『ゼルダの伝説 BotW』のゲルドの街がお気に入り。『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』から感じられる意欲。今週のゲーミング
Now Gamingは毎週日曜日、各ライターがその週にプレイしたゲームについて、ゆるく書きちらします。78回目です。
レトロゲームの再紹介はこうあるべき、という一例
今週は『Wonder Boy: The Dragon’s Trap』を。1989年発売の『モンスターワールドII ドラゴンの罠』のリメイクです。オリジナル版に特に思い入れがあったわけではないものの、何本か記事を書いている内に興味がムクムクと。リメイクというだけあってグラフィックは一新されていますが、ゲームプレイ自体はオリジナルと同じ。ですが、ここまで見た目が変わると別のゲームをプレイしているようで不思議な気分です。
本作の特徴はオリジナルの8bitグラフィックでもプレイできること。ゲーム中に1ボタンで即座に切り替わるので、あちこちで双方を見比べるのが楽しい。同時にリメイクの出来の素晴らしさも実感します。もともとのドット絵をどう解釈するかでアーティストのセンスが問われますが、程よく力の抜けた本作の画風はとても魅力的です。こういうリメイクなら、どの世代でも楽しめそう。ぜひシリーズ化してほしいな。
by Taijiro Yamanaka
フィンチ家という奇妙な傑作
『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』について語らずにはいられません。ナラティブ・アドベンチャー系のゲームは「ウォーキング・シミュレーター」と揶揄されるだけあってゲームプレイが単調になりがちです。たとえ物語に飽きなくても、ゲームプレイとしては途中から「物語の続きを見たいから」という理由だけで進めるようになってきます。そこをどう工夫するかが開発陣の腕の見せ所だと思っていて、本作にはそうしたジャンル特有の退屈さを回避し続ける上手さがあります。物語そのものというより、物語り方、見せ方に感心してしまったのです。
それは複数の視点から語られるフィンチ家の謎であったり、モノローグ文そのものに見惚れさせるローカライズ泣かせの演出であったり。さらには一風変わったフィルターを通すことで、操作するだけで嬉しくなってくるような追体験シーンを用意したりと、とにかく多様な表現方法を用いる本作からは、後続作品としてジャンルを進化させてやろう、最後の最後まで「インタラクティブ」であることにこだわり抜いて、プレイヤーの興味を引き続けてやろうという意欲を感じました。先人のフォーミュラにスパイスを加えるだけでは達成し得ない偉業だと思うのです。
つまるところ筆者が本作に意表を突かれたのは、心のどこかで本ジャンルに対するマンネリ感を抱いていて、本作からも同様の体験を期待していたからでしょう。ナラティブ・アドベンチャーにはまだ開拓の余地がある。そんな可能性を見せてくれたことを、非常に嬉しく思うのです。
by Ryuki Ishii
生ける街
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以下、ゼルダの伝説 BotW)』の発売から2か月近く経つので、具体的な街などを紹介させていただきます。まだ探索されてない方はネタバレ注意です。
『ゼルダの伝説 BotW』にはさまざまな街が存在しています。それぞれの街に文化があり、生命がこめられているのですが「ゲルドの街」だけ異常に作り込まれている気がします。この街においては、特に生活の息吹を感じられます。街の中央にはにぎやかな露店があり、少し外れると酒場や宿屋などサービス施設があり、さらに外れると特殊な建物や訳ありの人々が住んでいる。いわゆるゲーム的な配置の街も多い中、かなり現実世界に近い街になっている印象です。
いろいろなところを見るに、ゲルドの街は国内外でかなりの人気みたいですね。大金をはたいて買ったマイホームもありますが、夜のゲルドの街につい帰ってしまいます。街の隅っこにある酒場が特にお気に入りです。
by Minoru Umise
評判ほど奇妙ではない、むしろ洗練された九龍城
家人が実家から持って帰ってきた『Kowloon’s Gate』をプレイしています。これは1997年発売のPS1タイトルで、完全一人称視点アドヴェンチャー+風水で戦うRPG、みたいなゲームです。よくわかんないっすよね。舞台設定はどこなのかよくわかりませんが、おそらく香港。プレイヤーは「香港最高風水会議」からの特命を受けた「超級風水師」となり、「陰界」から突如出現した「九龍城」を調査して、陰界になければならないはずの「風水」を「見立てる」ことがゲームの目的となっています。そんな動詞が目的のゲームなんて聞いたことないぞ。
奇ゲーとして揶揄されがちな本作ですが、「クーロンネット」と呼ばれる90年代後期サイバーパンク臭ぷんぷんな疑似ネットとIRC、難解な設定ながら意外とすっきりとまとまっていて読みやすいテキスト、ふと振り返ると静かに立ってる油屋の子供など、さまざまな表現がわりと洗練されていておしゃれです。PS1タイトルは私のようなインディーゲーム好きが反応するようなタイトルが多いことは知っていましたが、まさかこれほどビンビン来るものだったとは予想だにしませんでした。『リンダキューブ』、『ガンパレ』、『Moon』、『serial experiments lain』、『アストロノーカ』、『LSD』に続いて、筆者のお気に入りのタイトル入りは間違いありません。というか、あまりゲームをやらないくせに、なぜ家人はこんなゲームを持っているのか……まさか彼女も「妄人」なのか? まあいいや。それでは皆さん、つぎの「ハッピーアワー」でお会いしましょう。
by Syohei Fujita