Nintendo Switch版『ウィザードリィ外伝 五つの試練』先行プレイ感想。『ウィザードリィ』 シリーズの歯ごたえはそのままに遊びやすくなった本作は、シリーズ入門に最適

『五つの試練』は3DダンジョンRPG『Wizardry(ウィザードリィ)』シリーズの外伝作品のひとつであり、2006年に発売された同名作品に大幅なバージョンアップを加えたリニューアル版だ。同作のNintendo Switch版を試遊した。

Game*Spark Publishingは、2025年1月30日にNintendo Switch版『ウィザードリィ外伝 五つの試練』(以下、『五つの試練』)のダウンロード版の発売を予定している。パッケージ版は2月27日に発売予定。今回はNintendo Switch版『五つの試練』を試遊する機会に恵まれたので、プレイレポートをお届けする。なお、試遊したバージョンは開発中のものとなるため、リリース時とは異なる点があることをご了承いただきたい。

『五つの試練』は3DダンジョンRPG『Wizardry(ウィザードリィ)』シリーズの外伝作品のひとつであり、2006年に発売された同名作品に大幅なバージョンアップを加えたリニューアル版だ。ワイドスクリーン/高解像度への対応、新UIや本体組み込み型の新シナリオセレクタの導入などが実施されている。また、ユーザーが制作したシナリオを、エディタサービスを通じて配信できるというオリジナル版の特徴も引き継がれている。なお、シナリオの制作に必要なエディタはSteam版ユーザーのみ利用可能だが、制作されたシナリオはSwitch版でもSteam版と変わらずプレイできる。


世界観とチュートリアルの両立

本作にはオリジナル版から存在する5つのシナリオに加え、チュートリアル付きのシナリオ「偽りの代償」が追加されている。デフォルトで選択されているシナリオということもあり、今回はこちらのシナリオをプレイ。

まずはパーティ集め。キャラクターを自分で作成することも可能だが、今回は酒場から作成済みのキャラクターを採用する形とした。『ウィザードリィ』シリーズには前衛・後衛システムが存在し、それぞれの職業ごとに向き不向きがある。本シナリオでは、酒場のキャラクターを上から順番にパーティに加えるだけでそれぞれの職業に向いたポジションになるように配列されており、ありがたくそのままの順番でパーティを組ませてもらった。

ダンジョンに入ると、そこでは「ゼルク塾・冒険者指南所」なるものが開かれていた。主人公たちの目的であるゼルクという人物が、冒険者たちのために開いた塾であるようだ。

ゼルク氏との面会を求めて塾内を探索すると、各教室で開催されている講義が耳に入ってくる。この講義に参加することで、『ウィザードリィ』シリーズの基本を学べる仕組みだ。このシステムのおかげで、世界観への没入を妨げることなくチュートリアルを完了できた。シリーズ経験者でチュートリアルが必要ない場合は、もちろん講義を聞かないことも可能だ。

どこにいても気を抜くことはできない

チュートリアルが終わると、ダンジョンの本格的な探索が始まる。戦闘のバランスはさすが『ウィザードリィ』といったところで、ただのモブ敵相手でも気の抜けない戦闘が続く。前衛職業のキャラクターであっても、当たりどころが悪ければ無視できないダメージを負ってしまうのだ。幸いゼルク塾には体力とMPを回復できる泉が用意されており、最初のうちはこまめに回復に戻ることになる。

苦しい序盤を耐えるうち、経験値を重ねたキャラクターのレベルアップが可能になる。RPGにおいて、キャラクターのレベルアップよりも嬉しい瞬間はそうそうない。

ところが、そこに待ったをかけるのが『ウィザードリィ』。レベルアップは街にある宿屋でのみ可能なのだ。つまり、ダンジョンの奥でせっせと経験値集めをしても、無事に街まで帰らなければ無意味。レベルアップ時の体力回復がないどころか、ステータス的にはなんのメリットも得ていない状態で街まで戻らなければならないのだ。その分、街に戻ってレベルアップを行えた時の達成感は測りしれないものがある。

ほかにも、宝箱に仕掛けられたトラップに正しい対処ができなければデメリットが発生したり、戦闘開始時には敵の正体は分からないため大体のシルエットで判断する必要があったり、マップを表示する呪文「ウィザードアイ」には使用回数の制限があるため、ある程度は自分で記憶しておく必要があったりと、プレイヤーに厳しい要素を上げればキリがない。個人的には、死亡したキャラクターを“一定確率で”生き返らせることができる蘇生システムが一番辛かった。初めから蘇生などできなければ諦めもついたのに……。

*僧侶2という名前から、筆者の身に降りかかった悲劇を察していただきたい。

厳しさはそのままに、遊びやすく

そして本作は、そんな『ウィザードリィ』特有の厳しさに手を加えるのではなく、遊びやすさを広げることでプレイフィールの改善が図られている。たとえば、宝箱のトラップを調べる際にはもっとも成功率の高いキャラクターがデフォルトで選択されているといったように、プレイ中の手間になる部分が丁寧にカットされている印象を受けた。ゲームに付属する説明書ではチュートリアルでカバーしきれていない内容も詳しく解説しているため、分からないことがあっても安心だ。そんな本作の中でも、特に「偽りの代償」は『ウィザードリィ』シリーズの入門に適したシナリオであると感じた。

遊びやすさの話をするならば、本作がSwitchに最適化されていることにも触れておきたい。今回の試遊で選択できた「携帯モード」はコントローラーでの操作を想定したもので、テキストも大きめに表示される。Steam版はSteam Deckにネイティブ対応しておらず、一部テキストが小さく表示されてしまう場合があるため、本作がSwitchに最適化されていることの意義は大きいと感じた。ゲーム全体のレスポンスもよく、慣れてくれば各種ショートカットや早送り機能で快適に遊ぶことができそうだ。オートセーブが入る場面では若干ラグを感じるものの、それ以外では不満のないゲームプレイが体験できた。

本作には今回プレイした「偽りの代償」以外にも5つのシナリオが用意されており、それぞれ10時間~数十時間ほどプレイできるボリュームたっぷりな内容となっている。『ウィザードリィ』シリーズ初心者ならば、「偽りの代償」で『ウィザードリィ』シリーズの基礎を学び、次のシナリオに挑戦してみよう。『ウィザードリィ』の世界にどっぷり浸かりたいプレイヤーには、ユーザー作成シナリオがオススメ。きちんと遊べるものだけでも100以上のシナリオが存在するようだ。総じて、本作は『ウィザードリィ』シリーズに慣れたプレイヤーにも初心者にも広く間口を開いた仕上がりとなっている。

Nintendo Switch版『ウィザードリィ外伝 五つの試練』ダウンロード版は、2025年1月30日に発売を予定している。パッケージ版は2月27日に発売予定だ。

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Daijiro Akiyama
Daijiro Akiyama

ゲームをすることと、ゲームの話をしたり聞いたりすることが同じぐらい大好きです。

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