MSの「UWP戦略」により広がる波紋。Xboxはパーツ交換式にはならないと補足、Epic Gamesヘッドは「PCゲーム市場の独占」と強い不快感


MicrosoftのXbox部門ヘッドPhil Spencer氏は、先週語ったXboxの”ハードウェア・アップグレード”に関する声明を補足した。Spencer氏はメディアブリーフィング「Xbox Spring Showcase」にて、Xboxが世代ごとに固定された家庭用ハードと言うよりも、柔軟にハードウェアの革新を追えるPCやスマートフォンに近い存在になることを示唆していた。ただし実際にXboxへとアップグレード機構が盛り込まれるのか、その場合どのようにユーザーは利用できのかなど、明確なプランについてはイベント中には触れず。結果として様々な推測や予想が広がり、これに対しあらためてSpencer氏が発言を明確にした流れだ。

ハードウェア・アップグレードは長期的なプラン

Xbox LIVEディレクターLarry Hryb氏のポッドキャストに登場したSpencer氏は、「私が自分のコンソール(家庭用ハード)を開いて各パーツをアップグレードするつもりかって?それは我々のプランじゃないよ」とコメントし、PCのように各パーツをアップグレードする機構をXboxに盛り込む予定は無いことを明らかにした。「コンソールには特別なところがあるんだ。家電のようなデバイスを購入し、TVに繋げば動作する。すべてのコンソールにドライバーをセットして売るようなことはしないよ」。

Spencer氏によれば、今回のXboxのハードウェア・アップグレードに関する発言は、現時点では長期的な視点における声明であるという。基本的に、現在のコンソールでは世代交代を待たないと大きなハードウェア・アップグレードはできないが、そのあいだに起きたイノベーションを世代のサイクルを待たず取り込むことが今後できるようになるかもしれないと、Spencer氏は遠くを見据えている。そしてSpencer氏は「そういったことが可能になる、そして恐らくそれが始まるまで7年や8年も待つ必要はないだろう。だが現時点で、我々はハードウェアを発表していない」とも説明を続けている。今回の声明にて明らかにされた戦略が、短・中期的には展開されないことを示唆した。

UWPで家庭用ハードの先方互換も、PCゲームでは重鎮が独占を警戒

Microsoftは現在、Windows 10向けに展開されているアプリケーション開発環境「ユニバーサルWindowsプラットフォーム(通称、UWP)」を推し進めており、ビデオゲームの分野においてもこの導入を進めている。『Gears of War: Ultimate Edition』『Quantum Break』『Rise of the Tomb Raider』。UWPで制作したゲームは、スペックさえ許せばWindows 10マシンとXbox One、あるいはタブレットやWindows Phoneなどで動作させることができる。ハードウェア・パフォーマンスに関する制限など疑問は残るものの、ゲームの開発環境を「UWP」にすれば、コンソールの後方互換だけでなく”先方互換”も対応可能になるというのがSpencer氏の弁だ。

この「UWP」の構想を実現するには、Spencer氏が語るようにまだまだ長い道のりが必要だ。「Unity」や「Unreal Engine」など容易にマルチプラットフォーム対応のゲーム開発エンジンが手に入るなか、開発環境として「UWP」がデベロッパーたちに求められるようになるのか。また「UWP」で制作されたタイトルはWindows Store(およびXbox LIVE)に紐付けられており、Steamなどで販売する際にはデベロッパーはSteam API上であらためてゲームを構築しなければならない。Epic Gamesを率いるTim Sweeney氏は、このストア専売と30パーセントのロイヤリティがMicrosoftに入る仕様などに関して海外メディアThe Guardianに記事を寄稿し、「MicorosoftはPC上におけるゲーム開発を独占しようとしている。我々は戦う必要がある」と強い拒否感を示している。

Epic Gamesはゲーム開発エンジン「Unreal Engine 4」をデベロッパー向けに提供しており、Tim Sweeney氏の記事はMicrosoftという巨人が新たに生みだした開発環境「UWP」による囲い込みを防ぐため、仲間を募ったとも捉えることができるだろう。だが先日の記事でも伝えたように、「UWP」で開発されたWindows 10版『Rise of the Tomb Raider』では、V-Syncがオフに出来ないといった当たり前のサポートにも事欠いている事情が報告されている。まず単純に開発環境としての整備が進められないと、7年から8年後には「Games for Windows Live」と同様の運命を辿ることとなるかもしれない。