『THE ヤンキーブラザー』紹介。令和のヤンキーが拳とラップで語り合う、奇妙でちょっと笑えて気持ちいいローグライトアクションゲーム

レンマルを操作して、襲い掛かるヤンキーたちを殴り倒していくアクションゲームである。そして、本作の特徴のひとつとしてレンマルを強化する喧嘩麻雀システムを搭載。

ディースリー・パブリッシャーは11月27日、『SIMPLE』シリーズ最新作となる『THE ヤンキーブラザー』を発売した。対応プラットフォームは、PC(Steam)/Nintendo Switch。価格はダウンロード版が税込2000円。Nintendo Switch向けパッケージ版が税込2800円。

『THE ヤンキーブラザー』は、高校生ヤンキーたちが喧嘩を繰り広げるアクションゲームだ。北浜伏見高等学校(キタフシ)に通う1年生の御堂練丸(レンマル)は、道修学園高等学校(ドウシュウ)の不良に絡まれていたキタフシの女生徒を助ける。その一件がきっかけで、ドウシュウとの戦いに身を投じることになる。

本作は、レンマルを操作して、襲い掛かるヤンキーたちを殴り倒していくアクションゲームである。そして、本作の特徴のひとつとしてレンマルを強化する喧嘩麻雀システムを搭載。喧嘩の区切りごとにさまざまな効果をもつ「漢牌」を選び、レンマルの能力やアクションを強化できるというシステムだ。さらに、ただ漢牌を集めるだけではなく、漢牌の組み合わせによって役が成立。漢牌を組み合わせて、レンマルを強化して、襲い掛かる他校のヤンキーたちをなぎ倒していくのだ。

ヤンキーを題材としたゲームは、たびたびリリースされては、その強烈なイメージから話題になることがある。ヤンキーゲームと聞いて、過去にあった作品を思い出す人もいるだろう。本作も数あるヤンキーを題材にしたゲームのひとつである。

一言でヤンキーと言っても人によってイメージするものはさまざまだろう。わかりやすくゲーム以外の作品であげるなら「ビー・バップ・ハイスクール」や「湘南爆走族」などのようなクラシックな昭和のヤンキー、「クローズ」「ROOKIES」のような平成ヤンキー、そして「HiGH & LOW」や「東京卍リベンジャーズ」といった、より現代に寄ったヤンキーに分けられると筆者は感じている。

『THE ヤンキーブラザー』に関しては、まさに令和のヤンキーゲームといった作品に仕上がっている。「HiGH & LOW」的なイケメンヤンキーが、拳で語り合うゲームである。そんな『THE ヤンキーブラザー』がどんなゲームで、どこが令和のヤンキーゲームなのかを本稿にて紹介したい。

シンプルなアクションに爽快感を与える強化システム「喧嘩麻雀」

本作は、1ステージで5戦、ヤンキーたちとの喧嘩を繰り広げることになる。全3ステージと最終ボスとの対決から成り立つゲームだ。ボス戦以外のバトルが終わるごとに、喧嘩麻雀パートがおこなわれ、主人公レンマルの強化が可能。ヤンキーたちを倒して証を獲得し、得た証を使って牌を獲得し、ボス戦に備えるというサイクルだ。

本作のアクションは非常にシンプルだ。上下左右の移動と、連撃、必殺技、防御、駿足の4つのアクションから成り立っている。連撃はパンチで狭い範囲を攻撃するもの。必殺技は、装備している技を使用するものとなっており、ステージの最後に待ち受けるボスを倒すことで新たな必殺技を習得し、最大4つの必殺技が使用できる。防御は正面からの攻撃を防ぐことが可能なアクションだ。そして、駿足は攻撃判定を出しながら一定距離を進む、いわゆるステップのようなアクションとなっている。

そんなシンプルなアクションを刺激的なものにしてくれるのが「喧嘩麻雀システム」だ。喧嘩麻雀システムは、倒したヤンキーがドロップする証を消費して、レンマルを強化できる漢牌を入手するというシステムだ。漢牌にはHPを上昇するもの、攻撃力を上昇するもの、そして先述した4つのアクションを強化するものが用意されている。そのほか、証を所持しているほどHPと攻撃力が上昇するものや徐々にHPが回復するものなど、全27種類を手牌に組み込める。どれかひとつのアクションに絞って強化するのか、それともバランス良くアクションを強化するのか、手牌の構成次第で戦い方が変わってくる、デッキ構築的なシステムだ。

さらに麻雀だけあって、漢牌の組み合わせによる「役」も存在する。同じ色の牌3枚を1セット揃える一牙(イーガ)、2セット揃えれば二牙(リャンガ)といった役から、同じ牌を3枚揃える暗刻が1セットで一暗刻(イーアンコ)、2セットで二暗刻(リャンアンコ)、そして、4セット揃えると四暗刻(スーアンコ)など、実際の麻雀のような役も存在。さらに、愛死天流(アイシテル)、走死走愛(ソウシソウアイ)など、ヤンキーらしい当て字を組み合わせた役も。これらの役はゲーム内、あるいは公式サイトに役一覧があるので、実際の麻雀がわからない人はそちらを見ながらプレイしてほしい。麻雀を知っている人も、普通の麻雀にはない役ばかりなので、念のため確認されたい。

役を作ることでHPと攻撃力が上昇し、作りにくい役ほどその上昇量がアップするので、アクション強化と同時に役の成立を考えた手牌作りが攻略の鍵だ。なお、ボスを倒して1ステージが終わると、そのステージで得た強化はそのままに漢牌はリセット。また新たに配られる漢牌で役を作っていき、レンマルをさらに鍛えることができる。最終的に、ステージ1と最終ステージで見違えるレンマルが完成する。

強化すると攻撃のヒットエフェクトもド派手に

そして、喧嘩に挑むのはレンマルひとりではない。ヤンキーの巣窟であるドウシュウに乗り込むにあたって、レンマルを手助けする相棒をひとりだけ連れていくことができる。レンマルがヤンキーを倒すことで、「相棒スロット」が発動し、リールの止まった役によって相棒が駆けつけてさまざまな手助けをしてくれるのだ。相棒は攻撃したり、目からビームを出したり、回復をしてくれたりと、さまざまな効果を発揮。また、レンマルのアクションを強化することも可能だ。3人いる相棒のうち、強化してくれるアクションは相棒によって違うので、レンマルのビルドによってどの相棒を連れていくのか選ぶといいかもしれない。

さらに、相棒スロットで特に注目したいのが「二つ名」の解放だ。レンマルが敵を倒しているうちに、相棒か敵のヤンキーから二つ名の材料となるセリフが放たれる。相棒のセリフは上の句、敵のヤンキーのセリフは下の句の「ワード」としてストックされていく。そして、相棒スロットでスリーセブンが出ることで、二つ名が解放される。ストックされている上の句と下の句がランダムで組み合わされることで二つ名が完成。そのまま装備した二つ名はステータスを上昇させたり、アクションを強化したりといった効果をもつ。これもレンマルの強化要素となっている。

二つ名を獲得するほどレンマルが強化されていくのでたくさん獲得したいところであるものの、相棒スロットでスリーセブンが出るのも、良い二つ名ができあがるのかも運次第だ。スリーセブンが出やすい設定の相棒もいるので、そちらも試してみてほしい。とはいえ、最終的にはやはり運の要素が大きいので期待は禁物だ。

ちなみに、獲得した二つ名はゲームクリアかゲームオーバー時に保存しておくことが可能。保存した二つ名はゲームスタート時にひとつだけ装備していくことができるので、良い二つ名ができたときにはぜひ保存して、次のプレイに活かしたい。

そして、レンマルを強化する要素はほかにもある。ゲームをプレイするごとに獲得できる「ヤンキーコイン」をショップにて消費しておこなう永続強化だ。強化は牌山に入る漢牌の枚数を増やしたり、入手できる証を増やしたり、ゲームを有利に進められるものばかり。特に漢牌の枚数増加は、一色に染めた強力な役が作りやすくなるのでおすすめしたい。なお、ショップでは強化以外にコレクション要素の購入も可能。本作の世界観やキャラクターのバックグラウンドを深く知ることができるコンテンツになっている。

令和ヤンキーの喧嘩は拳だけじゃない。ラップバトルでも激突する

ここまででわかるとおり『THE ヤンキーブラザー』は、デッキ構築系ローグライトアクションゲームだ。そんな本作を令和のヤンキーゲームたらしめるのは、これまで述べたゲームのコア部分を飾る味付けだ。

本作を特徴的なゲームにしている要素が、喧嘩中のBGMだ。本作のバトルは喧嘩のみならず、何とラップバトルまで繰り広げられるのだ。バトル中、レンマルと敵対ヤンキーが殴り合いを繰り広げながら、互いの主張を込めたリリックをぶつけ合う。これが令和のヤンキーの喧嘩というわけである。

敵対するヤンキーのボスはピンクアフロの安土萌々、喧嘩をこよなく愛する備後佑慈らドウシュウの5強、彼らのトップに立つ三久和泉ら複数のヤンキーがレンマルの前に立ちはだかる。そして、彼らそれぞれにラップが用意されている。敵の攻撃はなかなか熾烈でゆっくりとラップバトルを聞くことはなかなか難しいが、喧嘩中のプレイヤーのテンションを上げてくれるものになっている。

なお、ラップは喧嘩中以外に、先述したショップで購入できる各キャラクターのエピソードでも披露される。基本的に登場するキャラクターたちの会話は、ラップしかないと思っていい。レンマル、そしてドウシュウのヤンキーたちもキャラクターが立っており、クセになるゲーム中のラップはぜひ一度聞いてほしい。

ラップのリリックもさることながら、二つ名のワードの材料となるセリフもなかなかセンスのあるチョイスとなっている。こちらは昭和のヤンキーらしさを感じるものもあり、昭和生まれは思わずクスリとさせられる。ちなみに筆者は「明日の新聞載ったぞ」的なヤンキー作品お馴染みのセリフを見て、センスのあるチョイスだと唸らせられた。もちろん、笑いつつではあるが。ワードは膨大な量があるため、ほかにも笑ってしまうようなセリフがあることだろう。ほかにも、何かと「コラ」と語尾に付けられている口の悪いシステムメッセージも、ノスタルジックな気持ちになりつつ笑えるので目を留めてほしい部分だ。

本作は、不良と喧嘩というヤンキーもののベースに、付随するワードで殺伐な学校間の抗争を演出。そして、線の細いキャラクタービジュアルやラップバトルというキャッチーな要素を採用したことで血生臭さがなく、なおかつヤンキー同士のプライドのぶつかり合いがうまく表現されたタイトルになっているだろう。

『THE ヤンキーブラザー』は『SIMPLE』シリーズの新たな一歩となるのか

なお、筆者は一通り本作をプレイして、結果的には駿足攻撃を強化するビルドに落ち着いた。駿足で移動しながら敵に攻撃し、敵の射程から駿足で逃げるというヒットアンドアウェイ戦法が可能なビルドだ。

駿足の漢牌のうち、駿足強化で威力をアップし、駿足拡大で攻撃範囲を広がり、駿足変化でヒット数が上昇、そして駿足特異で移動距離がアップする。これらを徹底的に強化していければ、駿足をしていれば敵の攻撃はほとんど食らわず、敵がどんどん倒れていくという戦法だ。初めは貧弱だった攻撃が、最終盤では一騎当千の強力な攻撃へと進化していくわけだ。

最終的には駿足でビームも出せるように。

ちなみに、本作の強化は配られる漢牌の運次第というランダム要素が強い。しかし1周が短い分、次こそは理想のビルドを組み立てやろうというリプレイ性の高さに繋がっていると感じた。特に必殺技は種類が複数あり、強化完了した状態は非常にド派手な戦いが楽しめそうなので、爽快なプレイが楽しめることだろう。

本作は、『SIMPLE』シリーズらしくお手頃な値段になっている。アクション、ヤンキー、ラップバトルなど、どこかに惹かれた人はぜひ手に取ってみてほしい。AAAタイトルのようなゴージャスで大ボリュームなゲームではないものの、さまざまな工夫によって独特のテイストに仕上げられている作品だ。

そして、『SIMPLE』シリーズは、25年以上続くシリーズながら、昨今は脱出ゲームやテーブルゲームといったジャンルのリリースが続いていた。今後、本作のような挑戦的なタイトルがリーズナブルに楽しめるよう注目していきたい。

THE ヤンキーブラザー』は、PC(Steam)/Nintendo Switch向けに発売中。価格はダウンロード版が税込2000円。Nintendo Switch向けパッケージ版が税込2800円だ。

Koutaro Sato
Koutaro Sato

何でも遊びますがメトロイドヴァニアとトレハン、ゲーム内の釣りが大好物。クリエイターやプレイヤーの人となりと、彼らが生み出す盛り上がりが大好きです。

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