傑作時間逆行ADV『ザ・リワインダー』開発元が閉鎖されるも“プロデューサーひとり”で活動継続を表明。「賛否両論」の続編を、そのままにはしない

MistyMountainStudioは6月10日、『ザ・リワインダー~黄泉からの旅人~ Ⅱ』の今後のアップデート予告にあわせて、スタジオの閉鎖について公式Discordサーバーにて改めて発表した。

デベロッパーのMistyMountainStudioは6月10日、『ザ・リワインダー~黄泉からの旅人~ Ⅱ』(以下、ザ・リワインダー2)の今後のアップデート予告にあわせて、スタジオの閉鎖について公式Discordサーバーにて改めて発表した。

『ザ・リワインダー2』は、前作『ザ・リワインダー』の続編となるアドベンチャーRPGだ。いずれの作品でも主人公は、冥界に暮らす”逆夢師(さかゆめし)”の七雲(チーユン)。逆夢師は自分の魂のみを過去へ送り、人々の心に干渉する力を持っている。彼は、現世への未練でその場所に囚われている魂が、輪廻の循環に無事還れるように、過去へ渡って歴史を一部の改変する任務を与えられる。つまり地縛霊を成仏させるような仕事だ。

今回、本作を手がけた雲山小雨(MistyMountainStudio)が閉鎖されたことが発表された。Steamにて5月30日に投じられた声明で本作のプロデューサーを務める新宇氏の語ったところによれば、1作目の『ザ・リワインダー』が好評を博した結果としてスタジオが急速に成長したものの、2作目で実現したかったことに対しては全体的にチームの経験が不足していたとのこと。そのため、2作目には多くの直すべき部分が残されていたものの、資金をほとんどすべて費やしてしまい、直すべきところを多く残したままでもリリースに踏み切るしかなかったという。結果として売上やレビューの評価は芳しくはなく、収益を十分に得られないために、デベロッパーチームであったMistyMountainStudioを解散せざるを得なくなったと述べている。

本シリーズ1作目は、論理パズルを軸としたパズルアドベンチャーとなっており、物語の背景には中国古来の死生観がある。魂は死んで新たな生き物に転生するという輪廻の考え方と、時間を遡って歴史を改変するという現代的なタイムトラベルの要素が組み合わさった作品であった。そのため、過去へ遡るためのパズルにおいても「時間を逆回しにする」ことが鍵となる場面が多く、一見単純そうに見えても、「覚えたことを逆順でやる」点が絶妙に難易度を上げるポイントになっていた。過去の出来事における謎を追っていくミステリーの部分と、ほどよく難しいパズルが奏功して、Steamユーザーレビューでは本稿執筆時点で約6500件中96%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得している。

前作『ザ・リワインダー』


一方、続く『ザ・リワインダー2』は2024年10月に配信された体験版の時点でレビューは「賛否両論」ステータスであり、5月26日に製品版がリリースされた後もこの評価は変わっていない。グラフィックやゲームシステムなど、前作からのさまざまな変化に否定的な意見が寄せられている状況だ。

前作はバトル要素はありつつも調べ物や推理が軸であり、今作ではそれがパズルアドベンチャーよりはアクションアドベンチャー寄りのシステムへと変化している。キャラクターは横スクロールのマップを移動するのではなく、見下ろし型のフィールド上を自由に歩き回れるようになった。しかし、それだけには留まらず、パズルを解くことで行動範囲が広がり物語の謎も明らかになっていくというゲームサイクルであった。一方で本作では、自由に色々なマップを探索し、大型の魔物を討伐するといった具合にバトルの要素が大幅に拡張され、バトルの頻度も増えた。ただ前作の持ち味であったストーリー面や謎解きがボリュームダウンしており、さらにバトルシステム自体にも攻撃の判定が分かりにくいといった課題がみられる。そしてそうした変化は、ユーザーレビューにおいても批判を受けている。この変化に、特に前作のパズル要素が気に入っていたプレイヤーはレビュー上で戸惑いを見せている。今回の声明を見るに、開発チームの経験やリソースの問題から完成度を高められなかったことも、変化が受け入れられなかった背景にあるようだ。

ただプロデューサー新宇氏は先述したスタジオ解散の発表の際に、「どんなに困難が伴っても、このゲームを改良し、改善し続ける方法を見つける」と、決意を新たにしていた。そして6月6日に今後のアップデート計画を告知。スタジオの解散と資金の枯渇により時間はかかる見込みだそうだが、YouTubeで進捗報告を行いつつ、ユーザーエクスペリエンスに重点を置いた詳細なアップデートを継続することを伝えた。この中には、逆夢ステージの再設計、ストーリーラインやプロットの刷新と調整、マップの再構築、戦闘メカニクスの調整、謎解きや探偵要素の強化などが含まれ、今後6か月以内をめどにすべての更新を完了させる予定だという。

なおスタジオの解散についての告知後には厳しい意見も応援の声も寄せられたそうで、スタジオを支援したいという申し出もあったという。同氏はそうした声への感謝を述べつつ、ゲームを購入してくれることが最大の支援になると説明。現状課題の残された『ザ・リワインダー2』ではなくとも、第1作やそのDLCなどを購入してくれれば、助けになることを伝えている。またゲーム自体のクオリティでプレイヤーの心を動かしたいという想いのもとで『ザ・リワインダー2』の修正を続け、ファンの信頼に応えたいとして声明を締めくくった。

古代中国的な死生観という個性的な作風からも高い評価を受けていた『ザ・リワインダー』に対し、続編は開発段階での失敗もあり、評価や売上面での苦戦がスタジオ閉鎖に繋がった。しかしチームが解散しても、プロデューサーである新宇氏は本作の改善を諦めていないようだ。ちなみに6月9日にはさっそくアップデートが実施され、不具合修正がおこなわれている。今後のアップデート内容やレビュー評価の動向にも注目していきたい。

『ザ・リワインダー2』はPC(Steam)向けに配信中。なお、前作『ザ・リワインダー』とそのDLCはゲーム内の日本語表示に対応しているが、『ザ・リワインダー2』は現時点で英語と中国語簡体字のみの対応となっている。

Kei Aiuchi
Kei Aiuchi

RPG、パズル、謎解きアドベンチャー、放置系などを遊びます。比較的やりこみ型。特に好きなゲームは『ルーマニア#203』

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