基本プレイ無料「街」オープンワールド『NTE』には“やたら作り込まれた刑務所”が存在する。6日間拘束され、スプーンで壁掘って脱獄したりする、なぜ

ところが本作を遊んでいると、ある一点だけが妙に引っかかる。犯罪と、それに対する罰の描写が、異様なほど本気なのだ。

Perfect World Gamesがパブリッシングを担当し、Hotta Studioが開発する『NTE: Neverness to Everness』(以下、NTE)は、異常と日常が隣り合わせに存在する大都市を舞台にした作品だ。その作りは堅実で、都市型オープンワールドRPGとしての土台はしっかりしている。ところが本作を遊んでいると、ある一点だけが妙に引っかかる。犯罪と、それに対する罰の描写が、異様なほど本気なのだ。

通行人への暴行や車の窃盗といった犯罪行為は、単なるいたずらで終わらない。捕まれば刑務所に収監され、プレイヤーの実時間も奪われる拘留生活を強いられる。そしてその刑務所からは、複数の方法で脱獄が可能だ。脱獄には複数の報酬も用意されている。

結果として、およそ一週間で出られるはずの刑務所で、何度も捕まり、何度も逃げることになる。やたら作り込まれた塀の中からの脱獄が「趣味」になる。そんな奇妙な体験が、この街では自然と生まれてしまった。

本稿では、『NTE』の第2回クローズドベータテスト「共存テスト」で体験した犯罪システムと刑務所要素を通して、寄り道も本気にさせる本作の構造を掘り下げていく。

犯罪への容赦ない追跡

『NTE』は、超自然都市オープンワールドRPGだ。基本プレイ無料で、PC/PS5/モバイル向けに配信予定。本作の舞台となるのは、現代的で一見すると秩序の保たれた大都市「ヘテロシティ」だ。しかしその裏側では、突如として現実を侵食する超常現象「異象(アノマリー)」が日常的に発生していた。プレイヤーは骨董品屋エイボンの“異象ハンター”として街を巡り、戦闘だけでなく調査や謎解きを通じて、異象を収容・解決していくことになる。

第2回となる今回の「共存テスト」では多数のコンテンツが追加されており、新規車種やバイクのモーションの追加、痛車的なデザインを含む車の内装・外装のカスタマイズ、キャラクター同乗機能など、車両まわりのブラッシュアップが図られている。また、釣りや配達、麻雀といったシティライフ系のアクティビティ、一部キャラクターの自宅への招待を含む好感度システムも拡張。そして大きな追加要素として、犯罪行為に紐づく刑務所要素なども新たに実装された。

では、実際に犯罪を犯すと何が起きるのか。通行人への暴行や車の窃盗を繰り返していると、手配度が上昇し、警官が出動する。抵抗を続ければ、空飛ぶパトカー型の異象「見回りラット」まで現れ、追跡は一気に本格化する。見回りラットはミニカーのような可愛らしい見た目に反して戦闘能力は高く、警官も容赦なく発砲してくるため、あっという間に体力を削られてしまう。なお手配度が最大にまで達すると……その結果はその目で確かめてほしい。

体力が尽きた先に待っているのは、死亡ではなく逮捕だ。主人公はヘテロシティから切り離され、孤島に建てられた刑務所へと送られる。今回の「共存テスト」では、これまで罰金のみだった犯罪行為に、新たに拘留という罰則が追加された。ここから始まるのは、短いようでいて妙に印象に残る、刑務所での生活だ。

プレイヤーにも罰が下る拘留期間

刑務所での一日は、午前・昼食・運動時間・自由時間という4つの区切りで進行する。それぞれの時間帯でできる行動は限られており、次の時間に進むためには、30秒程度の時間をおとなしく待たなければならない。

ひととおり探索を終えると、やることはあまり残らない。ただ時間が過ぎるのを待つだけの状態になる。この「待ち」は、ゲーム内のキャラクターだけでなく、プレイヤー自身の実時間までも拘束してくる。真面目に待つ場合、何かを達成するわけでもなく、ただ時間を消費させられる感覚は、罰として妙に生々しい。

反省をアピールしたいなら、午前中に刑務作業を行うこともできる。刑務所内では清掃の人手が足りないらしく、どこかで見たような高圧洗浄機を使っての掃除を任される。主観視点でノズルを構え、高圧の水で汚れを吹き飛ばしていく作業は単純ながら爽快だ。頑固な汚れには洗剤を使うこともでき、青空の下で黙々と掃除をしていると、不思議と心が落ち着いてくる。

刑務作業の報酬として得られるのは、子どものお小遣い程度のファンス(通貨)にすぎない。それでも、汚れが落ちていく感触や、作業を終えたあとの静けさには、どこか癒しがある。自分の罪と向き合う時間として、この作業をロールプレイ的に受け止めるのも一興だろう。

しかし、拘留期間はデフォルトで6日間とそれなりに長い。潤沢に与えられた時間と、やることの少なさ。そんな状況に置かれた囚人が、やがて何を考え始めるのかは想像に難くない。そう、脱獄である。

やけに隙の多い刑務所

刑務作業を終え、自由時間を持て余していると、次第にこの場所が単なる堅牢な監獄ではないことがわかってくる。

たとえば自室の壁に貼られたポスターを剥がすと、その裏には脆そうなレンガの壁が隠されている。食堂に置かれたスプーンをこっそり持ち帰れば、少しずつ壁を掘り進めることも可能だ。もっともスプーンは消耗品で、いずれ折れてしまう。監視の目もあり、怪しい行動を発見されれば拘留期間は延長される。ここでは異象も派手なバトルも関係ない。あるのは看守の視線と、プレイヤー自身の欲求だけだ。脱獄にはシンプルながら緊張感のある駆け引きが用意されている。

ちなみに脱獄方法はひとつではない。腐食液で金属製の柵を溶かし、スポットライトが監視する下水道から逃げ出すルートもあれば、監視塔の鍵やシーツを集め、即席のロープを作って塀を越える謎解き寄りの脱獄もある。

中には医務室で盗んだ薬を使い、仮死状態になることで外へ運び出される“死んだふり”という方法まで用意されている。一週間程度で出られるのにここまでする必要はあるのかという疑問は残るが、できてしまうのだから仕方ない。

なお、脱獄に成功してもペナルティはない。街に戻れば再び自由に行動でき、改心して落とし物を届けることも、懲りずに暴れ回ることもできる。再び捕まったとしてもなぜか毎回同じ部屋に収監されるため、一度開けたポスター裏の穴を使って即座に脱獄することすら可能だ。ちなみに、看守に罰金を払っての釈放もできる。

少し待てば出られる刑務所に、ここまで多様な脱出手段を用意する必要があるのだろうか。それでも試したくなるのは、脱獄そのものに何度も繰り返す意味がきちんと与えられているからだ。

脱獄が「娯楽」になる

刑務所内には、不自然なほど快適な部屋に住む調達屋も存在する。探索や物々交換で手に入る鎮痛剤や週刊誌を通貨として、キャラクターの強化素材などを購入できるのだ。中でも、囚人服を刑務所以外でも着用できるようになる限定のコスチュームは、一度の収監では必要なアイテムが揃わない。アイテムコンプリートのためには何度も捕まり、何度も脱獄することが前提になる。

新しい脱獄方法を実行するたびに交換用アイテムが手に入るため、できるだけ異なる手段で塀の外へ出たほうが効率も良い。こうして脱獄は、単なる自由を得るための手段ではなく、自然に繰り返したくなる遊びへと変わっていく。

本作のやけに熱の入った刑務所は、いつしか脱獄を“命がけの行為”ではなく、“試したくなるアクティビティ”にしてしまう。気づけば筆者は、街で悪さを働いては刑務所に入り直し、その度に脱出を試みていた。

本気すぎる寄り道

刑務所に収監され、時間を待たされ、作業をこなし、そして脱獄する。振り返ってみれば、ここで体験した一連の流れは、物語上どうしても必要な要素ではない。犯罪を犯さずに街を歩き、異象を解決し、キャラクターとの関係を深めていくだけでも、『NTE』は十分に楽しい。

それでも本作は、犯罪という寄り道に対して、刑務所という「現代都市なら本来あって然るべき場所」をきちんと用意し、なおかつそこをただのペナルティで終わらせていない。拘留や待ち時間といった生々しい制限を課しながら、その裏で脱獄や刑務作業といった“遊べる余地”を与えることで、リアリティとエンタメの両立を図っているように見える。

結果として、刑務所は“一応用意された避けるべき要素”ではなく、街の別の顔に触れるための選択肢へと変わる。捕まることも逃げ出すことも、この街では「やってはいけないこと」ではなく、「やってもいい行動」なのだ。

やたら作り込まれた刑務所で、脱獄が趣味のようになる。そんな奇妙な体験が生まれるのは、刑務所が単なるペナルティではなく、「遊べる場所」として設計されているからだろう。そこには開発側の遊び心やサービス精神が感じられる。寄り道であっても手を抜かない。その積み重ねが『NTE』の手触りを確かなものにしている。この先ヘテロシティがどのような発展を遂げていくのか、期待して見守りたい。

NTE: Neverness to Everness』はPC/PS5/モバイル向けに基本プレイ無料で配信予定だ。第2回クローズドベータテスト「共存テスト」は、2月21日0時59分まで実施される。

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Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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