能だ。過去作では監督が処理すべき連絡事項が記載された受信トレイと試合日程が書かれたホームが別々の画面だったので、次の試合のメンバーを検討するためにホームへ毎回飛ぶのが面倒だったのだ。そうした手間を減らしてくれるのは大変ありがたい。なにせリーグ戦だけでも30数戦は存在するため、その試合の数だけホーム画面をクリックする必要がなくなった。何シーズンも繰り返しプレイするため、この快適さは想像以上にメリットがあるといえそうだ。

選手やチームの情報は結びついており、気になる項目をクリックしていけばチームが置かれている情報がわかるようになっている。さらに、『Football Manager 26』にはサッカーの戦術や選手の役割を詳細に解説した新要素「FMPedia」があり、かなり読み応えがある。FMPediaは『Football Manager』のWikipediaのようではあるが、30年にわたってシリーズを手掛けるSports Interactiveの開発メンバーが書いていることもあって信頼性は極めて高い。FMPediaは各用語の定義を簡潔に記し、戦術などはどのような場合に有効であることかも教えてくれるので、初心者がサッカーと『Football Manager』に親しむためのものとして、優れたシステムといっていいだろう。

FMPediaに似たものは過去作にも存在したが、それはせいぜい検索ボックスにクラブ名を入れて歴史を把握したり、選手名を入力して自チームへの獲得可能性を探る程度だった。『Football Manager 26』の検索ボックスには、クラブ名や選手名だけでなく戦術用語なども入力することが可能で、それが書かれたFMPediaを確認することができる。大げさな言い方になってしまうかもしれないが、『Football Manager 26』はサッカーに関する辞書のFMPediaを搭載した稀有なシミュレーションゲームとなっているんだ。そこには開発陣に初心者にプレイして継続してもらいたいという情熱を垣間見ることができたので、シリーズファンとして嬉しく思った。


現実サッカーでトレンドの可変フォーメーションも設定可能

サッカーは時代に合わせて流行するフォーメーションや戦術が変化していくものだ。攻撃時は4-4-2だったが、守備時には5-3-2のようにフォーメーションを変えることが最近のサッカーの試合ではよく見かける。「可変フォーメーション」と呼ばれる最新のトレンドを、『Football Manager 26』では設定可能だ。

ボールポゼッション時と非ボールポゼッション時の戦術として、フォーメーションや選手のロールを細かく設定可能だ。それはまるで2つのチームが存在するようであり、選手たちには複数のポジションの適性が求められることが多い。いわゆるポリバレントな選手が重宝されるのは可変フォーメーションの流行に関係しており、そうした要素を取り入れた『Football Manager 26』はより最新の戦術設定ができるようになったといえるだろう。

世界の一流監督が使いこなす可変フォーメーションを使いこなしたい気持ちはコアなサッカーファンはもっている人が多いだろうが、すべての選手が対応できるわけではないだろう。そうしたことができる選手を発見して、可変フォーメーションで活躍させることができたときは、選手の真価を発見できたかのような興奮感に包まれる。選手の能力はクラブ内でも星の数でポゼッション、非ポゼッション時、総合で評価されるので、チームへの貢献がわかりやすくなっているところは有用な情報であり、移籍市場での獲得や売却にも繋がるものになることだろう。


試行錯誤の果てに理想を実現できたときに達成感

「微に入り細を穿つ」という表現が完全に一致するように、『Football Manager 26』はリアルサッカーを忠実に再現するために徹底的な心配りがなされている。そうした開発姿勢には感心させられるし、長年にわたってシリーズを追っている筆者からすると、シリーズを手掛けるSports Interactiveのことは信頼している。

『Football Manager 25』の発売を延期してまで『Football Manager 26』の開発に注力したことは潔かったが、試合画面については当初まだまとまっていないように感じた。さまざまな情報を閲覧できるタイル&カードの仕組みは試合でも登場するが、あまりにカードの数が多すぎて、過去作に親しんでいる場合でもとても処理できる情報量ではない。開発長期化によって開発陣は慣れてしまっているのかもしれないが、プレイヤーはそれに近づいていけるとは限らない。本作で『Football Manager』シリーズのデビューを果たした場合は序盤の試合でついていけなくなってしまうかもしれない。

試合の攻守のバランスについても、製品版に向けてどのように調整されていくのかも気になるところだ。試遊で私はプレミアリーグのリバプールでプレイしたが、前線からのプレスをかける頻度とフィニッシュワークの精度の低さに悩まされた。開幕戦では後半まで相手のシュートを0本に抑えていたのに、後半終了間際にたった1本のシュートで負けてしまったときは愕然としてしまった。

なお、ゲームエンジンをUnityに変更したことで、グラフィックの表現に期待しているが、試遊時のバージョンでは特に美しくとはいえず、躍動感があるものではなかった。グラフィックが刷新されたとはいえ、過度に期待しないほうがいいだろう。

このまま漫然としていては優勝を狙えないと考えた私は、戦術に手を入れはじめた。縦への突破に優れた三笘薫を獲得し、縦への推進力が増すようにした。右にサラー、左に三笘の両ウイングは突破力に優れているが、筆者は高い位置でのボール奪取からの少ないタッチでのカウンターを目指す戦術を取るようにした。ボールをカットしてからのヴィルツなどパス能力に優れた選手が少ないタッチで前線にボールを運ぶことを最優先目標とし、ゴール付近からはサラーと三笘の突破力でエリア内に侵入し、ゴールを奪いたい。この戦術はなかなかうまくいかなかったが、練習を重ねるうちに形になってきた。チャンピオンズリーグのグループフェーズでFCバイエルン・ミュンヘンを3-0で一蹴できたときは、目指していたサッカーができたので達成感に包まれたものだ。

3時間の試遊で、練習の成果を実感するのは難しいところがあるのかもしれない。それでもプレイヤー独自のスタイルでFCバイエルン・ミュンヘンを3-0で倒すことができたときはチームが仕上がっていくことを感じた。勝つためにさまざまな準備が必要な『Football Manager』シリーズにとって、3時間というプレイ時間は序の口に過ぎないのだろう。私としては、このセーブデータを使って続きをプレイしたいほど愛着をもった。


3時間の先行プレイはまだ序の口といった印象

正直なところ、3時間プレイした時点でようやく勝てる仕組みがわかってきたような段階だったと思う。練習で試みた戦術浸透度や選手の連携が深まってきたのが、3時間プレイして作中でシーズン序盤を乗り越えていったところだ。これ以上プレイしたらおそらくゲームを止めることができなくなったかもしれないので、試遊としてはちょうどいい区切りだったのかもしれない。

UIの変更については慣れもあるだろうが、過去作で不満だった部分に手が入れられていると感じる。1つの画面でさまざまな情報を閲覧できるポータルはプレイヤーが頻繁に見る画面として重要なもので、快適なプレイに繋がってくるだろう。初心者へのヘルプ機能としては、戦術や選手の役割を詳細に解説するFMPediaは役に立つものと確信している。サッカーゲームをプレイしながら、リアルのサッカーの理解も進むという新たな試みに期待したいところだ。

Football Manager 26』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)向けに2025年11月5日発売予定。PS5/Xbox Series X|S向けの『Football Manager 26 Console』はダウンロード版が11月5日に、PS5パッケージ版が12月4日に発売される。Nintendo Switch向け『Football Manager 26 Touch』も12月4日に発売予定だ。Netflix加入者限定で配信される『Football Manager 26 Mobile』のリリースは、11月5日となっている。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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