
Steamではどんな「ドット絵ゲーム」が成功しているのか、マーケティングの専門家が分析。“マルチプレイが意外と厳しそう”など、ジャンルの傾向も浮かび上がる
海外メディアOver Powered Game Marketingは9月6日、Steamにおける「ドット絵ゲームの成功」に関して調査した結果を公表した。

ゲームについてマーケティング視点で情報発信している海外メディアOver Powered Game Marketingは9月6日、Steamにおける「ドット絵ゲームの成功」に関して調査した結果を公表した。
同メディアは、XR研究開発スタジオBreach VRにてコミュニティ&マーケティングマネージャーを務めるJordan Brown氏が個人で運営。インディーゲームの話題を中心に、マーケティングの専門家として分析するなどした記事を公開しており、今回は同氏もファンだというドット絵ゲームがテーマとされた。

今回調査対象とされたのは、Steamにて2023年8月1日から2025年8月1日までにリリースされた、「ドット絵」のタグが付けられたゲームだ。リリース時期をこの2年間に絞ったのは、コロナ禍の巣ごもり需要などの特異な影響を避けることや、分析に利用したSteam非公式データベースサイトGamalyticの情報がより充実したタイミングに合わせたため。
そして“成功”の基準として、500件以上のユーザーレビュー投稿が設定された。何をもって成功とみなすかはさまざまな観点があるが、Brown氏は500件のレビュー投稿があれば、エンゲージメントとして意味のあるレベルであり、また売り上げやプレイヤー数などほかの指標でも良好な結果が出ているであろうと推測されるとした。
こうした条件を適用した結果、対象期間にリリースされた全6422本のドット絵ゲームのうち、ユーザーレビュー数500件以上を得ているタイトルは343本だったという。つまり、およそ5%のタイトルが成功を収めているとみなされた。なお5%と聞くと少ないようにも思えるが、明らかにクオリティが低いタイトルが何千本も母数に含まれていることを考慮すれば、開発者にとってそう不安視する数字ではないとBrown氏は補足している。

さらにBrown氏は、ドット絵ゲームのうち、どういったゲームジャンル・テーマのタイトルがよく売れているのかも調査している。ジャンルとテーマもSteamのタグ機能をベースに判別し、収益はGamalyticによる推計値を利用。あくまで推計値のため誤差はあるそうだが、今回のように傾向を測るだけならそれなりに有用だと思われる。そして同氏は独自の計算式をもとに、各ジャンルの“成功指数”を算出してランク付けした。
まずゲームジャンルについては、「ターン制ストラテジー」「RPG」「建設」「アドベンチャー」「シミュレーション」などのタグの作品が上位に位置している。また、「ローグライク」よりも「ローグライト」の作品の方が比較的売れている模様だ。一方でゲームのテーマに関しては、「高難易度」「物語性」「雰囲気」「かわいい」といったタグの作品が人気のようである。

この調査結果を受けて同氏は、ドット絵ゲームにおいては、「ターン制」「RPG」が特に人気の組み合わせだと指摘。また「高難易度」のゲームは、たとえば「かわいい」ゲームよりも収益が高くなる傾向があるという。このほか、「デッキ構築」「カードゲーム」もドット絵との相性が良く、さらに「ローグライク」や「ローグライト」と組み合わせたものも含め、最近のトレンドのひとつになっているとした。
逆に、ドット絵との組み合わせにおいて成功指数の低いタグはというと、「インタラクティブフィクション」や「精神的恐怖」「ビジュアルノベル」「感動的」「SF」「中世」などが挙げられる。また、「シングルプレイヤー」が上位に位置しているのに対し、「マルチプレイヤー」がかなりの下位に沈んでいる点も注目だろう。リリース数も「シングルプレイヤー」の方が8倍ほど多い。

Brown氏による調査結果は、どういったドット絵ゲームが成功しているのか、その傾向が垣間見えるものとなった。ただ、人気のあるドット絵ゲームは、そのドット絵自体のクオリティが高いことが共通点として挙げられ、これはデータでは表せない。そのため、相性の良いジャンルを組み合わせたゲームを作れば成功するという単純なものではないと、同氏は述べている。
また同氏は開発者に対し、タグ付けの順番が重要だとコメント。ゲーム内容を正確に表すタグを選ぶことはもちろん、直感的に理解しやすい順番でタグを付けて重み付けをすることが大事だそうだ。このほか、ドット絵には人気はあるが、市場としては3Dグラフィックゲームの方が開拓できる可能性がはるかに高いとも述べている。
同氏の調査では、ほかにも自主販売とパブリッシャーを利用した場合の比較など、さらなる深掘りも実施されている。先に紹介したデータの詳細を含め、詳しくは当該ページをチェックしてほしい。
