『ファイナルファンタジーⅦ リメイク』体験レポート。蘇る名作はコマンド式RPGをもリメイクする【TGS2019】

『ファイナルファンタジーⅦ リメイク』TGS2019体験レポート。『ファイナルファンタジーVII リメイク』は、ただ名作を蘇らせるだけでなく、コマンド式RPGをもリメイクする新しい『FFVII』であった。

東京ゲームショウ2019が9月12日~9月15日にかけて開催中だ。大手企業から個人という規模まで、ゲーム業界に携わる世界各国の人々が「我こそは」と高らかに名乗りを上げている。さまざまな分野の関係各社が軒を連ねる幕張メッセ、その一角にあるスクウェア・エニックスブースでは、2020年3月3日に発売予定となっている『ファイナルファンタジーVII リメイク』の試遊体験を実施中だ。早速試遊してきたので、そのレポートをお送りしよう。

本作品は表題そのままに、ファイナルファンタジーシリーズの中でも指折りの人気を誇る『ファイナルファンタジーVII』をリメイクしたもの。対応プラットフォームはPlayStation4となっている。

端正なビジュアルからは想像できないほど人間味あふれるキャラクター達によって描かれる、星と記憶にまつわる物語や、テクノロジーとファンタズムが融和する独特の世界観。そして当時衝撃を与えたフルポリゴンによる奥行きを持った映像描写。1997年に発売された『ファイナルファンタジーVII』というゲームは正に時代の象徴となったゲームソフトであった。

そして2019年現在。約20年以上の時を越えて今再び産まれ落ちようとする前時代の寵児は、「コマンド式RPGのリメイク」という御業でもって、またしても世に多大なる影響を及ぼす可能性を秘めていた。ちなみに『ファイナルファンタジーVIIリメイク』は複数作品にて完結する形式を採用しており、その第一弾となる本作は、ミッドガルという都市を脱出する時点までの物語が語られる。

今回筆者が試遊できたのは序盤も序盤。壱番魔晄炉と呼ばれるエネルギー施設の爆破を試みるクラウド一行を撃退するため襲来した、「ガードスコーピオン」との戦闘である。原作では初めてのボス戦となる場面だ。

まずプレイを開始して目に入ってきたのは、その美しいビジュアルである。カットシーンに負けずとも劣らない美しさを保つキャラクターのモデリングはもちろんのこと、鈍色をした工場設備が魔晄独特の淡い緑に照らされる姿は、思わず唾を飲む光景であった。

そうしてうっとりしていると、バレットの喧しい声が私を急かし、クラウドがクールに相槌を入れる。『ファイナルファンタジーXV』での旅路を思い出させる軽妙かつ自然なやり取りだ。こうした物語というレールを外れた場所で、キャラクター達の内面が掘り下げられていくのは、ファンの1人として嬉しい限りである。

チュートリアル代わりの雑魚たちを退け、ことあるごとに感動しながら辿り着いた壱番魔晄炉。問答の末になんとも彼らしい表情をしながらクラウドが爆弾を取り付けるカットシーンの後に「ガードスコーピオン」が襲来。本番が始まった。

 

コマンド式RPGをリメイクする戦闘システム

本作の戦闘は□ボタンのクリックで発生する「たたかう」のリアルタイムアクションと、コマンドメニューから選択できる大技「アビリティ」や「魔法」を使って戦うコマンド式バトルを組み合わせたシステムとなっている。敵にダメージを与えるにはキャラクターを「動かし」、効果範囲に敵を入れ、技を当てなくてはいけない。ガードや範囲攻撃を避ける回避というコマンドもある。ここまで聞くとアクションゲームのように聞こえてくるが、実のところその性質は原作のコマンド式戦闘に近い。

それはなぜかと言えば、キャラクターを「動かす」ことに柱があるのではなく、キャラクターの得意分野を活かす、すなわちクラウドであれば一発の重い近距離攻撃を、バレットであれば重火器での広範囲な遠距離攻撃を、状況に応じて「選択」し続けることに戦闘の柱があるからである。本作の戦闘において重要なことは、「たたかう」のアクションそのものではない。「たたかう」で何ができるかということなのだ。

その象徴が先述した「アビリティ」と「魔法」の存在、そしてリアルタイムに行えるキャラクター切り替えの機能である。今回試遊した限り、本作の戦闘ではザコならまだしも大型の敵相手には単純な「たたかう」では大したダメージを稼ぐことはできず、必然的にアビリティや魔法を活用することになるが、キャラクターごとに使用できる内容は全く違う。

特に使用できる魔法の違いは大きく、試遊の時点で、回復魔法ケアルを使用できるのはクラウドのみ、ボスの弱点をつけるサンダーを使えるのはバレットのみとなっていた。ではバレットを操作し戦い続ければ楽勝ではないかと問われればそうではない。

本作には独自のシステムとして「ATBゲージ」と呼ばれる、アビリティや魔法、アイテムを使用するにあたって一定量消費されるゲージが2本存在しており、(「たたかう」の継続使用で回復する)連続して同じ技を出し続けることができないようになっている。また、敵を攻撃し続けるとゲージが溜まり、MAXまで蓄積できればバースト状態という、一時的に行動不能かつ大幅に防御力が低下する状態にすることができる。バースト状態に持ち込むにはゲージをより多く溜める性質を持つアビリティを活用することが重要である(試遊デモだと、バレットよりクラウドの方が攻撃力は高いので、バーストに持っていくにはクラウドのほうが優れている)。

アビリティや魔法は上記の通りコマンドメニューから使用できるが、メニューを開いている間は「ウェイトモード」と言い、自動的に全ての動きがスローモーションになる。焦ってコマンドを間違うアクシデントを減らす良い工夫である。ウェイトモードが煩わしければ、コマンドを最大4つまでショートカットに登録することで、即時発動を可能にすることもできる(試遊版では予め全て設定されていた)。

さらに傾向として、敵はプレイヤー操作キャラを重点的に狙うよう設定されているよう感じられた。数の有利が覆るということが何を意味するかは言わずとも分かるだろう。試遊では戦闘中拘束されたキャラクターをもう片方のキャラクターで開放するというギミックや、サンダーを打つと一時的にバーストゲージが溜めやすくなるギミックも存在した。

つまるところ敵の性質を理解し、常にキャラクターの入れ替え=コマンドの選択を意識しつつ立ち回ることが本作の戦闘における肝なのだ。キャラ変更によりリアルタイムで目まぐるしく戦況が変わるそのあり方は、正にコマンド式RPGのリメイクといって差し支えない内容となっていた。今回戦闘で使用できたキャラクターはクラウドとバレットのみであったが、製品版では最大3人パーティでの戦闘が可能だという。ティファやエアリスというカードが新たに手札に加わった後のバトルの戦略性と楽しさは、現時点でも想像に難くない。

 

コマンド式RPGではあり得なかった没入感

試遊体験の敵となる「ガードスコーピオン」は、HPを減らすことによって通常形態からテイルレーザー形態、そして自己修復形態への変化という、原作さながらのフェーズ変更を見せる。そのたびに大きく動き回り、プレイヤーはいちいちガードスコーピオンを追いかけなければならない。面倒くさく思えるかもしれないが、上記の戦闘システムと合わせて、これがまた実に興味深いギミックなのだ。

コマンド式RPGは時に、「キャラクターではなく数字を戦わせている」という意見を受けることがある。敵を倒すことは予め決められたHPという数字を0にすることであり、ステータスという数値の調整でもって戦闘を効率化させる。そして、プレイヤーはあくまで「指揮をするだけ」という戦場を俯瞰する第三者の立場に落ち着く。コマンド式RPGにおいて、キャラクターになりきって戦うというロールプレイは、大抵の場合、自発的に意識しなければなし得ない事柄なのだ。

本作もまた、コマンド式RPGの潮流にある。しかし独自に備わる簡易なアクション要素が、プレイヤーを天上から舞台へと引きずり落とす。ただスティックを前に倒すだけで、□をワンクリックするだけで、クラウドとして、バレットとして、戦っている気分に浸れるのだ。

私はこの体験を経験するまで、『ファイナルファンタジーⅦ』にアクション要素を組み入れた理由が分からなかった。だが今では理解できる。

画面の中に仕込まれた数々の工夫にひたすら感心しながら私の試遊体験はあっというまに終了した。2015年6月に発表されはや4年が経ち、そのクオリティにさまざまな憶測が飛び交っていた『ファイナルファンタジーⅦ リメイク』ではあったが、バトル面に関してはどうやら要らぬ心配だったようだ。となると気になるのは手が入っているというシナリオだが、こればかりは購入して自らの目で確かめる他は無い。発売まで約半年。期待に胸を膨らませるばかりである。

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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