『風来のシレン6』先行プレイ感想。スリリングでありながらも“フェアさ”が漂う、頭脳で立ち向かうローグライク

スパイク・チュンソフトは、2024年1月25日に『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』をNintendo Switch向けに発売する。本稿では、ゲームの序盤あたりを2時間ほどプレイしてわかった内容をお届け。

スパイク・チュンソフトは、2024年1月25日に『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』をNintendo Switch向けに発売する。本作は、同社の人気ローグライクRPGシリーズ『風来のシレン』シリーズの最新作だ。間に移植作品などは挟みつつも、ニンテンドーDSで発売された『不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス』からおよそ14年ぶりとなる完全新作となる。

『風来のシレン』を含む『不思議のダンジョン』シリーズは“1000回遊べるRPG”を掲げる作品で、1980年に初版が公開されたPC向けターン制RPG『ローグ(Rogue)』のゲームプレイを色濃く引き継いでいる。ランダム生成のダンジョンや死ぬと持ち物やステータスが全ロストしてしまうなど『ローグ』の要素を取り入れた作品は現代において「ローグライク」や「ローグライト」として知られているが、『不思議のダンジョン』シリーズはこのジャンルにチャレンジした早期の例であり、日本市場に向けてこのジャンルを浸透させた立役者でもある。

シリーズの新たな展開が迫る中、メディア向けに試遊イベントが開催された。本稿では、ゲームの序盤あたりを2時間ほどプレイしてわかった、本作と『不思議のダンジョン』シリーズの魅力をお伝えする。


急かされない、「よくわからない」が少ない、フェアさの漂うローグライク

本作は、ローグライクRPGだ。メインのゲームプレイはとにかくダンジョンを探索するというシンプルなもので、HPや満腹度といったステータスを管理しながら敵との戦闘やさまざまなハプニングを乗り越え、さまざまな道具を手にしながら出口を目指して冒険する。今回の物語は、風来人である主人公・シレンと人の言葉をしゃべるイタチ・コッパの2人が、とある夢をきっかけにお宝が眠る「とぐろ島」に訪れるところから始まる。

元祖『ローグ』。画像はSteamで配信されている1985年版のもの


本作はターン制戦闘のRPGであることや、マス目(グリッド)状になったフィールド、毎回構造がランダムに変化するダンジョンや、死ぬと持ち物やレベルなどすべてをロストしてしまうパーマデスシステムなどの要素を取り入れている。元祖『ローグ』の直系といえる「ローグライク」なゲームデザインだ。ちなみに「ローグライト」と呼ばれる作品は一般的に、アクションだったりデッキ構築だったりと『ローグ』とはジャンルが異なっていたり、周回をまたぐ引き継ぎ要素が重いなど、一部要素のみをゆるく取り入れていたりする作品を指していて(例:『Vampire Survivors』『Dead Cells』『Slay the Spire』)、狭義には「ローグライク」とは区別される。その定義には諸論あるものの、本稿ではシレンを「ローグライク」と定義させていただく。

今回の試遊を通して改めて『シレン』および『不思議のダンジョン』をプレイして思ったのは、スリリングな冒険でありながら、とにかくゲーム全体に「フェア(公平)」な感じが漂っているということだ。本記事では、それぞれの「ローグライク」要素を紐解きつつ、「フェア」とはどういうことなのかを解説していこう。


本作のゲームプレイにおいて、フェアであると感じる要素のひとつは、ゲームの進行によってできることが大きく増えないことだ。レベルアップで成長するのは主に攻撃力やHPといったステータスのみとなっており、スキルツリーで能力を増やしたり、新たなアビリティを獲得したりといったことは本作には存在しない。

言い換えれば、ゲームを始めて最初にダンジョンに潜った時点ですべてのことができる。どんな状況でも、プレイヤーの知識と経験、そしてダンジョンで入手した道具・装備次第で覆しうるのだ。開発者によれば、ゲームを始めて最初にダンジョンに潜った段階で、一気にクリアまでいくことも理論上可能だという。


これは、本作の死亡システムが完全にパーマデスであることにも結びつく。ダンジョンで倒れてしまえば、道具、レベル、お金(作中ではギタンと呼ばれる)など正真正銘すべてを失い、ゲームを始めた時と同じまっさらな状態にリセットされる。そのため、毎回原則的に同じ状態で始めることになる。

パーマデスはたしかに喪失感があり、特に序盤は打ちひしがれるような気分になる。しかし何度も挑めば、これまでのプレイで得た敵キャラの性質や道具の使い方といった知識・経験を活かし、先ほどよりもうまく攻略できるのだ。道具は豊富に用意されているので、自然と先ほどとはまったく異なる武器や装備を入手して戦うことになるだろう。


加えて本作では、ダンジョンで武器になる“知識”を蓄えるための機能も用意されている。ひとつは「手帳」というもので、モンスターやダンジョンの情報、道具の概要や買値・売値などといったデータをチェックすることができる。開発者いわく、これまで攻略Wikiを見ないとわからなかったような情報が詰まっているとのことだ。いつでもメニューからすぐにアクセスできるので、敵の性質や道具の取捨選択などを確認する際に活用したい。

知識を蓄えるためのもうひとつの機能は「もののけ道場」で、これまで出会ったモンスターや入手したことのある道具、かかったことのある罠などを自由に配置して練習できる。使わずに終わった道具の効果を試したり、対処に苦労したモンスターの倒し方をマスターしたりといった練習が行えるので、難関ダンジョンを突破するのに役立ちそうだ。


筆者が本作をフェアなローグライクであると感じた理由のふたつめは、「考える」ことが主体となっている点だ。本作のダンジョン探索はすべてがターン制になっており、自分が一回行動すれば敵も一回行動する。移動や攻撃、道具の使用などはすべて一回の行動としてカウントされるため、一手一手を慎重に考えなければならない。

これも裏を返せば、「考える」ことで多くの問題に対処できるということだ。プレイヤーは今画面で起きていることを認識し、どの敵を最初に倒すか、どの道具を使うかなどをじっくり考えて敵や罠に対処していく。その過程においてなにかに急かされることはなく、得た知識と経験が武器になるのである。


筆者はローグライクやローグライト作品が好きだが、終盤でこれまでよりもシビアな動作や道中で学んでいないアクションを求められ、あっさりと死んでしまったというほろ苦い経験があり、ゲームに対して「理不尽である」と怒ったこともある。そういった点を考えると、本作は理不尽さへの課題解決に取り組んでいるように感じた。モンスターが大量発生して深手を負ったり、食料が腐ってしまったりというハプニングはあれど、じっくり考えて慎重に行動すれば対処しえる。

大量のモンスターが出てきたら、囲まれない通路に逃げて一体一体対処すればいいし、HPが減ってきたら歩いて自動回復すれば良い。食料が腐ったり武器装備が錆びたりしないためには、積極的に道具を活用して事前に対策しておけばよい。余裕が出てきたら、満腹度を150にすることでさまざまな強化が得られる「ドスコイ状態」になってみたり、謎めいた道具を試しに使ってみたりと冒険してみるのも良い(結果、良くないことが起きるかもしれないが……)。こういった「考える」ことで多くを対処できる点に、筆者はゲームとしてのフェアさを感じる。

なお筆者の先行プレイでは遭遇しなかったが、「デッ怪」という新要素が搭載されるようだ。これは巨大化した強力なモンスターがダンジョンを徘徊するというもので、倒して対処するというよりは、どのように迂回して戦闘を避けるかという遊びとして導入されているという。これも、「考える」という魅力の一環と言えるだろう。

 


「原点回帰」を掲げた本作は、夜や技システムなどは廃止し、初代『シレン』に近いようなシンプルさになっている。入念な事前準備なども必要なく、とにかく手軽にダンジョンに挑むのが楽しい。ランダムでスリリングな旅路でありながらも、根底のシステムは「フェアさ」に満ちている。そんな本作でまず必要なのは、強い武器や有利なスキルのアンロックではなく、プレイヤーの知識と経験、そして考える力である。

『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』は、Nintendo Switch向けに2024年1月25日発売予定。ローグライク・ローグライトがより浸透した現代だからこそ、原初の『ローグ』体験を色濃く受け継ぐ本作は、大きな存在感を見せそうだ。

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Mio Tsukuru
Mio Tsukuru

ゲームの歴史が好きなフリーライター。FPSやADVを主食とし、新旧コンソールゲームからPCゲームまで気になるゲームを幅広く遊ぶ。Nintendo Switchでレトロゲームを買い漁るのが趣味。

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