発売日が決まった『人喰いの大鷲トリコ』。上田氏、ゲームのこだわりや9年にわたる開発の苦労を海外誌に語る


ついに発売日が10月25日に決定し、リリースにむけた本格的なプロモーションが始まった『人喰いの大鷲トリコ』。ディレクターである上田文人氏が、ゲームに込めたこだわりや、長年の苦労を海外誌に語っている。

上田氏が込めたこだわり

まず上田氏は、PlayStation公式ブログにて『人喰いの大鷲トリコ』のストーリーテリングのこだわりついて明かし、グラフィックが演出の鍵となっていると話した。ゲーム内に主人公とトリコの間に直接的な共通言語は存在しない。彼らをつなぐのは、身振り手振りと表情のみだ。そういった言葉にできない連絡手段を表現できるグラフィックがストーリーテリングにおいて重要だったという。上田氏は人間の表情が表現できるのみならず、動物の感情表現も描写できるテクノロジーを常に探し求めてきたようだ。

また、ストーリーテリングにおいて『ICO』『ワンダと巨像』と異なる部分のひとつにナレーションの導入がある。これまでの2作品では言語表現が登場しなかった。しかし、今作ではゲームが始まると年老いた主人公が語りを始める。この導入はチームとして初めてのことであったが、主人公の少年が対象のものに近付くことにより生まれるナレーションによって、ヒントや少年の考え、情報などが自然に素早く伝えられることに成功したようだ。

ほかにも敵の存在意義にも言及されている。『ICO』での敵はヨルダ姫を守るパズルの動機付け、『ワンダと巨像』では巨人という敵そのものがゲームコンセプトだった。『人喰いの大鷲トリコ』での敵は、“単なる障害物”ではなく、少年と大鷲トリコが信頼関係を築くために立ち向かうものであると上田氏は話す。少年は戦闘に有効な手立てを持っておらず、あくまでトリコとの協力によって敵を退けることができる。そういった協力を通じて変わる関係性の鍵となるのが敵の存在であると語っている。

上田氏が語る苦労

ueda-fumito-told-foreign-media-about-love-and-struggle-about-the-last-guardian-001一方Kotakuのインタビューに対しては、9年間にも及ぶ開発の苦労を明かしている。上田氏は長年の開発によって私生活は大きく変化したが、作られたゲームにはなんら影響を受けていないと断言。ただひとつ、長い時間がかけられたことにより開発当初に思い描いていた「こういうゲームを作りたい」というビジョンが失われる時間があり、当初抱いていたものを必死に思い出そうとしていたことを告白。そういったビジョンは開発初期に描いた古いスケッチやノートを見返すことで思い出せたようだ。開発が長引きゲームプレイに慣れすぎたことにより、トリコの性質もゲームとして合理性のあるものになっていき、動物としての自然さが失われていた時期もあったという。上田氏は、そういった自然さを自分の開発するゲームでは守らなければいけない点だったと話している。

結果的にゲームのビジュアルやデザインは開発当初から変化なく、PlayStation 3から4に移行したことで色彩や解像度が更に素晴らしくなったものの、初期の哲学に変わりはないようだ。ほかにも過去の自分にどういったアドバイスを送るかといった質問には「アドバイスはないが、君が思うよりも困難が付きまとうと言いたいね」と笑いながら返答するなど開発が長い旅路であったことを示唆している。

改めて海外メディアに対し今作に対する強い愛情と苦労を語った上田氏。ゲームもほぼ完成状態であり、残るは小さな部分のブラッシュアップのみのようだ。9年間の愛と苦労が込められた『人喰いの大鷲トリコ』は、10月25日にPlayStation 4向けに発売予定だ。