不正ダウンロード対策は”よいサービス”で 海外で新たに広がる海賊たちのもてなし方

現地時間3月10日に発売された『Cities: Skylines』が非常に好調だ。本作は、『シムシティ』や『Cities XXL』などに代表される、都市開発シミュレーションジャンルの新作ゲームである。ユーザーや海外メディアからのレビューでは高評価を得て、発売後の24時間で25万本を売り上げた。パブリッシャーのPardox Interactiveにおいて、史上最速の売り上げペースを記録しているという。

Paradoxの幹部Shams Jorjani氏によれば、残念ながらほかの人気タイトルと同様に、本作でも不正ダウンロードが発生している。しかしJorjani氏は、不正ダウンロード対策にオンライン接続やDRMを強要するのではなく、「よいゲームをよいサービスで提供する」ことが不正ダウンロード対策に繋がると説明する。


よりよいサービスで海賊たちもてなす

 

See also: ビデオゲームの不正ダウンロード "抵抗しない"開発者たちTwitter上で説明したJorjani氏によれば、『Cities: Skylines』では発売初日こそ不正ダウンロードが確認されなかったものの、2日目には16パーセントのユーザーが不正に海賊版を取得したという。どのように海賊版をカウントしたのかは明らかにされていないが、初日25万本以上を売りあげたことを考慮すれば、少なくとも1万本以上は不正ダウンロードされていると見ていいだろう。

数年前まで、不正ダウンロードにはDRMやオンライン接続で対策することが常だったが、ゲーム業界ではインディーデベロッパーを中心に、"抵抗しない"風潮も生まれつつある。DRMやオンライン接続を搭載しても、時間が経てば不正に解除されることが多い。にも関わらず、正規のプレイヤーには、コードの入力やオンライン接続といった手間を強要することになる。効果を成さない邪魔な鍵ならば、そもそも付けないでおこうという発想だ。

Jorjani氏とParadoxも似た考えを持っているようだ。Jorjani氏は、Paradoxの不正ダウンロード対策は「素晴らしいゲームを無料のアップデートを通してさらによくすること」だと説明。プレイヤーが購入した体験をよりよくすることが、不正ダウンロード率を低下させる方法だと説明した。映像ストリーミング配信企業の最大手「ネットフリックス(Netflix)」の大成長も挙げ、素晴らしいサービスを提供することが不正ダウンロード対策に繋がると強調する。

『Magicka』
『Magicka』

実際に、Paradoxが過去にリリースした魔法アクションゲーム『Magicka』では、13日間で14回のアップデートを実施したところ、海賊たちは不正ダウンロード版のアップロードをしばらくのあいだ辞めたのだという。Jorjani氏は、最高のDRMはSteam Workshopであるとも伝える。

『Cities: Skylines』は、当初から2013年発売の『SimCity』を明らかに意識して開発されてきたタイトルだ。オンライン接続を強要するなど、ゲームデザインが不評だった『SimCity』に対し、本作は発表当初から「オンライン接続はない」や「Mod対応」などと、トレイラーなどでアピールしてきた。ユーザーたちが求めた理想の都市開発シミュレーションを作り上げ、『Cities: Skylines』は大きな成功を収めている。

一方、『SimCity』を開発したMaxisは、スタジオ拠点が解散されElectronic Arts本社に吸収されることが発表されたばかりだ(ただしレーベルは残存し『SimCity』や『シムズ』といったシリーズの開発は継続する)。もちろんDRMやオンライン接続への姿勢がすべてこの結果に繋がったわけではないが、対照的な結末であると言えるだろう。

 

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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