とあるゲーム開発者、Steamの収益分配率に対し愚痴こぼす。たくさん売れなかった場合には、Valveの取り分が開発者よりも多くなる可能性ありとの試算


とあるインディー開発者が、Steamでのゲーム販売における運営元Valveとの収益分配率について、Valveの取り分が高すぎると不満の声を上げている。その中で、「最低50万ドルは稼がないと、開発者はValveよりも多くの利益を得られない」と試算したことで注目を集めているようだ。海外メディアGamesRadar+が報じている。

そのインディー開発者は、『The Falconeer』や『Bulwark: Falconeer Chronicles』といった作品を手がけ高い評価を得ているTomas Sala氏だ。BAFTA(英国アカデミー賞)にノミネートされたこともある著名デベロッパーである。

『Bulwark: Falconeer Chronicles』


Steamにてゲームが売れた場合、開発者はその収益の70%を受け取り、残る30%を手数料としてValveに支払う。また、ゲームの収益が一定以上に達すると収益分配率が調整され、たとえば1000万ドル(約14億円)以上になると75%/25%というように開発者の取り分が増える仕組みになっている。

これに対しSNS上で、Valveはむしろ一定以下の収益の場合に開発者の取り分を引き上げれば、小規模なインディー開発者を助けることができるのではないかという議論が浮上。Tomas Sala氏はこのコメントを引用しつつ、賛同するかどうかは明言しなかったが、そもそもの30%というValveの取り分設定は古臭い慣習であり、引き下げるべきだと主張した。

Sala氏には、Valveは儲けすぎだとの考えがあるようで、収益分配を経て開発者がValve以上の収益を得るには、一般的には少なくとも50万ドル(約7200万円)あるいはそれ以上を売り上げる必要があると指摘。これはパブリッシャーがついている場合を想定しており、同氏は一例として試算を投稿している。


Sala氏は、あるゲームが75万ドルを売り上げた場合として大まかに試算。そこから25万ドルをValveに支払い、15万ドルをパブリッシャーが投資分として回収する。そして、残った35万ドルを開発者とパブリッシャーが半々で分け合い、開発者には17万5000ドルが残るとした。すなわち、開発者の取り分はValveよりも少ないかたちとなる。

パブリッシャーが関わる部分やその契約内容で大きく左右されるようにも思えるが、Sala氏は平均的な一例として紹介したとのこと。また、パブリッシャーが15万ドルを回収して開発費がペイされたとも解釈できるが、多くのインディー開発者はその3倍以上を費やしているものだと同氏は説明している。

この試算に対しては、収益分配率においてValveの30%は取りすぎだとSala氏に賛同する意見もあれば、巨大なユーザーベースと充実した機能をもつSteamにはそれだけを支払う価値があるとする意見も聞かれる。また、パブリッシャーの取り分に関してはValveの関知するところではないため、まずはパブリッシャーとの関係を見直すべきではないかという指摘もある。


寄せられた反論の中には、Valveは大きな投資をしてSteamを構築・運営しており、30%の取り分は妥当だというものもある。これに対しSala氏は、Valveはすでに投資分の1000倍は回収しているだろうとコメント。また、Steamの広告プラットフォーム的な価値について指摘する意見に対しては、Valve自身が広告としての役割を否定しており、いずれにせよ開発者は多くの労力とお金を使って売る努力をしなければならないと返答している。

開発者とストア運営者の収益分配率70%/30%というのは、業界内では一般的な設定である。ただ、Sala氏のように負担が大きいと感じる開発者は少なくないようで、後発のEpic Gamesストアでは88%/12%と開発者の取り分を増やして注目された。また過去には、収益分配率などを巡り開発者がValveを訴えたこともあったが、裁判所はSteamのプラットフォームとしての価値に見合った設定であるなどとして訴えを棄却している(関連記事)。

なおSala氏は、Steamそのものは素晴らしいプラットフォームであると述べている。ただ、開発者にとってはお金のかかるプラットフォームでもあり、収益分配が妥当かどうかを議論することがあっても良いのではないかと呼びかけている。一方で同氏は、Valveが途方もない収益を得ていることを考えると、インディー開発者が何を思っているのかなどValveは気にしていないだろうとも述べ、諦めムードの様子である。