ファンによる『スーパーマリオ64』HDリメイクプロジェクト、任天堂からの要求で凍結へ


コンピューターサイエンスを専攻している海外の学生Erik Roystan Ross氏は、自身が製作していた『スーパーマリオ64 HD』を凍結すると発表した。本作は、ファンであるRoss氏による『スーパーマリオ 64』のHD化プロジェクトであり、今月に入り複数のメディアから取り上げられ、注目を集めていた。公開されていたWebブラウザ版やダウンロード版は、「ボムへいの せんじょう(Bob-Omb Battlefield )」がプレイできる状態だったが、今後は公開されることはなく、開発も停止される見込みだ。

 

 


米任天堂から差し止め

 

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『スーパーマリオ64 HD』は、Erik Roystan Ross氏がゲームエンジンUnityを利用して開発を進めていたプロジェクトである。『スーパーマリオ64』のデータをUnityに移植しているわけではなく、アートやアニメーション、オリジナルを参考にして製作されたUIなどは、Ross氏本人が手がけている。一方で、マリオやグンバ、パワースターの"メッシュ"(テクスチャが適用されたオブジェクト)を、『スーパーマリオギャラクシー』から無断使用しているのだという。またサウンドに関しても、既存のマリオゲームから大量に使用していた。Webブラウザ版とダウンロード版の両方に対し、この点について権利違反の通知が届いたとRoss氏は説明している。

当初Ross氏は、同プロジェクトがこれほどまで人気になるとは想定しておらず、勉強の一環として開発を進めていたと伝えている。実際に『スーパーマリオ64 HD』は、同氏がUnityで一から製作した「Super Character Controller」のデモンストレーションという位置づけだったようだ。「Super Character Contorller」は、衝突判定やノックバックなど、キャラクターの操作に関するデータを収録したパッケージである。

Ross氏は権利違反の通知がどこから届いたのかを明記していないが、Webブラウザ版が公開されていたリンクには、米任天堂の法務部から公開停止を要求されたことが記載されている。『スーパーマリオ64』に興味があるのなら、任天堂のバーチャルコンソールからプレイするようにと、Ross氏は続けている。

 


国内と海外で異なる"ゲームデータ改造"への認識

 

ファンリメイク「Chrono Trigger: Resurrection」
ファンリメイク「Chrono Trigger: Resurrection」

国内からは理解しづらいが、海外ではPCゲームを中心にファンがデータを改造(Modification)する文化が根付いており、それらの改造データは総称して"Mod"と呼ばれている。ステータスなどゲーム内の数値や操作キャラクターを変更するだけでなく、グラフィックをオーバーホールしたり、ゲームシステムを全く作り変えてしまう巨大プロジェクトも数多く進行している。

海外では原作のデベロッパーや開発者らもMod文化に理解を示すことが多い。例えばPCゲーム配信プラットフォームSteamでは、Modをシェアする「Steam Workshop」が公開されており、利用者は1クリックでModをインストールすることができる。Bethesda Softworksの『The Elder Scrolls V: Skyrim』の「Creation Kit」など、Modを製作するためのクリエイションツールが一部の作品で公開されている。Modがそのまま1つのビデオゲームとなってしまった例も少なくない。FPS『Counter-Strike』は、元は『Half-Life』のModであるし、現在主流のオンライン対戦ゲームとなったMOBAも、『WarCraft 3』のMod「Dota」から誕生したジャンルだ。

厳密にはModではないが、ファンの手により一から製作された『クロノトリガー』のリメイクプロジェクト『Chrono Trigger: Resurrection』は、今回の『スーパーマリオ64 HD』と同様の結末を迎えている。その素晴らしい出来でファンをも唸らせたが、最終的にはスクウェア・エニックスが商標などの面から開発停止を要求した。ゲームデータやキャラクターの権利は開発元にあり、当たり前の話のように思えるかもしれないが、海外と国内でMod文化の壁はまだまだ分厚く、時折こういった事件が起きてしまうようだ。