サムスン、「画面ド真ん中から折りたためる」ゲーム機のコンセプトモデルを発表。丸ごとふたつ折りでポケットサイズ

スペイン・バルセロナで開催中の世界最大級のモバイル技術見本市「GSMA Mobile World Congress」(以下、MWC 2025)にて、Samsung Display(以下、サムスン)は“画面折りたたみ式”のゲーム機「Flex Gaming」のコンセプトモデルを発表した。
Flex Gamingは、7.2インチの有機ELディスプレイを搭載した携帯型のゲーミングデバイスだ。その最大の特徴は本体を折りたためること。一見するとNintendo Switchのような、ディスプレイの左右にコントローラーが付いている形状のゲーム機だ。しかし未使用時には、画面の中心から本を閉じるように折りたたむことができる。これにより持ち運び時のサイズを小さくし、なおかつ未使用時のディスプレイを保護できる。
また、コントローラーの形も独特だ。本体の左右にはジョイスティックと十字キーがあり、Nintendo Switchと同じように対角線に配置されている。ただ、これだけでは折りたたんだ時にジョイスティックが邪魔になってしまう。そのため、十字キーの中心にドーナツ状の穴があいており、折りたたんだ時にジョイスティックがすっぽりと収まるようになっている。詳細なスペックは公開されていないものの、見本市らしい斬新な展示品となっている。なお、IT分野に特化したメディアであるCNETが投稿した下記の動画では、実際にFlex Gamingを開閉する様子が確認できる。
サムスンは以前にもテクノロジー見本市「CES 2023」にて折りたたみ式のゲーミングデバイスを展示していたが、こちらはコントローラー部分は固定で、挟み込まれたディスプレイのみ折りたためる仕様となっていた。ただこれでは折りたたんでも大幅な小型化はできない。そこから約2年が経ち、今回のデバイスでは十字キー部分に穴をあけるという大胆な方法で本体を丸ごと折りたためるよう改良したというわけだ。また、折りたたみ時にジョイスティックが隠れることで、持ち運び時のスティックの摩耗や故障の防止に役立つ可能性もある。
サムスンは折りたたみスマホ「Galaxy Fold」シリーズをはじめ、ディスプレイの折りたたみ技術に定評のある企業だ。今回のFlex Gamingも特許を取得しているという。サムスンとしては先進技術の発表だけでなく、この技術を活用して、いずれはゲーム業界に参入しようという意図もあるのかもしれない。

近年の携帯型ゲーム機は性能の向上に伴い、大型化が進んでいる。たとえばFlex Gamingと近い画面サイズのNintendo Switchは横幅が約24cm、Steam Deckは横幅が約30cmある。小型版のNintendo Switch Liteでも、横幅は約21cmだ。ひと世代前の携帯型ゲーム機と言えるニンテンドー3DSの初代モデルは横幅が約13cmだったので、それと比べて約1.5〜2倍ほどの長さとなっている。なお任天堂は3DS発売後、大きな画面サイズを望む声に応え「3DS LL」などの大型版を展開。ただ当然ながら本体サイズも大きくなった。このように長年、画面サイズや性能と本体の小型化はトレードオフの関係にあったわけだ。ちなみに今年1月に正式発表されたNintendo Switch 2も、Nintendo Switchよりも一回り大きくなることが発表映像で示唆されていた。
携帯型ゲーム機には外に持ち出さずとも家で寝ころびながらゲームができるという部分に需要もあるだろう。また大型化に伴って、画面やコントローラ部分が大きめになることで、本格的なゲームを楽しめるという利点もある。しかし持ち運びを考える場合には、かさばってしまうデメリットも生じる。
今回のFlex Gamingでは画面ごと折りたたむという発想で、画面サイズを確保しながら本体を小型化できるというアイデアが示された。穴のあいた十字キーの操作感や、子供も触るゲーム機での折りたたみ部分の耐久性など懸念点はあるものの、今後の研究や実用化に向けた動き次第では、携帯型ゲーム機の新たな方向性として選択肢となりうるかもしれない。
他にもMWC 2025のサムスンブースでは、ブリーフケースを開くと約18インチのディスプレイが展開される「Flexible Cabinbag」や、映像の演出に合わせて画面そのものが手前に飛び出てくる「Stretchable」ディスプレイなど、ディスプレイに関する多数の先進技術が展示されている。ディスプレイや映像技術の進化により新たな遊び方のゲームが登場する例もあり、そうした技術が今後ゲームにも活かされるかどうかにも注目が集まる。