米労働組合SAG-AFTRAがゲーム声優のストライキを承認、金のなる木に成長した業界で改善されない待遇に反旗を翻す


米国の労働組合SAG-AFTRA(Screen Actors Guild‐American Federation of Television and Radio Artists)は、ゲーム業界で活躍する声優の待遇改善を目指すインタラクティブメディア協定ストライキ承認投票(Interactive Media Agreement Strike Authorization Referendum)が、過半数の賛成票を得て可決されたと発表した。協定は2014年12月31日で失効しており、今年2月と6月の再交渉で決裂して以降更新にはいたっていない。今回、急成長するゲーム業界でなお改善されない待遇見直しを求めて、パブリッシャーとの交渉テーブルを差し戻すために、著名人をはじめ多くのゲーム声優が立ち上がった形だ。

 

声の抑止力

『Deus Ex』 - Adam Jensen Image Source: Deus Ex Wiki
『Deus Ex』 – Adam Jensen
Image Source: Deus Ex Wiki

インタラクティブメディア協定ストライキ承認投票の結果は、組合メンバーがただちにストライキを実行することを意味しているわけではなく、委員会にストライキの実行を発表する権限を与えるというもの。可決には75パーセントの賛成票が必要とされていたが、96.5パーセントという過半数で承認された。この結果を携えて、委員会はゲーム業界で働く俳優および声優を代表して、交渉会議の差し戻しを求めるとともに、公正な解決を引き続き迫る構えであるとのこと。

海外メディアVarietyによると、協定の締結先となっているのはActivisionやElectronic Arts、Disney、Warner Bros.ほか、ゲーム作品の出演に声優を雇用する多くのパブリッシャーが名を連ねている。今回のストライキ承認プロセスは、『Deus Ex』でAdam Jensenを演じるElias Toufexis氏や、『バイオハザード』のウェスカー役D.C. Douglas氏、『Mass Effect』でFemshep役を務めるJennifer Hale氏といった、多くの著名人に支持されている。一連のムーブメントはTwitterでも脚光を浴び、「#PerformanceMatters」「#iAmOnBoard2015」というハッシュタグもトレンドの一つになっている。

先月には、SAG-AFTRAが次のような声明を出していた。「メディアの状況を通してみれば、追加報酬という前例は十分にあります。成功した映画やアニメ、シリーズドラマ、テレビCMなどに出演した際には追加報酬が発生して然るべきです。しかし、常に当てはまるとは限りませんでした。声を上げたパフォーマーたちは、今日当然に与えられるはずの未払い金を要求して戦う勇気がありました。そして、ともに立ち上がったからこそ勝ち取ることができたのです」。

『Mass Effect』 - Femshep Image Source: BioWare Forum
『Mass Effect』 – Femshep
Image Source: BioWare Forum

このように、SAG-AFTRAはゲーム業界におけるボーナスは決して珍しいことではないと主張している。昨年、ActivisionのCOOが手にしたボーナスは397万862ドル、Electronic Artsは役員へ150万ドルの追加報酬を支払っていたという。これに対し、労働組合はインタラクティブメディア協定の主な提案の一つとして、200万本のセールスを記録した場合に出演声優にボーナスを付与し、それ以降は400万本、600万本、800万本と、200万本単位で売上を伸ばす度に追加報酬を支払うことを要求している。

エンターテイメント分野の中で急成長を続けるゲーム業界はいまや莫大な経済効果を生み出しており、破竹の勢いで拡大していく市場規模はもはや宝の山といえる。その発展を支える全ての功労者に対して、公正なパイの再分配が求められている。