『アリス マッドネス リターンズ』などを手がけたSpicy Horse上海スタジオが閉鎖。心機一転し新たなビジネスを目指す
創始者であるAmerican McGee氏は、7月22日付けでSpicy Horseの上海スタジオを閉鎖したことをTwitterにて発表した。上海スタジオはSpicy Horseの中核であり、事実上デベロッパーとしての機能が失われたと考えられるだろう。Spicy Horseブランドは今後も存続し続けるようで、今までリリースしたタイトルのオンライン環境を維持しつつ、新たなビジネスを模索するとMcGee氏は表明している。
https://twitter.com/americanmcgee/status/756643061204152320
Spicy Horseは『アリス イン・ザ・ナイトメア』の生み親とされるMcGee氏が中心となり中国・上海に設立されたスタジオだ。欧米の著名クリエイターが、ゲーム文化としてまだ発展途上の中国に会社を立ち上げるというのは異例のことで、当時は大きな注目を浴びた。その注目に応えるように、Spicy Horseは東洋と欧米文化の融合を目標に掲げ、続編となる『アリス マッドネス リターンズ』を代表に、数々の個性豊かな作品を生み出してきた。中国市場ではF2Pゲーム市場が盛り上がりを見せていたという背景もあり、近年では『Heroes Of Night』や『Critter Academy: Battle Wars』といったモバイルゲームに力を入れている。McGee氏もまたKickstarterで『アリス』シリーズの3D短編映像『Alice: Otherlands』のファンディングを成功させるなど精力的な活動を続けていた。
一方でSpicy Horseは『アリス』シリーズ以外ではこれといったヒットを飛ばすことができておらず、長い間財政難であると囁かれていた。実際に今年3月にスタジオ閉鎖が報じられたが、McGee氏はこの報道について「一部のスタッフは去ったが、スタジオは継続する。開発チームは今後F2P市場から離れる予定だ。」と否定していた。
https://twitter.com/americanmcgee/status/714950254400049153
最終的にスタジオは閉鎖に至ってしまったものの、McGee氏は「10年間という長い間、欧米のインディースタジオとして、中国からゲームを発信してきたことを誇りに思う」と前を向いている。氏は、まだまだクリエイターとして活動を続けていくようで、インディーゲームの開発、Spicy Horseブランドでのビデオコンテンツの作成、海上でひとりゲーム開発をおこなうガチンコゲームジャム「Pirate Jam」の開催などさまざまな計画を持っており、それらの実現に意欲的だ。実際すでにMcGee氏は、計画の実現にむけてPatreonを開始し次なる動きを見せている。Patreonはプロジェクトごとの投資を目的としたKickstarterとは異なり、クリエイターに対する投資に視点を当てていて、熱狂的なファンを抱えている氏にはうってつけのクラウドファンディングであると言えよう。
また、ファンが最も気になっているであろう『アリス』シリーズの今後についても言及されている。氏は、同シリーズはあくまでElectronic Artsに知的財産があり、今回の閉鎖はシリーズの存続になんら影響を及ぼさないことを明かし、氏を含めたSpicy Horseに所属していたシリーズ中核スタッフは今後も続編の開発の可能性を模索していく姿勢を見せている。どんな時代でも“フロンティア”を探し続けたいと常々インタビューで語っているMcGee氏。次なる航海はどこへ向かうのだろうか。