無料ゲーム『世界で一番操作性が悪いゲーム』、SNSや実況プレイで人気沸騰中。冗談みたいな理不尽がいっぱいな、イライラおバカ体験


個人ゲーム開発者なまり氏の手がけるUnity製フリーゲーム『世界で一番操作性が悪いゲーム』がSNSを中心に話題となっている。

『世界で一番操作性が悪いゲーム』は、2023年12月25日にフリーゲーム共有サイトunityroom上で公開されたアクションゲームだ。不定期開催されている「Unity1週間ゲームジャム」というゲーム開発者向けイベント向けに制作された。

「Unity1週間ゲームジャム」はお題に合わせて1週間でゲームを制作してunityroomで共有するイベントで、『世界で一番操作性が悪いゲーム』が制作された回のお題は「おくる」だった。お題にちなんでかゲームの概要欄には、制作者なまり氏からの「全てのゲーマーに送る─────最悪のゲーム 操作性ランキング最下位を目指しています。」というメッセージが記載されている。また、なまり氏のXでのポストでは「最悪な気分になりたい方・ムカつきたい方・ゲームに自信がある方・配信者におすすめです」と紹介されている。

そんな本作を、さまざまなゲームを紹介するXユーザーのオクトレイン氏が9月7日に取り上げたことで注目が高まり、YouTubeなどに実況プレイ動画を投稿するプレイヤーも出現。RTAや一部ステージのスコアアタックなどもにわかに盛り上がりを見せている状態だ。

本作は、ゲーム説明にもある通り「操作性の悪さ」を追究して制作されたとのことだ。ゲームのほとんどのパートは操作性の悪いアクションゲームだが、キャラクター操作だけでなくUIなどにもプレイヤーをイライラさせる工夫が凝らされているジョーク作品と言える。たとえば、ゲーム開始時に画面に表示されている「START」の文字をクリックしてもゲームは始まらない。それどころか、剣崎雌雄氏によるVoiceVoxの合成音声つきで「なぜクリックをするんだい?」と尋ねられてしまう。またゲームをスタートするにはキーボードのS・T・A・Rの四つのキーを同時押しする必要があるのだが、何度か画面をクリックしないと教えてもらえない。


本作を制作したなまり氏によれば「人を煽るときに最適な声」を探した結果、剣崎雌雄氏の合成音声が一番適していると感じ、これを使用することにしたのだそうだ。プレイ中は絶えずこの合成音声が語りかけて来るが、そのさらに後ろで流れ続けている不思議なBGMも特徴的だ。オタマトーンでいい加減に演奏したかのような気の抜ける音楽は、常時プレイヤーの集中力を削いでくる。


本作では、基本的にキーボード操作でキャラクターを動かし、ゴールとなるポータルにキャラクターを接触させることでステージをクリアできる仕組みになっている。ただし、両手両足の関節を計16個のキーを使って操作する必要があるため、普通に歩くだけでも大変な困難を感じるだろう。動かせる関節の数は8つなのだが時計回りと反時計回りの回転方向ごとにキーが設定されているために16キーとなっている。

そうした操作感はキーボードで陸上選手を操作するフリーの高難易度アクションゲーム『QWOP』を彷彿とさせるものの、『QWOP』の4倍の数のキーを操作しなければならないので、より高難易度と言える。歩行するためだけに八つの関節を時計回りか反時計回りに回転させるという直感に反する操作を16個のキーで行う難しさには、思わず笑いがこみ上げてしまうかもしれない。


また、唐突に画面中を広告バナーのようなものが覆い尽くすこともある。このバナーを閉じないと次のステージに進めないのだが、本作の「閉じる」マークはいずれも判定が見た目より小さく設定されているためバツマークの中心を精密にクリックしなければならない。なおバナーをクリックした場合は、同じくなまり氏が開発を手がける高難度リズムゲーム『ポリリリリズム』のSteamストアページに飛ばされる(関連記事)。


本作『世界で一番操作性が悪いゲーム』は、操作性が悪いということをコンセプトに制作されているが、それに留まらず、頻繁にセーブデータをリセットして最初のステージからやり直させようとする罠も多数仕込まれている。ボタンに書いてある文字などをよく読まずに、進むつもりで雑にクリックしているとオープニングに戻されることもある。ほかにも、驚くべき理不尽な理由で最初のステージに戻されるため、初めてのプレイで最終ステージをクリアするにはかなりの時間を要するかもしれない。

とはいえ、すでにかなりやり込んでいるプレイヤーも存在する様子。本稿執筆時点で、クリアまでにかかった時間ランキングの1位の記録は198.67秒だ。筆者がプレイしたところでは、一つのステージをクリアするだけでも198秒以上要してしまうこともあるため、何度もプレイを重ねてたどり着いた記録なのだろう。

デベロッパーのなまり氏はゲーム制作を趣味にする医師として活動中の個人ゲーム開発者だ。主にUnityでゲーム開発をしており、現在unityroom上に17作品が投稿されている。ちなみに先述した『ポリリリリズム』は、『世界で一番操作性が悪いゲーム』の制作中に休憩がてら開発した作品だそうだ。

『世界で一番操作性が悪いゲーム』は、PC(unityroom)にて無料で配信中。