『レインボーシックス シージ』新シーズン「Deadly Omen」先行プレイレビュー。9年目を迎える長寿eスポーツゲームの「原点回帰」とそれに伴う「大胆変革」について

ユービーアイソフトは2月25日、『レインボーシックス シージ』の新シーズンであるYEAR9シーズン1「Operation Deadly Omen」 の詳細を発表した。今回は実際に新シーズンに触れた上でのファーストインプレッションを紹介していこう。

ユービーアイソフトは2月25日、『レインボーシックス シージ』(以下、『シージ』)の新シーズンであるYEAR9シーズン1「Operation Deadly Omen」(以下、「Deadly Omen」) の詳細を発表した。新シーズンでは新規オペレーター「DEIMOS」がゲームに追加されるとともに、ゲームプレイの根幹に関わる仕様変更が複数実施される。

1年に一度の『シージ』コミュニティのお祭りである「Six Invitational 2024」のフィナーレが迫る中、ユービーアイソフトより「HEAVY METTLE」先行プレイの機会をいただいた。実際に新シーズンに触れた上でのファーストインプレッションを紹介していこう。なお、一般公開前のテストサーバーの情報を含むため、ライブサーバーへの実装時には一部情報が異なる可能性もあることに留意してほしい。

Six Invitational 2024のキービジュアル


新オペレーター「DEIMOS」は攻撃に「スタンドプレーから生じるチームワーク」をもたらす

DEIMOSのビジュアル


● サイド:攻撃
● オペレーター名:ジェラルド・モーリス
● ニックネーム:DEIMOS
● 出身地:米国アラバマ州バーミンガム
● メインウェポン:AK-74M(アサルトライフル、NOMADと同一の武器) or M590A1(ショットガン、SLEDGEらと同一)
● サブウェポン:.44ヴェンデタ(リボルバー、新武器)
● メインガジェット:DEATHMARKトラッカー
● サブガジェット:フラググレネード or ハードブリーチングチャージ
● アーマー:2 スピード:2
 

DEIMOSはアメリカ出身の新オペレーターである。実は今シーズンが彼の初登場ではない。ゲーム内で直接語られることは少ないものの、『シージ』では8年に渡りバックストーリーがじわじわ進行していた。DEIMOSは昨年ごろからこのストーリー内で存在感を増し続けているヴィランであった。元々、レインボー部隊の一員として創設当時から対テロ国際組織で活動していたようだが、ある時、部隊と袂を分かちその後は敵対する立場となる。混乱に乗じてレインボー部隊のリーダーであるハリーを殺害し、各地で逃亡、転戦を続けていたDEIMOSだが、ついにZERO、MIRA、ROOK、DOCらによって身柄を拘束される……。というのが直近までのストーリーである。春は出会いの季節。なんとDEIMOSはレインボー部隊に加入して新生活を始めることとなる。


敵対していた組織に加入したDEIMOSの思惑、そしてレインボー部隊の今後も気になるが、もっと注視すべきは彼のゲーム内の性能である。彼の基本的なステータスを見てみよう。

攻撃側のオペレーターとして新たに実装されるDEIMOSは、アーマー2、スピード2のスタンダードなスペックを持つ。メインウェポンにはアサルトライフルのAK-47M、ショットガンのM590A1を選択可能だ。前者は弾数が多いがその分ファイアレートが低く単位時間当たりのダメージは全武器の中で平均的。後者は英国の特殊部隊SAS出身のオペレーターたちが携行しているものと同じで、ゲーム内では非常にポピュラーなショットガンである。

サブウェポンである.44ヴェンデタはDEIMOS実装と同時に登場する新武器ということもあって目を引くが、性能は並。サブガジェットのフラググレネード、ハードブリーチングチャージも、現代シージにおいては「まあまあ便利」にとどまる性能だろう。ここまで見ると、ストーリー上の役割の大きさに比べて『シージ』におけるDEIMOSのインパクトは地味に思えるが、それらをひっくり返すのが彼固有のガジェット「DEATHMARKトラッカー」(以下、DEATHMARK)である。

DEIMOSのロードアウト


DEATHMARKは小型の飛行ドローンで、起動するとDEIMOSの周りをくるくる旋回していてかわいい。しかしその性能は凶悪で、特定済みの防衛側オペレーター1名の居場所を一定時間捕捉する(赤ピンをつける)ことができる。『シージ』がほかの類似のタイトルと異なる点として、ラウンド開始時に相手側のオペレーター構成が隠されていることが挙げられる。ドローンのカメラで個人を目視してスキャンするか、各オペレーター固有のガジェットを確認することで、初めて相手側に誰がいるか特定できるのだ。DEATHMARKを使うことで、「誰がいる」という情報を基に「誰が“どこに”いる」という、より精度の高い情報を取得することが可能になる。マップが入り組んでおり位置情報の価値が高い『シージ』において、DEATHMARKがもたらす効果はチームの勝利を力強く引き寄せる。

とんでもないスペックのDEATHMARKだが、使用に際しては制約がある。DEATHMARKで居場所を特定すると、DEIMOSを操作するプレイヤーの画面にはそれが表示されるが、他の味方のプレイヤーの画面には映らない。また、特定されたプレイヤーは「特定されたこと」を認識できるとともに、逆にDEIMOSの居場所を大まかに把握することができる。

MUTE、VIGIL、TUBARAOといったガジェットの効力を打ち消すカウンターガジェットを持つ相手にはあまり効果がない。しかも、DEATHMARK使用時には使える武器が制限され、DEIMOSはリボルバーを持って戦うことを強いられる。

DEATHMARKトラッカーの概要


とはいえ、使用時の制約が大きいのはDEATHMARKが生み出しうる利益が大きいからにほかならない。撃ち合いに自信があるプレイヤーであればリボルバーを携えて単騎突入し、居場所が分かっている相手を追い詰めることが十分に可能だし、ティザームービーを見る限り、SNSにクリップを投稿したくなるような爽快感のあるプレイ体験になるだろう。

打ち合いに自信がなければ、ボイスチャットの出番だ。DEATHMARKに引っかかった相手プレイヤーはDEIMOSの位置がわかる都合上、彼を強く意識せざるをえない。そこでDEIMOSをデコイとして別の角度から味方が詰めることで、確実性の高い連携が可能となる。DEIMOSがフラググレネードを携行可能で定点にいる相手を動かしやすいという点を鑑みても、味方とのコミュニケーションでキルを取ることに長けたオペレーターであるといえる。

射撃面におけるシージの「原点」への回帰

9年目を迎える『シージ』の歴史はゲームバランスの調整の歴史でもある。今回、もっとも議論を呼びそうな調整が、倍率スコープの「原点」への回帰である。

ヘッドショット一発で相手をキルできること、ラウンド中のスポーンがないことから、『シージ』において、目標をセンターに入れてスイッチを押す精度の高さは勝率の高さに直結する。頭1個に照準を合わせる上で、虫眼鏡のような役割を果たす倍率スコープは重要で、これを携行可能かどうかはオペレーターの採用頻度に大きな影響を与えてきた。それゆえ、あまり使われていないオペレーターに対する上方修正として「倍率スコープを付与する」という調整が近年では多発しており、これはコミュニティで賛否両論の議論を生んでいる。

前述のDEIMOSのDEATHMARK然り、『シージ』の独自性、面白さは各オペレーターの個性豊かなメインガジェットをいかに活用するか、その戦略性にある。そうした戦略性が面白さであるにもかかわらず、倍率スコープを持っているかどうか、撃ち合いの性能の高さだけで調整が行われている現状に対し、難色を示すユーザーが少なくないのだ。

今回、この論争に終止符を打つべく、倍率スコープの仕様に大ナタが振るわれた。1.5倍スコープ、2.0倍スコープ、3.0倍スコープの撤廃、攻撃オペレーターへの2.5倍スコープの一斉配布、防衛オペレーターからの大幅な倍率スコープ削除である。撤廃、配布、削除とさまざまあるが、要するに、これまでの調整で複雑怪奇になっていたスコープ所持の状況を整理して数年前の状態に戻す調整が今回実施されるのだ。2.5倍スコープが「ACOG」と呼称され、それ以外の倍率スコープが(スナイパーライフルを除き)存在しなかった時代への回帰である。

ついにASHに「ACOG」が帰ってきた

防衛側で倍率スコープを持つのはDOC, ROOKらに制限される


これによって、攻撃側と防衛側の倍率スコープの均衡が崩れ、攻撃側が持つ撃ち合いのアドバンテージが大幅に増加することが考えられる。防衛側は、ロングレンジで戦う局面を少しでも減らすため、これまで以上に戦略的に拠点を改造して、不利な撃ち合いを避ける要塞を作ることが求められるだろう。防衛側が撃ち合いを指向するインセンティブが薄くなることで、メインガジェットを活用して戦うという「シージの原点」に回帰していく9年目になるのではないか。

シールドオペレーター、投てき物に関する新要素が攻撃の幅を広げる

ほかにも、今回の調整では攻撃側に恩恵の大きい調整が複数入っている。たとえば、先日来よりテストサーバーで試験的に導入が始まっていたシールドオペレーターの仕様変更が挙げられる。防弾の盾を構えてチームを先導するMONTAGNEなど一部のオペレーターは、今後、その堅牢さが大きく増すことになる。従来よりも左右の視野が広がる「フリールック」を得るとともに、バリケードの破壊、リロード、ガジェットの投てき時に盾から顔を晒さずに済むようになった。もともと尖った役割を期待されていたシールドオペレーターに、より明確な長所が付加されたことになる。

盾の陰で隙をさらさずリロードできるように


また、「Deadly Omen」からはフラググレネードなどの投てき物を構えると、その軌道が白くハイライトされるようになる。これまで、なんとなく手癖で投げていたガジェットの軌道について再現性が高くなることで、いわゆるセットプレーと呼ばれる連携テクニックの精度が向上するだろう。これは初心者向けのアシスト機能のようでありながら、実はチームプレーをより良質なものにする、幅広い層に向けた調整ではないかと個人的に感じている。

投てき物を構えると軌道がハイライトされる


作戦の多様性を高め、原点のようでまったく新しい『シージ』へ

ここまで述べてきたように、DEIMOS、倍率スコープ、シールド、投てき物への調整はいずれも連携の精度を重視し、作戦の多様性を高めるものである。DEIMOSのDEATHMARKの真価はチームメイトとのコミュニケーションによって発揮される。倍率スコープの攻防の均衡の変化は、防衛側にあらためてガジェットを使った防衛の重要性を意識させる。シールドの堅牢さ、投てき物の精度の向上は、チームで統一した動きをとることのメリットを攻撃側に提示する。

筆者個人の意見ではあるが、これは、私たち「シージ民」が『シージ』に魅せられたコンセプトの強化に他ならない。eスポーツ戦国時代の今、歴史を重ねる中で良くも悪くも変容していった『シージ』が再び当初のコンセプトに立ち返り、他のゲームとの差別化を図ろうとしているように私には見える。ただし、その「原点回帰」は、8年間のオペレーターやマップ等の進化、蓄積を踏まえ、従来と同じものには立ち返ることはないのではないか。9年目に突入する『シージ』の大胆な変革が、懐かしくも新しいゲーム体験を提供してくれることを願ってやまない。

DEIMOSの経歴。「レインボーの誕生と終わり」意味深である


以上、駆け足ではあるが、新シーズンである「Deadly Omen」の概要を紹介した。ここで紹介したもの以外にも、ゲームプレイの快適性向上のための仕様変更として、コスメティックの検索性を高めるUI変更、チーターや有害なプレイヤーに対するBANシステムの強化・改良、AI戦で選べるマップやオペレーターの拡充などが予定されている。ぜひ手に取って遊んでみてほしい。

『レインボーシックス シージ』は、PC/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売中。Xbox/PC Game Passにも対応している。YEAR9シーズン1「Deadly Omen」は世界標準時で2月26日にテストサーバー実装予定だ。

Vongole Domingo
Vongole Domingo

子供のころゲームは1日1時間だったアラサー。反動で今はRTSやFPSなど時間泥棒系のゲームに傾倒している

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