「『TES V: Skyrim』はRPGの風景を完全に変えた」 BioWareプロデューサー語る

BioWareが今月発売する『Dragon Age: Inquisition』は、2011年に発売された『Dragon Age II』からおよそ3年振りとなるシリーズ最新作だ。同作のエグゼクティブプロデューサーMark Darrah氏が、海外メディアgameindustry.bizのインタビューを受け、RPGジャンルのゲーマーたちがいま何を求めているのかを語った。

2011年3月に発売された『Dragon Age II』の不評を尻目に、8ヶ月後に登場した『The Elder Scrolls V: Skyrim』は全世界で賞賛された。Darrah氏は、『TES IV: Oblivion』が600万本ほどの売上であるのに対し、『TES V: Skyrim』が2000万本を売り上げていることを理由の1つとし、「『Skyrim』はロールプレイングゲームの風景を完全に変えた」と考えている。

変化したのは、"ゲーマーたちがRPGに向ける期待"だ。かつて名作RPGに触れてきたゲーマーたちは、すでに若者ではなく、ゲームをプレイする時間は限られている。それゆにえDarrah氏は、以前のRPGゲーマーたちが期待していたのは、ゲームプレイ部分の変化ではなく、過去の作品への哀愁だったと語る。過去に存在したデザインやメカニックを取りつけても、安定した作品として世に出すことができた。しかし2011年11月以降、『TES V: Skyrim』で初めてRPGを体験したような1500万人のゲーマーが突如誕生した。彼らはかつてのRPGゲーマーとは全くことなる。彼らがRPGで期待するのはノスタルジーではなく、「ストーリーテリング」や「探索」だ。

BioWareの名作RPGの『Baldur's Gate II』。現在は初代と 共にリメイク版の「Enhanced Edition」が販売されている
BioWareの名作RPGの『Baldur's Gate II』。現在は初代と
共にリメイク版の「Enhanced Edition」が販売されている

ゲーマーたちが「探索」へ向ける期待は、いままで見てきた中でもっとも大きな変化をとげたと、Darrah氏は続けている。Darrah氏は、BioWareが2000年に発売した『Baldur's Gate II』や、6万5000平方メートルものワールドを持つ1996年の作品『The Elder Scrolls II: Daggerfall』を例に挙げた。これら1990年代後半のRPG作品以降、ゲームは"より小さな体験"を目指してきたとDarrah氏は主張する。洗練された4時間のゲーム体験である『Uncharted』を引き合いに出し、ここ10年間で『Skyrim』ほど広大なゲーム体験を持った作品は登場しなかったとしている。

1990年代後半から10年以上の時を経て、ふたたびゲームは巨大になりつつあるのだろうか。Darrah氏はゲームが巨大になりつつある理由を、ハードウェア性能が向上したためだと説明した。そのおかげでRPGがふたたびゲームの最前線に戻ることができたともしている。コンソールの世代により、主要なゲームジャンルが変化するというのが、Darrah氏の説だ。一世代前まではシューターではなくレーシングゲームが主要なジャンルだった。初代PlayStationの時代は、ロールプレイングゲームが主役だった。Darrah氏は、RPGが今世代の主役となるかはわからないが、おそらくオープンワールドの探索ゲームが今世代の制覇を握るだろうとしている。

 


シリーズ3作目となる『Dragon Age: Inquisition』は、初代『Dragon Age: Origins』と『Dragon Age II』のゲームデザインをハイブリットした作品だ。ゲームエンジンにFrostbite 3を使用し、マルチプレイヤーモードを搭載するなど、シリーズ初の要素にも挑戦している。『TES V: Skyrim』のような一連なりの大陸は登場しないが、複数に区切られたロケーションやエリアがあり、広大でコンテンツに満ちたセダス大陸を探索することができる。

 

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Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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