スウェーデン・ストックホルムの中心にある都市「Norra Djurgårdsstaden」。港と自然に囲まれた美しいこの街は、今新たに開発されてようとしている。開発計画では、1万2000の住宅と3万5000もの仕事が存在するような長期的に持続可能な街を目指すという。興味深いのは、この都市開発にゲーム『Cities: Skylines』が用いられていることだ。
『Cities: Skylines』は2015年にリリースされた街作りシミュレーションゲームだ。人気フランチャイズ『シムシティ』シリーズのお約束を丁寧になぞりつつ、手堅くまとめあげ、発売されるとすぐさまヒットタイトルとなった。同作の販売を手がけるParadox Interactiveもストックホルムに拠点を構えているが、今回の話はストックホルムの行政側のアプローチから始まったのだという。
ゲームが使われるのは街作りのシミュレーション部分だ。9月3日と4日に、街の中心部にあるオフィスにてさまざまな人々を集めワークショッププログラム「My Neighborhood Cities: Skyliness」が開かれる。参加するのは学生や研究者、そしてゲーマーだ。中にはこのプログラムのためにオーストラリアから来る『Cities: Skylines』を愛するModder(Mod製作者)もいるほどだ。彼らがさまざまな街をゲーム内で作り、長期的にみてどういった課題が生まれるか、どのような支援が必要となるかなどを考察していく。ただ活気のある場所を目指すだけでなく、化石燃料を使わない交通機関や、活気のあるストリートといった“自然に優しくにぎわいのある街”を理想に掲げているようだ。また、このワークショッププログラムの目的は、都市のシミュレーションのほかにも、こういった会合を開くことによって市民と対話をするといった狙いもあるようだ。
企画を発案したスイスビルディングサービスの部長を務めるErik Kalmaru氏は、元々ゲームによる可能性を常に模索していたと語る。
コンピューターゲームは、新たなアイディアを生み出すだけでなく、生み出すプロセスを視認化できるという意味で有効なツールだ。我々はMojangが『Minecraft』でどのような効果を世界にもたらしたかというのを調査してきたし、『Cities: Skylines』も同じようなことができると信じているよ。
ほかにもParadox InteractiveのCOOであるSusana Meza Graham氏は「多くの人々がゲームの可能性に気付き始めている。こうした新たな取り組みによって社会的な課題を解決しようとしている街の野心は素晴らしい。」と喜びの声をあげている。
近年では『Minecraft』や『Civilization』といったゲームが教育分野で用いられつつある。前出の『シムシティ』も教育プログラムとしての活用を考えられているが、街づくりシミュレーションゲームで実際に都市開発を試みるというのは新しい。『Cities: Skylines』はDLCの開発も精力的におこなっており、自然災害を題材とした「Natural Disasters」が今冬に配信予定だ。