国内でも10月23日に発売された『ゼルダの伝説 トライフォース3銃士』(以下、トライフォース3銃士)。3人で協力しステージをクリアする形式は、同シリーズの4人協力プレイで進める『ゼルダの伝説 4つの剣』を彷彿とさせ、metacritic74点とまずまずの評価を得ている。そんな『トライフォース3銃士』の北米版のあるシーンが、TwitterやNeoGAFなどで議論を巻き起こしているようだ。
耐えられない“軽さ”
発端はとあるTwitterユーザーの投稿にある。『トライフォース3銃士』ではステージを選んで遊ぶ際に必ず書斎のある広場を通る。ゲーム後半にその書斎の本棚を調べると“あるテキスト”が表示される。そのテキストが問題となっている部分だ。各地域でテキストを比較してみる。なお、日本語版ではしかし残されたであろう古代の遺産を僕は見つけた。
である。
Treehouse a shit pic.twitter.com/WVVqkMSI6Y
— Şคil໐r pr໐xฯ (@PI20XY) 2015, 10月 27
左の北米版の台詞の最後に「So ancient. Such ruin.」という言い回しがある。実はこのSo+名詞やSuch+名詞という言い回し、元は「doge meme」という犬の画像に言葉を挿入するネットスラングとして有名なのだ。
doge memeは、もの悲しげな柴犬の写真に、犬が話しそうなやや舌足らずな言葉を挿入することで、なんともいえない味のある図が生まれ、この組み合わせの妙な中毒性から、一時期はインターネットで大流行していたようだ。この挿入される言葉の定型パターンに「So+単語」や「Such+単語」という言い回しがあるというわけだ。
北米版は、日本語版や欧米版と比較すると意味の差異はほとんどない。しかしゼルダのようなファンタジーゲームにネットスラングを挿入したことに、一部のファンは怒っているようだ。
ほかにも、ゲームの冒頭でリンクが服を着替えさせられるシーンで「It’s your outfit. It’s a bit… Well… You know what I’m getting at. Right? (君の服…そのちょっと…わかるでしょ?)」とNPCにリンクの服装が恰好悪いと言われてしまうセリフも賛否両論となっている。このセリフに対する選択肢には、“adorbs”という単語が出てくる。これは10代がよく使うといわれる、いわゆるかわいいスラングであり、日本語で表現すると「チョーかわいいー!」というニュアンスに近い単語だ。Adorbsのようなスラング調の軽い単語を用いて、『ゼルダの伝説』シリーズの世界観を壊していることも議論の対象になっている。
さらに、ゲーム内にある宝物屋に入ると店主が「dudebro(やあ兄弟)」というこれもまたスラングで話しかけてくるなど、『トライフォース3銃士』はそれほどテキストの多くないゲームでありながら、個性的なローカライズが施されている。
しかし、反対意見だけでなく“このネタは面白いし楽しんでいる”と書き込んでいるユーザーがいるのも事実である。また、任天堂の個性的な翻訳は今回に始まったわけではない。2007年のE3のプレゼンテーションで任天堂オブアメリカのReginald Fils-Aime社長は、WiiFitに乗る際「My body is ready.」と発言し、その奇妙な表現から一躍ネットスラングになった。この「My body is ready.」というフレーズは『ファイアーエムブレム覚醒』の北米版や『大乱闘スマッシュブラザーズ for 3DS』の北米版でもたびたび使用されている。
いずれにせよ、一連の米任天堂の“個性的な翻訳”は賛否両論となった。最新作である2016年発売予定のWiiU版『ゼルダの伝説』でもこのような翻訳を導入していくのだろうか。任天堂オブアメリカがこういった反発に対しフィードバックを行うのかどうか、気になるところだ。