人気オープンワールドサバイバル『Enshrouded』大型アプデ「Wake of the Water」の水は“ちゃんと動く”。新コンテンツもたっぷりの究極水遊び

「Wake of the Water」アップデートの水がカギとなるゲームプレイ、数多くの調整の一部を紹介する。

デベロッパーのKeen Gamesは11月10日、サバイバルアクションRPG『Enshrouded~霧の王国~』の大型アップデート「Wake of the Water」を配信開始した。

「Wake of the Water」は、文字どおり“水”をテーマにした内容だ。注目すべきは、地形に応じて形を変える水の物理演算。同作がこれまで培ってきたボクセル技術がさらにもう一段階進化し、「リアルタイムに動く水」を現実的に扱えるようになったことで、遊びの幅が大きく広がった。拠点づくりや探索、戦闘など、あらゆる遊びの構造に影響を与える水の存在は、プレイヤーの創意工夫を促進する。それだけではなく、新エリア「ヴェイルウォーター盆地」や新武器、新たな敵の追加など、数多くのコンテンツが用意された特大のアップデートとなっている。

弊誌は今回『Enshrouded~霧の王国~』の「Wake of the Water」アップデートを先行プレイする機会に恵まれた。本稿では、水がカギとなるゲームプレイ、数多くの調整の一部を紹介する。


水の挙動が「地形を動かす楽しさ」を底上げする

『Enshrouded~霧の王国~』は、最大16人のマルチプレイに対応するオープンワールドサバイバルRPGだ。舞台となるのは、謎の霧・シュラウドの発生によって崩壊してしまった世界「エンバーヴェイル」。プレイヤーは選ばれし者「フレームボーン」となり、霧の脅威を食い止めるために広大な世界を奔走する。地形ごと変化させられるボクセルベースの世界となっており、探索や建築の自由度が高い。また、スピーディな戦闘やスキルツリー、クラフトなど、RPGとサバイバル要素の両面が充実しているのも特徴のひとつ。今年の4月には総プレイヤー数が400万人を突破したことが報告されており、広く人気を集めている作品だ。

デベロッパーのKeen Gamesによれば、「Wake of the Water」はこれまででもっとも野心的なアップデートだという。目玉となるのは、物理法則に則って動く「水」の導入だ。新エリア「ヴェイルウォーター盆地」を中心に、エンバーヴェイル全域に大小の水辺が追加されている。水の動きは物理的なルールに基づいており、たとえば掘った地面に水が流れ込めば水たまりを形成し、高いところから落ちれば自動的に滝となる。新アイテムである給水ポンプで吸引すれば、「移動」させることもできる。触れてただ波紋が広がるような、既存の水表現よりも自由度・インタラクト性が高い仕組みだ。

泳ぎや潜水、ダイビングも可能になっており、水を利用したギミックも用意されている。とはいえ、単純に水辺を掘って小川を作り、ポンプで水をまき散らしてみる、といった“水遊び”そのものが楽しい。そんな本能的な好奇心が刺激される。

建築ではさらに自由度が広がる。無限に水が湧きだす「給水機」を利用すれば、水のない既存の拠点にも水を利用したギミックを作ることが可能だ。なお、拠点内の水は一斉に削除する機能もあるので、水浸しになってしまっても安心。面白いのは、この水の導入によってプレイヤーの思考の方向性が変わることだ。

以前は彫刻のように地形や建築物をどう形成していくかに意識が向きがちだったが、動く水の導入により、“動的な環境とどう組み合わせるか”を考えるようになった。たとえば、畑に水門を設置して水田のようにしたり、滝を利用して水車を回し、その裏に秘密の洞窟を掘ったりといった発想が自然に浮かぶ。水を通さない魔法の防水壁を使えば、水中都市を作ることもできるだろう。重力に基づいて自由に動く水をどう扱うか、という小さな実験の積み重ねが、ゲームプレイのテンポに変化をもたらしている。

水は野心的な仕組みである一方で、まれに重力を無視した形に水が飛び出ていたり、水中で滝のようなエフェクトが流れたりと、挙動が不安定になることもある。また、水を利用したギミックや装置の種類は限られており、野心的な技術に反して、体験を根本から変えるほどのインパクトはない。触って確かめたくなる仕組みではあるが、現時点では装飾+α程度の遊びにとどまっている。

「ボクセルベースの世界で水がリアルタイムに動く」という技術的な進歩、格好の素材を、ゲームプレイに活かしきれていないというのが正直な感想だ。ただKeen Gamesは水のシステムを今後継続的に改良するとしており、単なる“水遊び”以上の深みを持たせることができるか、今後の調整に期待したいところだ。


明るくもシビアな「ヴェイルウォーター盆地」にダイブする

水がシステムとして導入されたことで、探索の手触りも大きく変わった。新エリア「ヴェイルウォーター盆地」は、前回の追加エリアである厳しい雪山「アルバネヴ山頂」とは対照的な環境だ。青い光をたたえる水辺、ビーチに沿って点在する遺跡など、風景はカラッと明るく開放的。特定の装備があれば、水中でのフック移動や採掘なども可能で、海賊気分でサルベージが楽しめる。

印象的なのは、水が謎解きや探索の一部として設計されている点だ。細い水路に潜って通り抜け、酸素残量を意識しながら迷路を奥へと進む場面もあり、限られた光源が方向感覚を奪う。訪れた遺跡のひとつでは、金貨に囲まれた宝箱を開けた瞬間、部屋に閉じ込められ、天井から水が流れ込んでくるという仕掛けがあった。古典的なトラップだが、リアルタイムに溜まっていく水の動きが加わることで緊張感が生まれている。

探索の報酬面も調整が加えられている。宝箱の中身はゲーム終了後も保持されるようになり、以前のようにリセットを繰り返して厳選することができなくなった。代わりに、高レアリティの宝箱におけるエピックやレジェンダリー装備の排出確率が上昇し、一度に2つの武器が出現する可能性もあるように変更。さらに、一部の敵からはその敵が持っている装備が確率でドロップするようになり、エピック・レジェンダリー武器の入手機会が大幅に増加した。後述の「両手大剣」をはじめとして新装備も多数追加されており、大量の戦利品の中から理想の装備を探すハクスラ的快感が強化されている。

「ヴェイルウォーター盆地」は見た目こそ明るく穏やかだが、難度は決して低くない。水中の探索、即死級の罠、謎解きが適度な緊張感を生む。そして大量の新装備や報酬の見直しで、探索のモチベーションが補強されている。


バランスの見直しで、手に汗握る戦闘

「Wake of the Water」アップデートでは戦闘も見直されている。「ヴェイルウォーター盆地」の敵の攻撃は以前よりも苛烈で、ガードを貫通する火炎放射なども繰り出してくる。一方で、水に関連するギミックが戦闘にも組み込まれており、たとえば水中へのダイブや「水風船」により身体を濡らしておけば、火属性攻撃のダメージを軽減できる。環境利用が戦略として機能するのは新鮮だ。

新種族「ドラク」はトカゲのような外見を持つ敵で、地面を隆起させる攻撃や、フックを使ってプレイヤーを引き寄せる行動を見せる。大きな体躯からの攻撃は重さがあり、見た目の迫力はある。ただ、攻撃パターン自体は人型の敵と似ており、新鮮味という点ではやや薄い印象も受けた。それでも、古代遺跡や水辺といった環境との相性はよく、戦闘の雰囲気を形づくる存在としては効果的に機能している。

そして新武器タイプ「両手大剣」は、ロマンあふれる大ぶりの武器だ。攻撃速度が遅く扱いが難しいが、回転攻撃スキルを使えば複数の敵を一掃できる。ヒットアンドアウェイが効果的で、スキル構成やジェムの選択次第で印象が変わる武器タイプとなっている。現状ではややパワー不足を感じるものの、“重い武器を振り下ろす手応え”という点では確かな個性がある。

全体の戦闘バランスも調整されており、武器の耐久値が上がって継戦能力が増した一方で、休息による回復速度は減少した。これにより、後退と回復を繰り返す“ゾンビ戦法”は通用しにくくなり、ポーションや包帯といったリソース管理がより重要になっている。敵の攻撃パターンを見極め、間合いを測り、リスクを取りながら攻めるという戦闘の基本がよりスリリングになり、戦闘の緊張感は確実に増加。水際の戦闘では誤って水に落ちてしまい、一方的に攻撃されてしまうなどの問題もあるが、新エリアにふさわしい水のギミックも用意され、戦闘はより厳しく、より楽しい感覚だ。

難易度の上昇に合わせて、プレイヤーのレベル上限はこれまでの35から45に上昇し、武器もレベル50まで強化できるものがドロップする。また既存の武器に関しても、氷をまとった短剣が見た目通り氷属性のダメージを与えるなど、ビジュアルや説明文に沿った効果になるよう全面的に調整された。

一方で現状の「斬撃」「雷」といった属性システムは、敵タイプとの相性により多少のダメージ増減はあるが、クリティカルなほどではなく、属性よりもレベルや攻撃力の影響が大きい。属性の違う複数の武器を持つ意味があまりなく、武器の耐久値が上がったこともあり、ただ攻撃力が強い武器が1、2本があればよいという状態になってしまっている。お気に入りの武器を使い続けられるというメリットはあるが、特定の属性の武器を探し求めるようなハクスラ的楽しみは薄れてしまう。高レアリティの武器の出現確率が上がっているので、属性の影響を大きくする、もしくは属性ごとの特殊効果が発生するなどの差別化が欲しいところだ。


溢れるほどの新要素で、好奇心が途切れない

戦闘や探索の変化に加え、生活要素も充実した。釣りやカピバラの飼育、「じょうろ」による農作物の生育状況確認など、プレイヤーの日常生活を豊かにする仕組みが加えられている。特に釣りは水辺であればどこでも行えるシンプルなミニゲームで、魚の動きに合わせて竿を引くだけの直感的な操作だ。釣った魚は料理の素材として利用でき、調理によって酸素量の上昇など実用的な効果が得られる。シンプルな仕組みで熱い駆け引きなどはないものの、穏やかさを重視した設計で、探索の合間に一服の癒しを提供してくれる。

このほか、竹を用いた家具をはじめとする大量の新アイテム・建材・呪文・スキルも追加され、メジャーアップデートにふさわしい特盛の内容となっている。QoL改善も多岐にわたり快適性が向上。派手な要素だけでなく、基礎部分の調整にも手が入っている。膨大な調整内容の全貌やハイライト等は、公式パッチノート(英語)を参照されたい。


“水”が世界と好奇心を動かす

「Wake of the Water」は、単に新しい遊びを追加したアップデートではない。水という基本的な自然現象をシステムとして導入し、それによってゲーム全体に新たな遊びを追加している。建築、探索、戦闘、生活、いずれの領域でも、プレイヤーが世界と関わる動機が強化された。水に関するゲームプレイの深みについては改善の余地があるものの、追加要素は多岐にわたり、メジャーアップデートとしてまず求められることを提供できている。

リアルタイムに動く水は、見た目の美しさ以上に、何かを試したくなる感情を呼び起こす。その「水で遊びたい」という感覚が、このアップデートの中心にある。現状は「遊び」の域を出ず実験的に思える部分もあるが、Keen Gamesが自社エンジンで積み上げてきた技術を、実際のプレイ体験に落とし込む試みとして興味深い。総じて、「Wake of the Water」アップデートはポテンシャルを感じる意欲的な内容だ。2026年に正式リリースを予定している本作が、今後さらにどのような技術的な飛躍、野心的なビジョンを見せてくれるのか、期待が高まる。

『Enshrouded~霧の王国~』は、PC(Steam)向けに配信中。「Wake of the Water」アップデートを記念して、11月24日まで、定価の20%オフとなる税込2720円で購入可能となるセールが開催中だ。

Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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