ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は、10月25日のリリースを予定していた『人喰いの大鷲トリコ』(英題:The Last Guardian)の発売日を、12月6日へ延期すると発表した。開発の最終段階で想定以上のバグに直面したとのことで、長期にわたる延期で紡いできた感動のゲーム体験を、可能な限り洗練された状態で世に放つために苦渋の決断にいたったと説明している。
再度の延期はファンを裏切らないため
『人喰いの大鷲トリコ』は元々、2009年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現、SIE)からPlayStation 3の目玉タイトルとして発表されていた。開発を指揮するのは、『ICO』や『ワンダと巨像』を手がけたゲームデザイナー上田文人氏。当初は2011年冬季の発売を目指していたが、同年4月に制作上の都合を理由に無期限の延期が決定。その後、上田氏が2011年にSCEを退社していたことや、フリーランス契約で引き続き開発に携わっていることが明らかになるも、制作状況は変わらず不透明のまま、時だけが過ぎ去っていった。
そんな中、昨年6月に5年ぶりの新映像を公開すると、対応プラットフォームをPlayStation 4に変更し、2016年の発売時期を発表。同時に、過去の代表作を共に手がけたスタッフを中心に、新スタジオgenDESIGNを設立していたことを報告した。それから目立った情報はなく、一部では再び開発が行き詰まったのではないかと囁かれていたが、今年5月に英国誌「Edge」の最新号が本作のハンズオンプレビューと、ディレクター上田文人氏へのインタビューを掲載。翌月には、「E3 2016」のソニープレスカンファレンスで10月25日の発売が明らかになった。
今回、再び延期が決定したことについて、SIE Worldwide Studios代表の吉田修平氏は、PlayStation公式ブログで次のように説明している。「上田文人氏とgenDESIGN、そしてJAPAN Studioには、人喰いの大鷲トリコが琴線を揺さぶるような、友情と信頼の冒険を描くための明確なビジョンがあります。そして、長きにわたって私たちを支えてくれたファンのため、可能な限り完成度の高い体験を届けたいと思っています。延期は苦渋の決断です。特に本作に関しては尚更です。しかし、開発の最終段階で想定以上のバグに直面してしまいました。人喰いの大鷲トリコが、クリエイターの思い描いたとおりの体験を届けるためにも、問題解決にさらなる時間を要すると判断いたしました」。
先日には、『人喰いの大鷲トリコ』のゲームディレクター上田文人氏が、9年にわたる開発の苦労を海外メディアへ語ると共に、作品に馳せる自身のこだわりを公式ブログ内で説明していた。本作の主人公と大鷲トリコが意思疎通できるのは身振りや表情のみ。言語表現に頼らず、グラフィックだけで物語を伝える演出技法は、上田氏の過去作『ICO』や『ワンダと巨像』でも用いられた。一方、本作では打って変わって、年老いた主人公を語り部としたナレーションを導入している点が特徴だ。言語の壁を越えた主人公たちのコミュニケーションと、プレイヤーに周囲の情報を自然に伝達するための新たな演出で、動物の感情表現に挑戦している。