箱庭型3Dアクション『Akimbot』紹介。楽しげな王道アクション……かと思いきや、やたら不穏さが見え隠れする

 

PLAIONは、8月30日に3Dアクションアドベンチャーゲーム『Akimbot』をPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売する。また本作は日本語に対応する。

『Akimbot』は、三人称視点で繰り広げられるアクションゲームだ。本作はフランスのデベロッパーEvil Raptorが開発を手がけ、パブリッシャーはPLAIONが担当している。今回は先行して同作の体験版を遊ぶ機会をいただいたため、本記事では、そこで触れられた内容をお伝えしていく。あくまで体験版で公開されている内容の紹介であり、実際に発売される内容と異なる可能性があることはあらかじめご承知されたい。


コミカルで陽気な世界をふんわりと包む微妙に重い空気

『Akimbot』はロボットによる3Dアクションゲームだ。ひょんなことから行動を共にすることになった二人のロボットが、自分の道を切り開くために冒険を繰り広げるストーリーになる。


体験版の舞台になる「データベイ」星には、青い海が広がっており、楽し気なBGMが流れ、リゾートを思わせる陽気さに包まれている。至って平和な雰囲気と言っていい。だが本作は冒頭からいささか穏やかではない展開をみせる。主人公の二人のロボットたちはマフィアに捕らえられて宇宙船で護送されており、しかも程なくしてその船はデータベイに墜落してしまうのだ。

このロボットしかいないSF世界の舞台設定は、なかなか壮大に思える。護送されていたロボットのエグゼは「ヤバいときに、ヤバい場所に居合わせた」ために、「アルゴリズム」なる存在に賞金を掛けられて逃亡の身だった。そしてエグゼの隣で声高に喋り続けていたシップセットというドローンは、銀行で数字の計算が退屈で辞める計画を練っていた。シップセットは、自身のことを「データベイ中央銀行のシステムマネージャーとして設計された」と語っており、この世界では、ロボットによる何らかのエコシステムのようなものが働いていると考えられる。


このあたりのくだりにはこだわりが感じられる。なぜなら普通のアクションゲームであれば、重要なのはアクションそのものであり、ストーリーはそこまで重要視されないことが多いからだ。もちろんそれは良い悪いの話ではなく、単純で派手でスッキリするアクションゲームを求める層にとって本作のストーリーは、少々重たいと感じる向きもあろう。となれば、やはり本作の要諦はアクション部分の出来栄えになるに違いない。


オープンワールド風だが実はリニアな世界

本作はバディ・フィルムのように「対照的な二人」が冒険やミッションをこなしていくスタイルを取っている。といっても戦いを担当し、プレイヤーが操作するのはエグゼだ。エグゼはクールな一匹狼の傭兵で、シップセットはエディ・マーフィばりのマシンガントークを繰り出すドローンである。ゲームは二人を軸にして進んでいく。

護送機が墜落して「データベイ」星に放り出された二人は、賞金首としてマフィアに追われており、急ぎ徒手空拳でこの星を逃げ出さなければならない。「脱出用の船があるからオレと手を組もう」と持ち掛けてきたシップセットをいまいち信用していないエグゼだが、他に手がないため、しぶしぶ星から脱出するための船を求めてシップセットと同行することになる。

オープニングが終わってエグゼの操作が可能になり、適当にボタンを押したりスティックを使って移動してみると動きに癖がなく、操作性は良好だ。が、これから何をすべきかがいまいちわからない。そういえばメタな話ではあるが、ゲーム的な指示を受けていないことに気がついた。画面UIはミニマルで、真ん中上部にある体力ゲージと、コインの金額数、そして「脱出用の船を見つける」とだけ書かれたクエスト目標があるだけのシンプルなもので、プレイヤーにやることを細かく指示をする気はなさそうだ。そもそもマップ機能がないので、マップを見ながら目的地に向けて移動するお約束のような行動も取れない。


そうした仕様によってちょっと混乱したが、ゲーム内で眼下に広がる世界を見ていると、どこにでも進めそうに見える。そういえばシップセットとのやり取りのなかで、「(俺らは)どこに向かっているんだ」、というエグゼの問いに対して「まっすぐ前に!」と言っていた。なので、とりあえずあてもなく移動してみることにした。少し進むとNPCロボットがいて、彼らの住居やヤシの木や何やら様々な施設が点在しているのがわかった。なるほど、この星にはロボットたちの営みがあるのだ。

初めの島では敵らしい敵は一切でてこない。チュートリアル風の操作説明が入り混じったリゾート観光のような移動を終え、ハッキングしたボートで新しい島に着くと、ロボリオーニ一家というマフィアたちに出会った。彼らはエグゼとシップセットを捕まえた集団で、二人を再び確保しようと攻撃を仕掛けてきた。

ここからは、戦いを通じてゲームプレイの軸であるさまざまな戦略を試行錯誤することができる。初めは近接攻撃をしてくる敵しかいないが、遠距離攻撃が可能な「アサルトライフル」を手に入れてからは、接近してくる敵と遠方から射撃してくる敵に対して、武器の使い分けが重要になってなってくる。

フィールドにはさまざまなギミックが点在している。倒した敵の上に乗って水の上を移動したり、ハッキングをして船を動かしたり、水上に青いパイプを浮かべて足場を確保したりできる。また、ちょっと足場がなさそうなところも、二段ジャンプなどを駆使することで、ギリギリ足場から足場に渡れるようなアスレチック的な動きを駆使して進んだりと、多彩な行動が可能だ。

ところで本作は一見オープンワールド風に見えるが、少なくとも体験版においては、完全にリニアな構造になっている。ステージ内で目的が与えられ、それを達成して最後に待ち受けているボスを倒せばステージクリアとなって、次に進めるという設計だ。なので、画面をみてオープンワールドを期待し、本作を選ぼうと考える人々にとっては、そのあたりを少し留意する必要があるかもしれないと申し添えておく。


実に楽しい二人の軽妙なやりとり

脱出用の船を求めて島から島へと移動を繰り返す二人に対し、やられっぱなしのマフィアたちだったが、さすがにこれではまずいと思ったのか、段々と厳しい攻撃をし掛け始めてくるようになる。

「お前らの懸賞金は生死を問わずだ。俺は別にどっちだっていいんだぜ!」とボスのロボリオーニが二人に言い放ったのをみると、黙って逃がしてくれる気はまったくなさそうである。


そんな危険な状況の中で、逃避行を続けるエグゼとシップセットの関係性は、少しずつ変化が見えはじめてくる。二人が出会った頃、エグゼはシップセットに「仲良しゴッコは御免だぜ。おしゃべりはなしだ、ドローン」などと冷たく言い放っていたが、共に過ごしているうちに、段々とシップセットとのおしゃべりに興じるようになり、しまいにはボケツッコミ的なやりとりをしたりもする。そんな二人のやりとりは、ぎこちなくも楽しげで、思わずセンス溢れる会話にニヤリとしてしまう。ローカライズも素晴らしく、没入感は抜群だ。


ボス戦に突入する


マフィアのボスであるロボリオーニは、満を持して用意していた砲台群をもってしても、二人を止められなかったので、とうとう切り札である「ガンマ砲」を撃ちはじめた。これは超遠距離精密攻撃で、当たれば大ダメージを受けてしまう危険な代物だ。なのでタイミングを見計らって遮蔽物に隠れながら進まなければならないが、通常の敵たちもここがチャンスとばかりに、こぞって攻撃をしてくるので、手に汗握る気の抜けない展開が続く。そして、ガンマ砲をなんとか避けきった二人が、とうとう船がある目的の場所にたどり着くと、いよいよボスのロボリオーニが登場する。

ロボリオーニは、米軍の「オスプレイ」に似た形状の一人乗りの機体に乗って空から猛攻撃を仕掛けてくる。シップセットはロボリオーニの機体をみて「デッカい錆びバケツだ」と馬鹿にするが、実際攻撃は苛烈で、あっという間に体力を削られてやられてしまった。このゲームを始めて初めての喪失に思わず青ざめた。私はアクションゲームはあまり得意ではなく、いわゆる「死にゲー」と呼称されるジャンルのゲームはあまりやってこなかった。なので正直この難敵に勝てる気はしなかったが、ここまで頑張ったのだから、と負けたくない気持ちもふつふつと沸いてきたので、気を取り直してゲームを再開した。

だがその後も惜しいところまで行く時はあったが、ちょっとしたミスが出るなどして何度もやられてしまった。展開としては少しは改善していると思うのだが、結果としては勝てない。5回くらいやられ続けて、一度コントローラーを置いて考えてみたら、ミサイルの連続攻撃に直撃すると大ダメージを受けること、そしてジャンプやダッシュをしているときはあまりダメージを喰らっていないことに考えが至った。


それに、さすがに何度もやっているとそれなりに上達してきて、メリハリをもった攻撃ができるようになってきたと思うし、ハッキングの成功率も上がっている。ハッキングに成功するとボスは攻撃を一時的に中止するので、その間に攻撃を加えることができる。雑魚敵にはジャンプで近づき、近接攻撃に切り替えて攻撃すると素早く倒せることや、回復できる敵の場所を覚えて、それを必要な時に使うようにした。

それでもなかなか勝てなかったが、ボス戦を始めてからちょうど10回目の戦闘で、コントローラーを投げる前にとうとう勝つことができた。この時は妙な達成感が湧き上がってきて、なんか感動してしまった。久しく忘れていた、自分の能力が向上して勝利を掴んだゲームの喜びだった。


先行体験版を終えて

舞台には、本来ロボットの主であるはずの人間の痕跡はなく、これがシンギュラリティやディストピア、はたまたポストアポカリプス的な何かが起こった結果なのかは、体験版で得られる情報では判別できなかったが、楽しい舞台のアクションゲームなのにも関わらず、どこか陰鬱とした雰囲気が漂っていた。体験版のボスであるロボリオーニは、手下のことを「安レンタルのチンピラども」と呼んでいた。ロボットだけの世界なのに、ロボットたちは結局人間社会のような資本主義的な価値観で生きていることが透けて見える発言である。人間が作りあげた世界は弱肉強食ではあるが、弱いものも何とか生きていける世界ともいえ、ロボットたちはきっとその世界線を踏襲した世界を構築しているのだろう。マフィアの存在や、「アルゴリズム」と呼ばれるエグゼに賞金を掛けた存在……人間社会に似た厳しい世界がそこにはあった。


だが冒頭でも述べたが、複雑な背景はこのアクションゲームにとってもっとも重要な要素ではない。ストアページには「自分の道を切り開いて、迫る破滅から全宇宙を救うミッションに挑もう!」とある。体験版では「迫る破滅」が何なのかは分からなかったが、ゲームそのものが爽快なアクションと歯ごたえのある難易度によって大いに楽しめるものであり、今後に期待が持てた。体験版では触れられなかった、エグゼが「アルゴリズム」に賞金を掛けられた理由は何なのかも知りたいし、反目し合う対照的な二人のロボットの関係がどう変容していくのかも気になる。何より彼らを操作して広大な銀河系に広がる惑星を旅してアクションを繰り出して冒険をしたい。正式なリリースが待ち遠しい一作だ。

『Akimbot』PC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S版は、8月30日発売予定だ。