Twitchコメント欄プレイ『Pokémon Crystal』開始。民主主義 vs. 無政府主義

ゲーマー向け動画ストリーミングサービス Twitch のコメント入力でゲームをプレイする遊びが最近流行しています。はしりとなったのはそのものずばり TwitchPlaysPokemon なる名前のチャンネル（配信URLはこちら）。あまりのインパクトに雨後の筍のごとく亜種が生まれ、その守備範囲は『スーパーマリオブラザーズ』や『ストリートファイター2』、あげくは別の配信者による『Pokémon Yellow』まで。ゲーム動画リアルタイム配信の新境地を切り開いたとすらいえる事態となっています。

本家 TwitchPlaysPokemon による遊びの具体的な内容はというと、上述のとおり入力されたコメント（a/b/start/up/down/right/left）をコマンドとして認識し、ゲームを進行させます。いわば無限の猿定理で攻略するということ。コメントはすさまじい勢いで流れていくため「狙いすましたこのタイミングで入力」は至難というよりほぼ不可能です。

しかしながら人間（視聴者）もそこまで（猿並に）知性は低くないため、完全にランダムというわけではありません。状況におうじてある程度は適切なコマンドを入力すべく民意が働きます。集合知を結集してゲームは進行する、はずでした。

そこは人間の業の深いところで、「ならば進行を妨害してやろう」という虚無主義・破滅主義・無政府主義者も同時に発生してしまいました。右往左往するくらいならともかく、ポケモンを野に帰してしまうなどの奇行で大きく盛り上がります。それが極限に達したのがタマムシシティ付近。極度に進行が停滞したため、”神の手”がついに介入しました。新規システムが導入されたのです。（その際に”暴動”が起き、のちに局所的に認知度が高いと思われるアスキーアートとともに定着）

新世界秩序の名は”Democracy”（民主）と”Anarchy”（無政府）。まずコメント入力者、つまりプレイヤーはどちらかに属するよう宣言します。リアルタイムで Democracy と Anarchy のいずれの状態にあるかが多数決により決定され、もし Democracy 状態だった場合には「一定時間内に最も多かった入力を採用」・Anarchy 状態だった場合には「ジャストそのタイミングの入力を採用」となります。

ようするに最初は完全無政府主義で始まっていたというわけであり、

のも当然の帰結でした。

ルール的にはそのままとくに変化は下賜されなかったものの、紆余曲折がなかったわけではありません。大量のポケモンをリリースしてしまった 12日目の”Bloody Sunday”あたりは Notable Events（特筆すべき出来事）として多くの視聴者を絶望に叩き落としたりもしました。一連のイベントにかんする詳細は有志によるレポートをご参照ください。

ですが、そもそも初代にかぎらず『ポケモン』メインシリーズのゲームバランスは「とにかくレベルを上げておけばラスボスは倒せる」であり、つまり戦闘についてだけいえば試行回数さえ増やせばいずれは打開できるようになっています。世界に絶望した何者かがポケモンを虚空へ消し去るべく虎視眈々と狙い続けるリスクはつねにあったかもしれませんが、最終的にはレベル81まで鍛えあげられた”サンダー”が四天王らをも力技でなぎ倒し、ついにはエンディングへとたどり着きました。達成したのは3月1日の18時ごろ。

そしてエンドクレジットが流れた直後、約1日後に次なる冒険が始まるとのアナウンスがあり、本稿執筆からつい数時間前の3月2日夜に第2弾『Pokémon Crystal』が始まりました。

Democracy と Anarchy のルールに若干手がくわえられているようですが、根本的なルールについてはおそらく変化なし。前回24時間体制で16日間にもおよんだ暗中模索が今回どうなるかは未知数です。ただ間違いなくいえるのは、まだ冒険は始まったばかりということ。参戦するならば今です。この一体感、味わわない手はありません。

余談。PlayStation 4の目玉機能の1つに Twitch や USTREAM などとの連携機能があります。ゲームハードから直接ストリーミング配信できるというだけでもそれなりの面白さはありますが、興味深いのはコメントと連動したゲームシステムがあること。たとえば『とってもE麻雀ぷらす』では「E-jan!」とコメントを受けるたびにアイテム購入に使用できるポイントが100ずつ手に入ります。

単なる偶然なのか時代の必然なのかインスパイアされたのかはわかりません。しかし、ゲームのあらたな遊び方としては良い一手であるように思えます。リアルタイム性の高いアクションゲームなどは厳しいでしょうが、ポケモンをはじめとする”ゆるめ”の RPG やボードゲームあたりには「次世代」ゲーミングの大海原が広がっていそうです。