“間接的に”少女と相対する『ノナプルナイン』TGS2017プレイレポ。同じ階層をループするカオスなポイント&クリックADV

国内のインディーのアドベンチャーゲームといえばビジュアルノベルが主流だったが、近年はポイント&クリックアドベンチャーのスタイルを採用するゲームも増えてきている。そのなかでも『ノナプルナイン』は注目株のひとつだ。

国内のインディーのアドベンチャーゲームといえばビジュアルノベルが主流だったが、近年はポイント&クリックアドベンチャーのスタイルを採用するゲームも増えてきている。そのなかでも『ノナプルナイン』は注目株のひとつだ。今回は「東京ゲームショウ2017」インディーブースコーナーに出展されている『ノナプルナイン』のプレイレポートをお届けする。

TGSで展示されている『ノナプルナイン』のプレイ時間は5分ほどで終了する。内容は研究室のような場所で包帯を巻かれた半裸の女の子が目覚めるところから始まる。どうやらこの女の子を外部からカメラで見ている存在がいるようだ。さらに画面外から声からして女性らしき人物の手が現れ、画面を覆うような動作をしたあと手は消えていく。少なくともこのデモは、この監視されている半裸の女の子と、それをカメラ越しに見守る何者か、そしてカメラの横にいて姿が見えないもう1人の女性を中心に進んでいく。その後、横スクロールのポイント&クリックアドベンチャーパートとなり、女の子を操作して部屋に置かれている雑誌とディスプレイを調べると劇中劇がはじまる。このマンガと映像メディアを催した劇中劇は唐突すぎて脈絡は感じられず、やや呆気にとられるだろう。最後に扉を出るとプロモーションビデオが流れて、展示されているバージョンのデモは終了となる。

これだけではゲーム内容や世界観がわかりづらいが、開発者の方にお話を聞くと、今回展示されたデモは、ネタバレにならない程度に本編途中のイベントを2つ抜粋し冒頭で披露するという内容で、あくまでゲームのイメージを掴んでもらうために用意したものとのこと。さらに詳しく聞くと、本作のプレイヤーキャラクターはモニタールームにいる「観測者」と呼ばれる存在で、この女の子が見えるゲーム画面はモニターごしに見たプレイヤーキャラクターの一人称視点なのだという。包帯の女の子はモニターの向こう側にいる存在であり、モニターを通して間接的に女の子を指示して動かしていくメタフィクショナルな構造のゲームなのである。

この着想に似たアドベンチャーゲームを挙げるならば『オペレーターズサイド』や『EXperience112』が挙げられるだろう。これらもモニターを通じてキャラクターを間接的に操作していくゲームだ。だが、『ノナプルナイン』はさらにもうひとつの層が加わる。モニタールームにはプレイヤーキャラクター以外にも「ガイド」と呼ばれるキャラクターが同じ空間に存在している。このゲームのプレイヤーキャラクターは『ドラゴンクエスト』のようにしゃべらないスタイルを取っているので、このゲームの対話はガイドを通して包帯の女の子とする。モニターを通しての間接的な視点に加え、さらに対話もガイド・キャラクターを通して間接的というわけである。

ストーリーそのものは、記憶の失われた少女に指示して、その少女の記憶、ここで過去に何かあったかを解き明かすという内容になっている。また本作最大の謎として、“なぜか同じ階層をずっとループする”というものがあり、こちらの解明も物語の鍵を握ることになりそうだ。バイオレンス要素もあり、その一旦はプロモーションビデオで感じられる。だが会話はかなりコミカルで、その差異が面白い。またプレイアブル展示されているバージョンで注目したいのが、設置されているマンガと映像メディアの劇中劇である。パロディやコラージュに満ちておりケレン味たっぷりだ。

マンガ雑誌を催したパロディ

開発者によれば、もともとこの作品は18禁ゲームであり3分の1ほど完成していたが、18禁部分をばっさりカットして一般ゲームに方針転換をしたとのこと。その前の18禁バージョンの体験版はインターネットで公開されおり、今回のTGS展示の一般バージョンはグラフィックが刷新されている。完成版の全体的なボリュームは15時間から20時間ほどになり、来年のリリースを目指している。あらゆる手段で多層性のあるフィクションを動因し、コミカルさとエロさとバイオレンスとパロディが展開する『ノナプルナイン』は、サービス精神が過剰でどのように完成するのか興味の尽きないインディーゲームといえそうだ。

Koji Fukuyama
Koji Fukuyama

小学2年生のときに、『ドラゴンクエスト5』に出会い、「ゲームは、ゲーム独自の手法を使って人間のドラマや物語を伝えることができる」ということに衝撃を受けました。そこから一貫して、ストーリーメディアとしてのゲームに注目しています。

同時に中学生から映画を浴びるように見始め、西部劇やホラー、SF映画など、アメリカの古典的なジャンル映画をとくに偏愛しています。

オールタイムベストゲームは『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』。このゲームで感じた面白さや感動を再び体験するために、ずっとゲームを続けています。

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