『Escape from Tarkov: Arena』先行プレイ感想。『タルコフ』を気軽にアレンジしたチーム対戦FPSの感触はいかに

 

今月9月21日から9月24日まで開催されたゲームイベント・東京ゲームショウ 2023にて、BattleState Gamesの新作FPS『Escape from Tarkov: Arena』が出展された。本稿では、同作の試遊感想をお届けする。


本題に入る前に、スピンオフ元である本家『Escape from Tarkov(以下、EFT)』について、基本的な情報をおさらいしておこう。『EFT』は近年流行しているPvPvEジャンルの火付け役となったであろう、マルチプレイ向けFPSだ。基本ルールとしては箱庭型のマップで建物などを探索し、武器やアイテムなどを集めて脱出エリアに帰還することが目的となる。

FPSとしては“リアル系”な作りになっており、銃弾の挙動や反動を制御する必要がある。また、撃ち合いに勝っても被弾すると怪我を負い、走りなどに制限がかかったり、最悪の場合だと死に至ることもある。最終的な目標は指定された時間にマップ特定地点に向かって脱出することだが、道中で死んでしまうとアイテムをすべてロストしてしまう。

試合が終わっても駆け引きが続くのが本作の肝となっており、プレイヤーアカウントには試合などで入手した武器やアイテムが溜まっていく。それらを装備して試合に出撃することになるわけだが、当然レアな武器を持っていっても死亡すれば失ってしまう。かといって価値の低い粗雑な武器で挑めば、良い装備のプレイヤーに殺されてしまうリスクもある。

このように、『EFT』本編はかなりシビアかつハードコアな仕様となっており、息が詰まるような緊張感が楽しめる。そういった点は本作の醍醐味ではあるのだが、一方でその重圧に耐えられずリタイアしてしまう人もみられる。そのため、『EFT』は好きだがプレイするには気が重い、あるいは『EFT』の世界観で気軽に本作の撃ち合いを楽しみたい。そんな風に思ったことがある人もいるだろう。『Escape from Tarkov: Arena』はそんなプレイヤーが待ち望んでいたゲームになるかもしれない。


試合展開はかなりスピーディ。リアルさはそのままに気軽に遊べる

今回の試遊では、リスポーンなしのチームデスマッチモードである「TEAMFIGHT」をプレイした。このルールでは、2チーム5人ずつに分かれてお互い全滅するまで戦う。最初は自由に戦うことができるが、試合時間が0になると特定のエリアを確保しなければいけないルールに変化し、必ず接敵するような仕組みになっている。


本作のユニークなところは、試合開始前に選択できるキャラクターが「購入式」であるところだ。キャラはそれぞれ武器やアーマーなどがプリセットされており、『EFT』と同様の通貨「ルーブル」で購入することになる。役割はアサルト、近接、スカウト、マークスマンの4種類が存在するが、金額が高いほうが強い、低いほうが弱いという単純なパワーバランスになっている。そのため、ヒーローシューターのように明確な役割決めが必要というよりは、単純に武器種と強さで使うキャラを決めるといったシンプルな仕組みになっている。

 


今回プレイしたAir Pitというマップは、空港で戦うというシチュエーションのもと構築されている。中央には3階層の巨大な飛行機が設置されており、そこが駆け引きの中心となる。『EFT』では室内での近距離戦や屋外での遠距離戦が起きがちだが、このマップでは近〜中距離かつ高低差が生じやすい立体的な戦闘が多め。飛行機の外にも高所を取れる地形があるので、遠距離ライフルを持ったプレイヤーでも活躍できる。


ゲームプレイとしては、かなりスピーディで気軽な試合展開が楽しめると感じた。『EFT』本編と同様のバランスである以上被弾してから死ぬまでが早いので、一度接敵してしまえば戦闘が長引くことは少ない。リスポーンがなく1ラウンドの1分半ほどなので、少なくとも1回数十分かかる『EFT』本編よりはスピーディな試合展開でとなることは間違いないだろう。本編では接敵せずに脱出できてちょっと拍子抜け……なんてこともあるが、間違いなく銃撃戦が楽しめるというのも良い。

今回のマップが狭めかつ戦闘が多く起こるポイントが限定されていたということもありそうだが、筆者のチームにはかなり強いプレイヤーがおり、まさかのストレート勝ちに。エリア確保ルールまでは一度もたどり着くことなく勝利を収めた。時間にして10分ほどとあっという間の試遊で、まさに「気軽に遊べる」という言葉がぴったりだと感じた。


一方で、気軽でありながらリアルさも担保されている。高倍率スコープはしっかり立ち止まって狙わないと弾を当てづらいし、リアルタイム残弾表示がないため頭の中で残弾数をカウントしておく必要がある。また、チームメンバーはHUD上で識別できず腕章の色を見るしかないので、フレンドリーファイア事故も起きうるので、緊張感は高い。

本家『EFT』ほどのリアル志向で、かつ人気の対戦FPSは近年珍しい。そのため、『EFT』のリアルさを保ったまま気軽に遊べるシューターはなかなか魅力的だろう。一方で、『EFT』の魅力でもあり特徴でもある「被弾後の怪我・体調管理要素」は、試合展開がスピーディかつ戦闘が多く発生しやすいことによって、オミットされているように感じた。あったとしても、少なくとも、プレイしていて気付くほど強烈なものではなかったことはお伝えしたい。

試遊ではまだまだ本作の一部しか見えてこなかったが、製品版にはFFA形式(チーム戦ではなく全員が敵)のデスマッチやPvEルールも存在するようだ。果たして、“『EFT』のリアルさが好きだけど、難しくてなかなか遊べない”というユーザーに響くものに仕上がるのか、期待しておきたい。


なお、TGSでのBattlestate Gamesのブースは『EFT』の世界観をイメージした作りになっていた。一部スタッフもまるで『EFT』の世界から飛び出してきたかのようなハイクオリティなコスプレに身を包み来場者と積極的に触れ合っていて、ファンにはたまらないブースだった。

『Escape from Tarkov: Arena』は、PC(公式サイト)向けに発売予定。本作のみでも購入できるほか、本編の「Edge of Darkness」エディションを購入しているユーザーは無料でアクセス可能だ。弊誌では後日別途Battlestate Gamesへのインタビュー記事を掲載予定なので、そちらもぜひチェックいただきたい。