コミュニケーションミドルウェア「CRI TeleXus」の空間音響デモがお披露目。”聞き分けられるボイスチャット”の実力を体験

音声・映像関連の技術製品を中心に展開する企業CRI・ミドルウェアコミュニケーションミドルウェア「CRI TeleXus」の正式版を提供中だ。TeleXusの空間オーディオは、どのようにコミュニケーションを促進するのか。実際に2種のデモを体験した。

音声・映像関連の技術製品を中心に展開する企業CRI・ミドルウェア(以下、CRI)は、コミュニケーションミドルウェア「CRI TeleXus(以下、TeleXus)」の正式版を提供中だ。Telexusは高機能ボイスチャットをはじめとする様々な機能を搭載し、オンラインでのコミュニケーションにおける「そこにいるような実在感」が体感できるという。ミドルウェアとは一般に、OSやアプリケーションに組み込んで特定の機能を提供するソフトウェアを指す。ユーザーから見えづらいところで活躍する、開発者にとっては縁の下の力持ちのような存在だ。


TeleXusのウリの一つが、空間オーディオに対応したボイスチャットだ。HRTF(頭部伝達関数)を応用したシステムを導入し、一般的なステレオヘッドホンでも自身の周りを囲むように話しかけられている感覚が味わえるという。ボイスチャット上で複数人が同時に発言していても、それぞれの声が分離されクリアに聞き取れるとのこと。こうしたボイスチャットは、ゲームやメタバースなどさまざまな場面での活用を見込んでいるという。9月15〜18日の東京ゲームショウ2022では、このTeleXusを実際に体験できるデモ2種が初めて展示された。リアルタイムのボイスチャットで空間オーディオに対応するツールは珍しい。TeleXusの空間オーディオは、どのようにコミュニケーションを促進するのか。実際に2種のデモを体験した。


一つは、空間オーディオのボイスチャットデモだ。事前に録音された複数人の会話を、スマートフォンとヘッドホンという環境で視聴する。筆者が実際にデモを視聴したところ、騒がしいイベント会場というシビアな環境ながら、確かに発言者の位置がはっきりと感じられた。ステレオ音響で左右に振り分けるのとは異なり、それぞれの発言が別の位置から、分離して聞こえるかたちだ。この音声が分離しているという点が、内容の聞き取りやすさにも貢献している。また発話者の位置が固定されていることで、人数の規模感や「会話に参加している」という臨場感も感じられた。

注目すべきは、こうしたTeleXusの空間オーディオが一般的な視聴環境に対応していることだろう。デモ機は各種スマートフォンとヘッドホンであり、視聴に特殊な専用機器や端末を必要としないのだ。空間オーディオや立体音響、バーチャルサラウンドをうたう規格は、特定の製品にのみ対応しているケースも多い。TeleXusはミドルウェアであり、アプリに組み込めば身近なステレオヘッドホンでもこうした空間オーディオの恩恵が受けられる。このように環境を選ばない点は、ユーザーにとってメリットになるだろう。


もう一つのデモは、ゲーム環境でのボイスチャットをイメージした体験型デモだ。こちらはマイクとスピーカーを通じて、CRI・ミドルウェアの広報兼マスコットキャラクター「りんご」のアバターと実際に会話ができるというもの。通話相手は遠隔地から、アバター越しに会場にいる筆者と通話するかたちだ。

こちらはCRIのミドルウェア群との連携をしたデモになっている。サウンドミドルウェア「CRI ADX」と連携し、高度な音声制御を可能にしているとのこと。デモにはプリセットが用意されており、映像と連携して音声を変化させるといった使われ方をしていた。映像を洞窟の中に切り替えると、音声にも洞窟の中にいるような効果がかかるといった具合だ。さらにこのデモには、リップシンクミドルウェア「CRI LipSync」が使われている。通話相手の音声を解析し、リアルタイムにアバターの口を自然に動かしていた。音響やリップシンクといった複数の機能を組み合わせて、没入感の高いボイスチャットを実現しようという試みなのだ。オンラインゲームのボイスチャットにおいて、こうしたリッチな機能が実現すれば、従来とは異なる体験になるだろう。


TeleXusは今後も、さまざまな機能の追加が予定されている。言語が異なる話者の間に入り通訳サポートをおこなう「AI翻訳」や、オンラインゲーム内での動画のストリーミング再生機能を提供するという。こちらはユーザー同士でコミュニケーションを取りながら、ストリーミング配信などの動画の視聴が可能になる機能とのこと。ゲームを含めたさまざまな場面で、新しいコミュニケーション体験の提供に取り組んでゆくようだ。

ちなみにTeleXusは、10月26日(水)~10月28日(金)で開催されるメタバース総合展では、TGSのデモから改善された状態で出展されるという。具体的には、リアルタイムボイスチャットデモが、会話人数が1対1から1(会場)対3(リモート)での会話に進化。さらに、リモート3人が話をする際に移動をすると、その動いた方向から声が聞こえるようになるという。同イベントに行く予定の方はCRI・ミドルウェアのブースに寄っておくといいだろう。

Aya Furukawa
Aya Furukawa

主にニュースを担当。ビジュアルや世界観にこだわりのあるゲームが好きです。

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