『ポケモン 赤緑』のRTA in Japan走者、マルチタスク超人として恐れられる。赤も緑もプレイするし、コメントも読むし乱数調整もする

Image Credit: RTA in Japan Summer 2024 on Twitch

「RTA in Japan Summer 2024」にて8月13日、『ポケットモンスター 赤・緑』(以下、ポケモン赤緑)のRTAがおこなわれた。150種類のポケモンを図鑑に登録するというレギュレーションのもと、RTAプレイヤーのずのう氏がプレイ。本RTAがほかの『ポケモン赤緑』RTAと違うのは、『ポケットモンスター 赤・緑』の2作品をずのう氏がひとりで、しかもそれぞれ片手で同時並行してプレイするという、マルチタスクなRTAであるということだ。

『ポケットモンスター 赤・緑』は、ゲームボーイ向けに1996年に発売された『ポケットモンスター』シリーズの初代の作品だ。本作は、ポケモンマスターを目指す主人公が、ポケモンを捕まえて育成しながら、カントー地方を冒険していく。チャンピオンを倒してポケモンマスターを目指すという目的のほか、作品内に存在するポケモンを捕まえることでその情報が登録されていくポケモン図鑑を完成させることも目的のひとつだ。


今回、ずのう氏が挑戦したRTAは「Catch ‘em all Gen 1 Glitchless」というカテゴリで、予定タイム6時間のうちに、グリッチを使わずにポケモン図鑑の完成を目指すという内容である。『ポケモン赤・緑』には、全151種類のポケモンが存在。そのうち、現在はゲーム内で正式な手段では入手できないミュウを除いた150種類をポケモン図鑑に登録して賞状をもらうまでのスピードを競うというカテゴリだ。今回のプレイでは、『ポケモン緑』にて、図鑑完成を目指すこととなった。

ただし、『ポケモン』シリーズは、それぞれのバージョンによって出現するポケモンが違うため、『ポケモン緑』のみをプレイしているだけでは図鑑は完成しない。『ポケモン赤』でしか捕まえることができないポケモンを入手し、ポケモン交換で『ポケモン緑』に送信する必要がある。ほかにも、通信交換でしか進化しないポケモンも存在する。そこで、ずのう氏が考えた手法が、ひとりで同時に『ポケモン赤・緑』を両方プレイし、それぞれで必要なポケモンを自分で入手して捕まえようという方法だ。

ずのう氏は、用意された2枚のディスプレイで、各画面に『ポケモン赤・緑』を映してプレイ。その両手には、SFCのコントローラーを改造した、左右それぞれの片手プレイに適しているというコントローラーが握られている。そんなかたちで淀みなく両ソフトを進行していく姿は、コメント欄では4つの脳をもつポケモンであるメタグロスなどに例えられていた。なお、ずのう氏としては、このプレイスタイルは「カイリキーポーズ」であるそうだ。


ずのう氏の驚くべきところは、両手でゲームの進行をしつつ、さらにほかの作業も同時に進行しているという点だ。RTA in Japanのプレイヤーを撮影しているワイプに映らない部分で、ずのう氏は乱数の状況を確認できるようにしたツールを使用。本ツールは、足元のペダルで操作しており、これで2作品の乱数を調整しているそうだ。また、どのポケモンを図鑑に登録したかを管理するツールも用意し、「登録、〇〇」とポケモンの名前を発声することで、音声認識で登録。チェックシート形式の表を見ることで、どのポケモンをゲットしたのか確認できるようになっている。両手が埋まっていても、足や口も余さず使ってカバーできる環境を、自身で用意しているわけだ。さらに、賑わうコメント欄をチェックして、ウィットに富んだコメント返しやゲームの解説までおこなうというマルチタスクぶりを発揮。本気のRTAをプレイしつつも、エンタメ的にも楽しませてくれるRTAをおこなっていた。


そんな常人にはできないであろうというRTAに、視聴者からは「深夜にふさわしいホラー枠」といったコメントが寄せられた。尊敬を通り越して恐怖さえ感じるといったコメントだろう。なお、本RTAの配信枠においては、RTA in Japan運営側の対応によって、現在の捕獲数をカウントする特別な枠が配信画面内に設置。RTA中にその枠の存在に気づき、運営側の気遣いに感謝したずのう氏の「山田くん、10ビッツ持ってきて」という“笑点”じみた呼びかけによって、本RTAは事あるごとに10ビッツが飛び交う、深夜でも大賑わいのRTAとなった。

なお、ゲームプレイについては、『ポケモン緑』は4時間29分30秒でエンドロールが終了しつつも、図鑑が完成していないためそのまま進行。エンドロールを見た後にしか入手できないミュウツーの捕獲や、後回しにしていたポケモンの捕獲を続けていた。一方、『ポケモン緑』でポケモンマスターを目指していた間、『ポケモン赤』は図鑑完成を目指すためのサポート役として、ゲームを進行。オーキド博士からもらうことができるヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネと、タマムシシティでもらえるイーブイから進化するブースター、シャワーズ、サンダースは、1プレイにつき1匹しか選択できないため、『ポケモン赤』はまずヒトカゲとブースターを『ポケモン緑』に送信した後、改めて最初からプレイするかたちとなった。

その後、5時間6分33秒時点で、ほぼウイニングランとなる通信交換タイムに突入し、『ポケモン緑』側で図鑑150匹を達成。その後、5時間30分14秒でタマムシシティにて図鑑完成を報告して賞状が表示されてタイマーストップ。Speedrun.com上での自身の記録となる5時間22分32秒と記録には届かなかったものの、一発勝負で見事完走を果たした。なお、最後のタマムシシティへ移動する際は、『ポケモン赤』を操作する必要がなくなったため、本RTAで唯一の両手でひとつのコントローラーを操作してプレイする、ずのう氏の珍しい姿が見ることができる区間となっている。


ちなみに、ずのう氏は「RTA in Japan Summer 2024」以前にもRTAイベントに参加しており、今年1月に開催された「レイドRTAマラソン」でも『ポケモン赤』同時プレイRTAを披露。その際には、右手と左手によるレース形式で、RTAをおこなっている。こちらも同氏のウィットに富んだトークと恐るべき両手同時プレイというマルチタスクぶりが光るRTAとなっているので、ぜひチェックしてほしい。


RTA in Japan Summer 2024」は、8月15日まで開催中。