ValveがGDCにて発表すると予告していた「SteamVR」に対応する最初のデバイスは、同社と台湾のスマートフォン企業HTCが開発しているVRヘッドセット「Vive」のようだ。HTCが現地時間3月2日の開催迫るGDCに先駆けて発表したもので、その外見や詳細なスペックなども公開されている。
高性能路線、広範囲トラッキング
HTCのViveは、Valveが培ってきた「SteamVR」の技術を採用。片目辺りの解像度は1200×1080、またリフレッシュレートは90fpsとなっている。HTCの謳い文句によれば、”過去のVR技術”とは異なり外界を完全に遮断することが可能で、既存のVRデバイスよりもさらに高い没入感があることをアピールしている。
開発者向けに今春配布される予定のデベロッパーエディションでは、ヘッドセットのサイドにジャックがあり、ここにヘッドホンを接続することが可能だ。おそらく、PCやゲーム機およびテレビなどからヘッドフォンを繋ぐ必要がないため、装着者はより自由に頭部を動かすことができると予想される。
センサー類は、ジャイロセンサーと加速度計にくわえ、レーザー式の位置センサーを装着。10分の1度レベルの精密さで装着者の頭部の座標を測定する。また2台の「SteamVRベースステーション」が存在し、最大15フィートx15フィート(約4.5メートルx4.5メートル)のスペース内で、装着者の位置を判断するという。装着者はこの範囲内であれば、前後左右に歩くこともできる。
さらに詳細は不明ながら、両手に装着するタイプのカスタムゲームコントローラーも紹介されている。人間工学に基づいたVRゲームコントローラーには、位置をトラッキングする機能が盛り込まれている模様で、それぞれ両手に1つずつ持って操作するようだ。このコントローラーを通して、バーチャル空間内でオブジェクトなどに干渉することができる。
今回の発表で明らかとなったのは、Viveの「高性能路線」と「広範囲トラッキング」である。既存のOculus Riftとほぼ同等かそれを上回る性能をアピールしているほか、”部屋スケール”の位置トラッキングという独自の武器で、ViveはOculus RiftやソニーのProject Morpheusが待つVRヘッドセット市場に攻め入る。
多数のコンテンツパートナー
性能面以外で気になる点は、Viveが多数のコンテンツパートナーと協賛している点だろう。世界最大の検索エンジン企業Googleや、アメリカ最大手のケーブルテレビ局HBOを筆頭に、複数のゲームデベロッパーとも協力関係にあることが明らかにされている。Viveがゲーム寄りのVRヘッドセットであることは明白であり、今後は多数のSteam販売タイトルと連携してゆくことも予想される。すでにHTCに続いて別のデベロッパーが動いており、開発スタジオOwlchemy Labsは、Viveに対応すると思わしきゲーム『Job Simulator』のティーザー映像を公開している。
ただし、Steam MachinesにおけるXi3社の「Piston」の例のように、GDCにおける発表がまだ控えている点には気をつけなければならない。ValveやSteamVR側の視点から見て、Viveがどのような立ち位置のデバイスであるのかはまだ未確定だ。HTCにとっては、近年スマートフォン市場では苦戦を強いられており、今回Viveと共に発表した新製品「One M9」とウェアラブルデバイス「HTC GRIP」にて、スマホ以外の市場や業界にも強い存在感を示す狙いがあると思われる。
Viveは2015年ホリデーシーズンにリリース予定だ。GDC 2015ではSteam MachinesやSteam Controllerの詳細も明らかになると予想されており、この3種のデバイスでValveがどのようなゲームの未来を描くのか、注目したい。