「青の祓魔師」ゲーム『オルタナヴェルト -青の祓魔師 外伝-』10時間先行プレイ感想。 “まだ知らない青エク”がっつり3Dアクション

この記事では、約10時間プレイした本作の感想をお伝えしたい。

『オルタナヴェルト -青の祓魔師 外伝-』は、加藤和恵氏による漫画『青の祓魔師』を原作とした3Dアクションゲームだ。ゲーム版は「外伝」と題されているように、ゲーム版独自のキャラクターによる新規ストーリーが展開されていく。

弊誌は、本作を先行して試遊する機会を得た。この記事では、約10時間プレイした本作の感想をお伝えしたい。なお、試遊には先行プレイ用に開発用アカウントを使用しているため、製品版として配信されるバージョンとは内容が異なる場合がある。スクリーンショットは開発中のものであるため、そちらも留意してほしい。

原作世界観でありながらもオリキャラによる独自のストーリーが新鮮
原作の主要キャラクターは悪魔祓いをする祓魔師の卵たちである学生だったが、本作では主要キャラクターは社会人であり既に祓魔師になっている。しかし、本作の主要キャラクターたちはいわゆる落ちこぼれであり、祓魔師として大きな成果を出せていない。定期試験の成績が悪ければ祓魔師としての職を追われることになるかもしれないという噂が流れており、主人公にとっても決して他人事ではない。

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主人公は無色透明のほぼプレイヤーといっていいキャラクターで、筆記試験の回答もプレイヤーが選択していく。筆記試験は決して難しい訳ではないが、原作を知らずに本作をプレイする場合は冒頭からのストーリーをきちんと読み込んでおくべきだろう。冒頭からいきなり祓魔師としての資質を問われる厳しい展開は、祓魔師が危険な職業であるがゆえにその能力がテストを通じて問われるというのは納得できる。

定期試験に合格した主人公は、新設の部署である特立捜査係に配属される。定期試験で主人公の受験受付を担当してくれた紅羽亜鳥(くれはあどり)も加入し、主人公と紅羽はバディを組んで任務に挑んでいく。祓魔師の各部署から新設の係への期待は低く、「迷子のペット探し」や「撮影現場の警備」といった雑用的な仕事がほとんどだ。それでも懸命に事件を解決することで仲間が増えていき、係の任務処理能力は向上していく。

仲間が増えていくのに応じて、複数のチームに分かれて事件解決の調査に臨むところにチームとしての連帯感を感じた。仲間は現場で情報を収集し、現場リーダーの主人公は本部で情報を分析して最適な分担を考えていく。本部では主人公よりも長いキャリアを持つ部署トップから貴重な助言をもらえることができるし、事件解決に適切な方法を吟味しながら調査していくことができる。係を立ち上げた幕外有史(まくがいゆうし)が「責任は俺が持つ」といってくれるのはありがたいことだ。

祓魔師として助けた住人が大きな成長を遂げていく様子が見られるのもまた、その職務が報われたと感じる瞬間だ。ストーリー序盤で悪魔に襲われた少女を助ける場面があったが、後日にきちんと主人公たちにお礼を伝えに来てくれた。聞けば主人公たちに助けられたことがきっかけとなって、その少女も祓魔師を目指すようになったらしい。

人を助けて感謝されるだけでもうれしいのに、その人生にまで影響を与えることができる存在になることができたときは、祓魔師という職業が誇り高く感じられる。そう思ったとき、本作は単なる原作の再現ではないように感じられた。いわば原作の作中世界における祓魔師になりきることが可能な作品となっている。

なんでも屋的な任務を日常的に繰り返すことに街に愛着が湧くように
本作はいわゆるクエストクリア形式で進行するが、メインストーリーに関連するクエストはプレイヤーレベルが一定数に達していなければならない。プレイヤーレベルを上げる方法はさまざまなものが存在するが、サブクエストはクリアで獲得できる経験値が多いためプレイヤーレベルを上げやすい。ただし、これはメインストーリーでも共通することだが、関係者全員から1人ずつ話を聞かなければ進まないことがあったのは億劫だった。一言しかしゃべらないNPCから5人以上話を聞かなければならない場合があるのは苦痛だ。

サブクエストはメインストーリーと比べると地味なものが多いかもしれないが、それでも住民からの切実な相談を解決していくうちに自分たちが暮らす街への愛着が増すようになっている。主人公たちの所属する係にとっては、なんでも屋のようにあらゆる任務をこなすのが日常となっていくことを実感した。そうした和やかで平和な面があるからこそ、メインストーリーで発生する謎や強敵とのバトルなどが印象的なものとして際立ってくる。

本作の舞台は、原作と同じ正十字学園町だ。フランスのモンサン・ミッシェルを彷彿とさせる街並みは遠くから見ても美しい。そうした美しさがある一方で、街は活気に満ちている。3Dで描かれた原作でお馴染みの街を探索できるのは、ファンにとってはうれしいものだ。オリジナルキャラクターで街を行けば新しいストーリーが始まる予感がするし、原作のキャラクターで街を行けば漫画を読んだ記憶やアニメを観た記憶がよみがえってくる。

なお、メインクエストとサブクエストを問わずに目的地までのルートを示すマーカーが常に表示されるのは快適なプレイにつながっている。3Dのゲームで高低差のあるマップのため、迷ってしまうような場所も存在するがルートを案内してくれるマーカーで目的地に到着することが可能だ。プレイヤーキャラクターとの距離を変更するカメラの視点も3パターン用意されているため、そちらも迷いそうになったらそちらも駆使するといいだろう。

プレイしていないキャラも自動で動く全員参加のバトル

本作のバトルは、最大4人のパーティーメンバーによる3Dのアクションだ。バトルの最大の特徴は4人全員がバトルに出陣して、一緒に戦うこと。『原神』や『ゼンレスゾーンゼロ』などでもパーティーメンバーからプレイアブルキャラクター1人を選択して戦うが、ほかのキャラクターは表には出てこない。本作では自分が操作していないキャラクターも表に出てくるため、敵味方が激しく入り乱れるバトルとなっている。

通常攻撃のほかに、2種のスキル技をキャラクターは使用可能だ。スキル技はキャラクターによって範囲攻撃を繰り出すものも存在すれば、仲間キャラクターを回復するスキルも存在する。スキル技の発動にはクールタイムが存在するため、連発することはできない。キャラクターは固有の奥技を持っており、溜まりきったゲージを消費することで強力な奥技を発動可能。

バトルシステムとして特徴的なものは、「バースト状態」と「ブレイク」が挙げられる。スキル発動、奥義発動、ジャスト回避などによってゲージが溜まっていき、ゲージが満タン時にはバースト状態に移行可能だ。バースト状態が発動している間は味方全体の攻撃力が上がるため、積極的に使っていきたい。ブレイクは相手の耐久力のゲージをゼロにしたときに発生する攻撃チャンスのことだ。このブレイク時に与えるダメージは通常よりも大きいために、必殺技などを集中して当てることで一気に決着をつけることもできる。たとえば、ボスのグリフォンに対してはブレイク後に必殺技を叩き込むことで全体から約3割の大ダメージを与えることができた。

プレイヤーが操作しなくてもいい自動戦闘機能が優秀だったことについても触れておきたい。こちらのレベルが相手を上回っていれば、よほど相性が悪くない限りは負けることがほとんどなかった。そればかりか、自分が操作しているときは思いつかなかった空中に浮かせてからの連続攻撃などを見せてくれることもあり、プレイヤーの戦い方の参考にもできる。プレイヤーが操作してない仲間キャラクターの自動アクションも見事なもので、複数の敵が登場するバトルでは敵の一部を安心して任せることが可能だ。賢く強い味方の存在は、本作の共闘感を高めているといっていいだろう。

共闘感満載のボス戦

試遊でプレイしたのが序盤ということもあって強敵と戦うことは少なかったが、ボス戦ではいままさにチームで連携して戦っていることを実感できる演出が心に残った。現場の主人公たちでは倒し切ることのできなかった強敵を、本部から係の長が的確に分析してくれる。相手の弱点属性のほか、回避を重視すべきことなどを教えてくれたのは心強さを感じたものだ。自分の所属するチーム全体で戦っているという共闘感が、本作のボス戦には存在する。

共闘感あるやりこみ用のバトルコンテンツとしては「深部保管庫」が印象的だった。これはステージクリア形式のバトルコンテンツで、レベル別に大量のステージが用意されている。低レベルでも50を超えるステージが用意されており、雑魚戦のステージも存在すれば、ボス戦のステージも存在した。連続でステージクリアに挑戦する場合は、自動戦闘機能が有用だった。各ステージは制限時間が設けられているため、こちらの火力と相手の耐久力の差がクリアの可否に直結する。各ステージ間で発生する微妙な待ち時間を手動でスキップすれば、1ステージ30秒ほどで終わるところが爽快だった。

キャラクター育成要素

本作は基本プレイ無料のタイトルであるため、プレイアブルキャラクターはガチャを回して入手する。ただし、本作からの新キャラクターはストーリー進行に応じて入手可能だ。今回の試遊では序盤10時間しかプレイできなかったので断言することができないが、原作のキャラクターはガチャ限定で入手する形になると考えられる。筆者は試遊では新キャラクターのみでパーティを編成して戦ったが、序盤をクリアできたので無理にガチャを引かなくてもストーリーを進めることはできるだろう。

キャラクターのレベルを上げるクエストや、装備品のレベルを上げるクエストも用意されている。キャラクターの強さに直結するレベルを上げるクエストは積極的にこなしたいところだが、その対価として専用の消費アイテムを求められるところは気がかりだった。というのも、キャラクターのレベルを上げるクエスト用の消費アイテムを得られることが少なかったため、実戦的に使用可能なキャラクターが限られる状態になってしまったからだ。

新しいキャラクターを入手できたとしても、そのキャラクターを育成することができないのはストレスになってくる。試遊ではストーリーを中心にプレイできる範囲が限られているため、製品版ではより数多くの強化クエスト用アイテムが手に入るのかもしれない。原作のキャラクターと新規キャラクターを育成できるというのが、本作の魅力の1つであるので、キャラクター育成がしやすい環境になることに期待したい。

『オルタナヴェルト -青の祓魔師 外伝-』は原作の世界観を踏襲しつつも、新キャラクターと新規ストーリーでまったく新しい「青の祓魔師」をゲームで楽しめる作品となっている。
なんでも屋として設立されたチームに所属する本作の主人公たちは、弱者に寄り添う祓魔師の矜持を保ちながら困難に立ち向かっていくが、それは原作の主人公が掲げる理想と一致する部分がある。原作とは異なる立場の祓魔師たちが、「青の祓魔師」ユニバースをどのように拡張していくのか。本作はその注目に値する1本となっている。

『オルタナヴェルト -青の祓魔師 外伝-』は、iOS/Android向けに基本プレイ無料にて6月25日配信予定。Windows版の配信日については後日発表される

※画面は開発中のものです。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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