スクエニHD、和田氏が率いた「シンラ・テクノロジー」の解散を正式発表。クラウド・プラットフォーム事業展開するも資金調達の目処が立たず


株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスは、100パーセント子会社の「Shinra Technologies, Inc.」を解散すると発表した。同社の子会社である「シンラ・テクノロジー・ジャパン株式会社」も解散される見込み。すでに同社の公式サイトも閉鎖されている。「シンラ・テクノロジー」は和田洋一氏がトップに立ち、クラウド・プラットフォーム事業の展開を目指して2014年3月に設立されていた。

解散の理由についてスクエニHDは、「クラウド・プラットフォーム事業者として、追加の事業資金の第三者からの調達を目指して参りましたが、その目処が立たなかったことから、解散することと致しました」と説明している。子会社である「シンラ・テクノロジー・ジャパン株式会社」は2016年6月30日に、「Shinra Technologies, Inc.」は2019年3月31日に清算が結了する見込み。約20億円程度の特別損失が解散にて計上される予定で、11億円については2016年3月期第2四半期の連結決算にてすでに計上しているという。

なお「シンラ・テクノロジー」は開発スタジオとの綿密な提携により、クラウドゲーミングに適したゲーム作品のリリースも視野に入れていた。海外では『Prey 2』のHuman Head Studios、『Blacklight Retribution』のHardsuit Labs、『Republique』のCamouflajが同社の下で新作ゲームを開発していたと発表されている。これら3スタジオが開発していた作品が今後どうなるのかについては、現時点でアナウンスは無い。

参考記事: ゲームストリーミングサービスの「OnLive」がサービスを閉鎖、資産をソニーが取得

クラウドゲーミングとは、プレイヤーが所持するゲームハード上ではなく、クラウドサーバー上でビデオゲームを動作させプレイするサービスのことだ。専用の機器やPCなどの端末を通じて映像を表示しプレイすることが可能で、マシンの性能に制限されず自由にゲームを遊ぶことができるとされていた。2010年以降、GaikaiやOnLiveなどといった企業が中心となってクラウドゲーミング市場は盛り上がりを見せるかと期待されていたが、後に両者はソニー・コンピューターエンタテインメントによって買収。現在、主だったクラウドゲーミングサービスは、そのソニーが展開中の「PlayStation Now」のみとなっている。

プレイヤーの手元にあるハードウェアの性能・仕様に制限されずゲームがプレイ出来ると謳われてきた「クラウドゲーミング」だが、ストリーミングを安定させるための巨大なデータセンターなど、膨大なインフラ費用が必要になる問題は以前より指摘されてきた。また過去にOnLiveの設立メンバーが語ったように、スマートフォンのタッチパネルなど異なる操作に対応させるための最適化作業にも、多大な労力とコストが必要になる。プレイヤー側にとっては、現在まで各種のクラウドゲーミングにて提供されてきたラインナップや価格がそれほど魅力的ではないというのも問題だろう。またサーバー上でプレイするため、ラグなどの問題も常につきまとう。