着せ替えオープンワールド『インフィニティニキ』、最新大型アプデでなぜか主人公少女が「巨大化」する。でもそれはそれで納得、美と野生の両方ある最新アプデ先行プレイ
オープンワールド着せ替えRPG『インフィニティニキ』の大型アップデート「大地の祷律」の先行プレイを通した感想をお伝えする。

デベロッパーのInfold Gamesは11月26日、オープンワールド着せ替えRPG『インフィニティニキ』に大型アップデート「大地の祷律」を配信開始した。
可憐な衣装で世界を旅する優雅な世界観が特徴の本作。リリースから1周年を記念する今回の大型アップデートでもっとも印象に残ったのは、ニキが唐突に「巨大化」するスキルと、それを使って大暴れするゲームプレイだ。巨体でズカズカと大地を踏み鳴らし、咆哮で敵を気絶させる様は一見突飛に思える。しかし、色彩豊かな新フィールド「イザンの地」、縦横へと飛び回る鉤爪アクション、そして音響演出が進化したダンジョン群といった追加要素を体験するうちに、本作が元来持つ癒やしや美にワイルドな爽快感を混ぜ込んだ、新しい『インフィニティニキ』の姿が見えてきた。

弊誌は今回、「大地の祷律」の内容を先行プレイする機会に恵まれた。本稿では多岐にわたるアップデート内容と、それらのプレイフィールをお届けする。
複雑だが、可愛すぎるキャラクターが細かさをすっ飛ばすストーリー新章
『インフィニティニキ』を知らない方に概要をお伝えしておこう。本作はシリーズ累計で全世界1億ダウンロードを突破している着せ替えゲーム『ニキ』シリーズ最新作であり、オープンワールドRPGへと大きく舵を切った意欲作だ。主人公「ニキ」は星の導きでたどり着いたマーベル大陸で、世界の命運を握るという「ミラクルセットコーデ」を集めるべく世界中を旅していく。探索・アクション要素を大幅に強化しながらも、衣装の繊細で美しいデザイン、服装の組み合わせで勝負する「コーデバトル」など着せ替えゲームとしての要素もしっかりと存在。オープンワールドゲームとしてオリジナルの立ち位置を築いている作品である。
今回の試遊で体験できたのは、「大地の祷律」アップデートで追加されるメインストーリーの第2部、その序盤の展開や探索だ。新たなフィールド「イザンの地」で展開されるストーリーは第1部と地続きではあるが、キャラクターや展開は完全に新しい。また、チュートリアルを終了してすぐに「イザンの地」に向かうことも可能だ。その場合は、相棒のモモがそれまでの経緯を説明してくれる。

ニキとモモは、とある遺物に描かれた絵画を手がかりに、渓谷を越えて「イザンの地」へ向かう。そこで待ち受けていたのは、森に暮らすキノキノ族と、宗教組織・グランロア教の奇妙な関係だ。キノキノ族は柔らかな桃色の肌を持つ、可愛らしい純朴なキノコの種族。グランロア教は、キノキノ族の母体である「マザーキノコ」の衰弱を救うためにこの森へやってきたという。しかし、彼らに寄り添うはずのグランロア教は高圧的で、言葉の端々に不自然な気配が漂う。ニキは背後に潜む陰謀を暴くため、グランロア教の“聖女”のふりをして調査を始める。のどかな世界観の裏に見え隠れする不穏な空気は、ストーリーを進めたくなる推進力になっている。
ただし、新章は新たな用語や新キャラが一気に提示され、冒頭の展開はやや急ぎ足だ。断片的な言葉のみで進んでいくパートもあり、「幻想的で綺麗」なことしかわからない、という状態になることも。キノキノ族とグランロア教、聖女の関係などの説明が時系列も含めてもう少し丁寧であれば、没入感はさらに高まっただろう。とはいえ、「可愛いキノコの一族を救え」というだけで動機付けは十分。キノキノ族を見て少しでも母性本能が刺激されたならば、それだけでストーリーを進める価値はある。

ストーリーの合間に挟まれるゲームプレイでは、新たなスキルコーデを用いたギミックや、ステルスが求められるパートなどもあり展開はバリエーション豊か。“新しい土地での冒険”という新章らしい期待感もしっかり演出できており、ニキの立ち位置がはっきりする序盤以降は物語の行方が素直に気になってくる。
“歩きたくなる”新フィールド「イザンの地」
新章の舞台「イザンの地」は、広大なスケールの開けた光景が印象的な“歩きたくなる”フィールドだ。キノキノ族の生活圏を中心に、彼らの文化と自然が混ざり合った幻想的なエリアになっている。
はじめに訪れる「巨木の森」は、その名のとおり見上げるほどの巨木が立ち並ぶ森林エリア。木漏れ日が差す森の光は立体的で、水面や植物の光沢はみずみずしく映る。この森に集落を構えるキノキノ族は、水浴びや動物のお世話など生活の様子がつぶさに描かれ、見ているだけで癒やされる。また、彼らが飼育するパステルカラーのカタツムリ「ミニカルゴ」の潤んだ瞳もたまらなくキュート。ビジュアル面もより遠景の影が描画されるなどアップデートされており、“生きたファンタジー世界”としての説得力が増している。

巨木の森を奥まで進むと、突如として「巨獣」が姿を見せる。10メートルはあろうかという巨体は威圧的だが、後述する巨大化スキルにより、ニキが後ろから咆哮を浴びせると簡単に気絶してしまう。図体に反して臆病な生き物なのだ。敵対的な存在であっても、どこか憎めない要素を持つ『インフィニティニキ』らしさは新章でも健在となっている。
そして特筆したいのは、キノキノ族の都市「スカルゴン城」。巨大なエスカルゴの殻の内部に築かれた都市で、壁面一面に広がる真珠層が光を柔らかく散らし、棚田のような階層構造が奥行きを美しく強調する。螺旋状の街並みは視覚的にもユニークで、この場所を少し歩くだけで、新章のエキゾチックな空気感が伝わってくる。

イザンの地にはほかにも、巨獣を優に超える巨大生物の“骨”が転がる湖や、コロシアムのような遺跡、風化した建造物が埋まる砂浜など、壮大なスケールのロケーションが多数存在する。一方で探索した範囲では、「奇想の星」集め、素材収集など基本の流れが変わっておらず、追加されたフィールドの大きさに対して、プレイ感覚がさほど変わっていないのが惜しいところだ。
可愛い世界に“ダイナミックさ”を注ぎ込む「巨大化」
今回のアップデートを象徴するのが、ニキが一時的に5メートルほどの巨体へと変身する新スキル「巨大化」だ。ニキはイザンの地に入って間もなく、巨大化用のスキルコーデを入手できる。巨大化中、ニキは森の植物を跨ぎ、岩場を一歩で超える。ダッシュ主体だったこれまでの移動と比べはるかに速く移動することができ、“世界を大股で歩く”感覚は心地よい。発動中は専用のゲージが減っていくため無制限ではないが、切り替えのテンポが良くゲージも自動回復するため、ほぼストレスなく多用することが可能だ。
ドレス姿で街中をふわりと飛び回るこれまでの『インフィニティニキ』もシュールに見える瞬間はあったが、今回のアップデートにより、ドレス→巨大化→ドレスがくるくる入れ替わるという、もはやなんのゲームなのかよくわからない画が眼前に広がる。しかしなかなかどうして、スケールが大きいイザンの地では意外にも巨大なニキの姿はなじむ。通常時は見上げるほど大きかったキノコが、巨大化すると同じような背丈になりまったく印象が変わるなど、探索には“一粒で二度おいしい”ような楽しさが加わっている。

さらに巨大化中は「咆哮」で周囲の敵を怯ませられるうえ、踏みつければ気絶させるなど戦闘でも活躍する。大きな箱を動かすなど、一部のギミック発動にも巨大化が有効。視界が広がり、移動効率が上がり、戦闘を楽にする。この“冒険の基本行動全般”が一段階快適になる感覚は、これまでのインフィニティニキにはなかったものだ。探索、戦闘、ダンジョンのギミックなど、短い試遊時間のなかだけでも広範囲に深く影響を及ぼしており、巨大化は今回のアップデートの核になっている。
一方で、便利すぎて巨大化に頼りすぎると、世界をじっくり味わう感触が薄れる一面もある。巨大化中の服装はカジュアルなスキルコーデに固定されるうえ、ズカズカと進むアグレッシブな見た目は、ドレスをまとって可憐に進む普段のニキのイメージと違いすぎて戸惑ってしまうプレイヤーもいるだろう。とはいえ、その軽快さと派手さこそが巨大化スキルの醍醐味であり、“美しい世界を巨大化して豪快に駆け回る” という体験にはシンプルな快感がある。

「鉤爪」と「弓矢」が、探索と戦闘に新しい風を吹き込む
巨大化に隠れがちだが、新スキル「鉤爪」と「弓矢」もまた、探索や戦闘を快適にする重要な要素だ。
鉤爪は、スカルゴン城のような立体構造で真価を発揮するスキルだ。鉤爪のスキルコーデを装備すれば、特定のポイントや「ミツバチ」にグラップルし、スムーズに高速接近できる。その勢いのまま浮遊へつなげることもできるため、縦・横どちらの方向もこれまでの数倍快適に移動できる。遠くのポイントや動くゴンドラに向かって飛び移る瞬間には小さな爽快感があり、探索がリズミカルにより自由になった。

ただし、鉤爪はスカルゴン城を中心に使える場所がある程度限定されており、もっと自由に使いたいと感じる瞬間もある。また、鉤爪が使えるポイントがあるかどうかはスキルを装備しておかないと判明しないため、毎度切り替えなくてはいけないのは小さなストレスになっている。今後のアップデートで利便性が向上し活用幅が広がれば、さらに“冒険アクション”の側面が成熟していきそうだ。
そして弓矢は、これまでの攻撃手段「浄化」の代替となる新たな戦闘スキル。連射、貫通矢、複数の敵をホーミングするチャージ弾などアクション性が高く、戦闘のテンポを軽快にしてくれる。ただ、そもそもの敵の種類や行動パターンが戦闘主体のゲームほど多くない本作においては、“味変”的な側面が強く、戦闘システム全体を変えるほどのインパクトはない。それでも多彩なスキルを駆使して機敏に矢を放つニキの姿は新鮮で、探索やストーリーの合間の心地よい刺激になっている。

音響が進化し、“アトラクション化”するダンジョン
今回体験できたダンジョンは「マザーキノコの夢」と「巨獣の城塞」の2種類。それぞれ異なる方法で“冒険感”を表現しており、このアップデートの方向性が最も明確に表れている。
最初に訪れた「マザーキノコの夢」は、病に侵されたマザーキノコを救うため、ニキが潜る精神世界。内部は柔らかな緑と胞子が漂う幻想空間で、巨木の内部を歩いているような独特の空気が漂う。ここでも「巨大化」スキルが活躍し、巨大化して増えたニキの重さでキノコを押し潰し、解除した反動で大ジャンプするなど、ダイナミックなギミックが爽快だ。

特筆すべきはハイクオリティな「音」。2万種類以上のサンプルが収集されたという音響面でのアップデートにより、洞窟に反響する足音や鳥の鳴き声、“樹木の音”までが重なり合い、強烈に生きた世界を演出する。場面ごとに変わる音楽も素晴らしく、ラストで巨大なクラゲに乗って上昇するシーンでは、周囲360度を漂うクラゲと壮大なオーケストラのBGMが相まって圧巻の没入感があった。
一方でダンジョンの中には謎解きらしい謎解きがなく、ただただ進んでいくのは退屈に感じることもあった。せっかく終盤に印象的なシーンを用意しているのであれば、より達成感を感じられるようなギミックを用意してほしかったというのが正直な感想だ。
次に潜入したのは「巨獣の城塞」。こちらは巨人族が住んでいたという城塞を探索する内容で、すべてのオブジェクトがニキの背丈よりも大きく、小人のような感覚で進むのが楽しい。要所要所で巨獣に追われるため、隠れたり走ったりしながら巨大な仕掛けを攻略していく。2つ目のダンジョンということもあってか、巨大化スキルを使ったギミックはより多彩になっており、大きな木箱を動かして足場を作る、ニキの“咆哮”で巨獣を誘導して壁を壊すなど、派手な演出の連続は息つく暇もない。巨獣が突然ぎょろりと壁から覗いてくることもあり、普段の臆病ですぐ気絶するイメージで舐めてかかっていたからか、本気で驚きの声を上げてしまった。「マザーキノコの夢」と同じく難易度の低さには違和感を感じたが、総じて巨大化を用いたステージとして、アトラクション的に楽しむことができた。

ほかにも「大地の祷律」アップデートでは、「秘せし祈りの調べ」をはじめとした絢爛な新衣装の数々、バラエティ豊かなミニゲーム「祈りのティアクリスタル」、コーデバトルの新たな勢力、大量のイベントやアクティビティなど、多くのコンテンツが追加されている。詳細は公式のお知らせを確認されたい。
“可愛い”と“ダイナミック”が両立した、転換点となるアプデ
「大地の祷律」アップデートの「巨大化」スキルは、可愛い衣装や世界観の美しさを大事にしてきた『インフィニティニキ』とは思えないワイルドな新要素だ。それに呼応するように、豊かな大自然が広がるフィールド、鉤爪・弓矢がもたらす軽快さ、音響面で大きく進化したダンジョンなど、新要素の数々は大きくスケールを増して“巨大”。当初は違和感があった巨大化も、その壮大さをもっとも端的に体感できる手段としてゲームプレイに違和感なく溶け込んでいると感じた。これまでのイメージにとらわれず、自由な視点、高い視座で「オープンワールド着せ替えRPG」としての新たな一歩を踏み出そうという意欲的なアップデートとなっている。
もちろん、ストーリーの情報密度や限定的な鉤爪、ダンジョンの達成感など課題は残る。それでも今回のアップデートは、可愛さ、美麗さを極める本作が、冒険・アクション要素にも“本気”を見せてきたことがうかがえる内容だった。

従来のファンはもちろん、「可愛いけどゲームとしてどうなんだろう?」と距離を置いていたゲーマーにもアプローチできる新たな方向性の進化が印象的だ。今の『インフィニティニキ』は、美しさとダイナミズムを併せ持つ、唯一無二の世界へと歩み出している。
『インフィニティニキ』は、PC(Windows/Steam/Epic Gameストア)/PS5/Android/iOS向けに基本プレイ無料で配信中。



