携帯ゲーム機型のPC「SMACH Z」がKickstarterキャンペーン開始、トリプルA級タイトルも動作する?

 

携帯ゲーム機型の小型PC「SMACH Z」を開発するSMACH Teamは、同製品のKickstarterキャンペーンを開始した。SMATCH Zは、携帯ゲーム機のようなサイズ感でありながらトリプルA級タイトルが動作するという携帯型ハードウェアで、以前は「Steam Boy」という名前で知られていた。ただしSMATCH Zは「Steam Machine」シリーズの製品ではなく、あくまでSMACH Teamが独自に手がけるハードウェアになっている。

同プロジェクトは2014年からスタートしており、昨年冬に最初のKickstarterキャンペーンに挑戦したが、初期目標額が90万ドルと高く、また試作品ができあがってないこともあり、成功には至らなかった。その後、開発チームは沈黙を貫いていたが、今年7月に再始動を宣言。gamescom 2016にてプロトタイプを展示し、昨日から2度目のKickstarterキャンペーンを開始した。前回プロジェクトが再始動したことをお伝えした際にスペックの概略を記載したが、今回Kickstarterキャンペーンにともなって詳細が判明したのでもう一度整理したい。

https://www.youtube.com/watch?v=AgppMAo1-V8

CPUは既報どおりAMDの組み込み型SoC Merlin Falcon RX-421BD 2.1GHzが採用され、内蔵されているiGPUはRadeon R7の800MHz。RAMはDDR4の4GBで、ストレージは64GBとなっている。バッテリーの駆動時間も5時間と以前と変わらず。Blue Tooth接続やHDMI端子による出力にも対応している。通常版とは別のProモデルではRAMが8GB、ストレージが128GBにアップグレードされ、フロントカメラ搭載、LTE回線に対応するようだ。

OSは、本体を注文する際にWindows 10かSMACH Z用にカスタマイズされたLinuxかを選択できる。Windows 10を選べばSteam以外のブラウザゲームやMMOタイトルを遊ぶことができるが、完全に最適化されているわけではないので、Linuxのようにスムーズに使うのは難しいとのこと。

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入力操作に関しては、両端のトラックパッドや左下に3Dスティックがある一般的なコントローラ配置は変わらず。しかし注目したいのは、両側についているトラックパッドに、好みのカスタマイズができる「Z-Pad」を採用している点だ。たとえば左側のトラックパッドを外して、3Dスティックや十字キーをはめ込むことが可能。右側のパッドにも、スーパーファミコンやゲームキューブといった旧ハードを彷彿とさせるボタン配置を設定することもできる。ただしZ-Padにはめられるこれらのキットは別売りとのことだ。

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肝心のゲーム性能についてだが、1度目のKickstarterキャンペーンの時からスペック不足については厳しく指摘を受けており、その影響もあってかSMACH Teamは具体的にどのタイトルがどれぐらいのフレームレートで動作するかを公開している。Windows 10で動かした3Dタイトルとしては、『Metro: Last Light Redux』が解像度720pのグラフィックレベルhigh設定で35FPS程度、『Overwach』が同じく720pのmedium設定で30FPS程度、『The Elder Scrolls V: Skyrim』は720pのhigh設定だと25FPS程度で動くとのこと。全体的に720p出力なら30FPSが出るぐらいのスペックであるとされている。またGFLOPSをベースに他のコンソールと比較するグラフを見ると、Xbox OneとWii Uの中間程度に位置付けられている。なお、こうした検証や比較のグラフはあくまでも現時点で予想する製品版での数字であるとされており、確定ではないという。

またgamescom 2016では「デカくてゴツい」とたびたび言及されていたゲーム本体のデザインも大幅に見直されているようだ。グリップ部分を持ちやすくし、トラックパッドのサイズも40mmから35mmになり、不評だった厚みもかなり抑えられている。それでもWii Uのゲームパッドより少し小さい程度なので、ある程度の大きさがある。「ファンが搭載されてない以上は熱がこもるのでは」という問題は、最新技術の銅製ヒートシンクによって冷却されると述べている。現段階では確定した話はないものの、今後はストリーミングでのプレイやエミュレーターへの対応、HDMI端子を経由したテレビ出力なども搭載するアイディアがあるそうで、プロジェクトへ野心を見せている。

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今回のKickstarterキャンペーンはより具体性のある情報が提示されていることもあってか、すでに19万ドル以上の資金が寄せられている好調っぷりだ。目標額が前回の約1/4である25万ドルということもあり、悠々とゴールを達成するだろう。ただ、ゲームの動作が確認されているWindows 10に正式対応するには35万ドルが必要。開発チームは「額が集まれば集まるほど可能性は増える」と伝えている。

徐々に全貌が明らかになっていくSMACH Z。gamescom 2016の体験会では『FEZ』がスムーズに動かないなどソフトウェア側の最適化が進んでおらず、そういった点ではやや不安が残るが、開発チーム側も課題を認識し取り組んでいる様子だ。

SMACH Zは通常版が299ドル、Proモデルが499ドル。製品の出荷はバッカー向けには来年4月、一般向けには2017年末から2018年初頭を予定しているとのことだ。


国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)