ヴァーチャル・リアリティで“絵の世界”へ、VRヘッドセットと「Tilt Brush」が見せる3Dアートワーク制作の未来

VRはゲームをプレイしたり作品を鑑賞するだけでなく、開発や制作にも使えるデバイスとして今後認知されてゆくのかもしれない。

VRはゲームをプレイしたり作品を鑑賞するだけでなく、開発や制作にも使えるデバイスとして今後認知されてゆくのかもしれない。

米国ニューヨークにて、“ストーリーの伝え方”をテーマとしたイベント「Future of Storytelling」が2012年から毎年開催されている。今年10月の開催に先駆け、ディズニーの著名なアニメーターであるグレン・キーン氏が、VRデバイスを装着して3Dアートワークを制作する映像が披露された。

グレン・キーン氏は、映画「美女と野獣」の野獣や「リトル・マーメイド」のアリエル、さらにはアラジンやターザンなどの主役格を描いてきたディズニーの伝説的アニメーターだ(ディズニーではキャラクターごとにアニメーターを割り当てる伝統がある)。今回キーン氏は、ValveとHTCが共同製作しているVRヘッドセット「HTC Vive」を装着し、両手に持ったコントローラーで空間に野獣とアリエルの3Dアートを描いている。

キーン氏は絵の世界に入り込んで作品を描くタイプのアーティストで、獰猛そうな外見の野獣を描く際には、歯を噛み締めすぎたあまり顎を痛めたこともあったという。そんなキーン氏は今回の映像で、フラットなため世界観に入り込みづらい紙とは異なり、VRを通じればより空想の世界に入れるようになると説明する。VR空間内での作業は絵を描いているというよりも、等身大の像を作っている感覚に近いという。

Googleと共同で開発が進められている「Tilt Brush」

今回使用されている「Tilt Brush」は、2014年9月ごろからひそかに注目を集めつつある3Dペイントアプリケーションだ。『Broken Age』などのアドベンチャーゲームを手がけるDouble Fineの元開発者Patrick Hackett氏とDrew Skillman氏を中心としたチームと、Googleが手を組んで開発が進められている。さまざまなツールやブラシを使用して3D空間に絵を描き、制作した作品は「Google Cardboard」と共に動作するアプリ「Tilt Brush Gallery」にて鑑賞することができる。

なおゲーム開発ではないものの、先日には物理実験サンドボックスゲーム『Garry’s Mod』にて、VRに対応した続編が登場することが明らかにされていた。開発者たちが直感的にクリエイティブを発揮できる場、遊ぶ場所だけではなく”創る場所”としても、VRは今後注目を集めてゆくのかもしれない。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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