電話を掛け直すたび、奇妙な夢の世界へたどり着く。ランダム生成を活用した国産ホラーアドベンチャー『Strange Telephone』

2015年に登場した『Strange Telephone』は、日本人の個人開発者「yuta」氏によって開発が進められているタイトルだ。BitSummitなどのイベントにも出展されてきた同作は、その後の開発と共に大きく姿を変え、現在は奇妙な世界観とホラーテイストを押し出したアドベンチャーゲームとなっている。

2015年に登場した『Strange Telephone』は、日本人の個人開発者「yuta」氏によって開発が進められているタイトルだ。BitSummitなどのイベントにも出展されてきた同作は、その後の開発と共に大きく姿を変え、現在は奇妙な世界観とホラーテイストを押し出したアドベンチャーゲームとなっている。今年10月にはTwitterモーメント機能を利用したまとめが話題となり、どこかで目にした人もいるのではないだろうか。

『Strange Telephone』の主人公は「ジル」と呼ばれる黒髪・黒服の少女だ。ゲームを起動して「Wake Up(起きる)」ボタンを押すと、ジルは空飛ぶ電話「グラハム」と共に奇妙な扉の前にたたずんでいる。一体どのような世界観なのか検討もつかないが、ジルの目的はこの扉の鍵を見つけ開くことにあるらしい。「デジゲー博 2016」に参加していたyuta氏は、本作が夢のような世界を舞台にしていると説明してくれた。

プレイヤーは鍵を見つける目的に向かい、画面上の気になったオブジェクトをクリックしてジルに調べさせたり、アイテムを使ったりして謎を解いていく。ゲームシステムはオーソドックスなポイント&クリック型のアドベンチャーゲームなのだが、特徴的なのが「電話を掛けて別の世界へ飛ぶ」機能だ。ジルは空飛ぶ電話グラハムを通じて電話をかけることで、番号に応じてランダム生成されるいくつもの世界へと移動することができる。

家の床が草原になっているちょっとおかしい世界もあれば、「かぐや姫伝説」のような純和風の世界へと飛ばされることもある。
家の床が草原になっているちょっとおかしい世界もあれば、「かぐや姫伝説」のような純和風の世界へと飛ばされることもある。

プレイヤーはそれぞれの世界にあるヒントを集め、次にかけるべき電話番号を解明しなければならない。あるいは行き詰まってしまたら、適当な番号に掛けてもいい。yuta氏によれば、電話番号は6桁のため可能性は限りなく低いが、一発で正解の世界へと導かれてしまうこともあるという。

なおゲーム中では電話を掛けられる回数に制限があり、ジルが何度も生成された世界を行き来しすぎると、世界全体が“壊れ始める”。可愛らしい2Dピクセルアートが、バグでへしゃげたようになってしまい、最終的にはゲームオーバーとなるのだ。本作ではゲームオーバーになると一からやり直しとなるが、プレイヤーは電話番号を現実の世界でメモとして残しておくことで、ゲームオーバー前の場面まで簡単に進めることができる。まるで『ドラゴンクエスト』のパスワードのような感覚だ。

バグっていく世界 image by Magniflop

デジゲー博 2016にて展示されていたデモは、操作感やビジュアルをチェックするために作らえれたもので、残念ながら肝となる「ランダム生成される無数の世界」を深く体験することはできなかった。ただ、無数の電話番号から無数のワールドを探す体験は、たとえば答えに近いであろう番号を適当に入れてみたり、あるいは適当に番号を打ってどんな世界が出るか調べてみるなど、今までにない「探す楽しさ」を生み出しそうだ。またマルチエンディングということで、何度かリプレイできるようなゲームデザインになっていることが予想される。

『Strange Telephone』は2016年に発売予定とのこと。2015年内の発売から延期された本作だが、年内にはグラハムを通じて電話が掛けられるようになっていることを願いたい。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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