「Nintendo Today!」は「X(Twitter)がなくなった世界を想定しているかもしれない」との指摘。SNSがぐちゃぐちゃになってもきちんと任天堂が発信できる手段説
本アプリの意義は多様にあるかと思われるが、その意義のひとつとして「X(Twitter)がなくなった世界を想定しているのではないか」という指摘がある。

任天堂は3月28日、「Nintendo Today!」をiOS/Android向けに配信開始した。情報集積型のオウンドポータルメディアアプリだ。同アプリは任天堂情報を得られるツールであり、X(旧Twitter)がなくなった世界を想定しているのではないかという指摘もあり、海外一部コミュニティで話題となっている。
「Nintendo Today!」は、スマートフォンアプリだ。任天堂は「任天堂に関するいろいろなイベント、ゲームの情報、ちょっと楽しいコンテンツなど、毎日日替わりでお届けする、日替わりカレンダーのようなスマートフォン向けアプリ」と説明している。アプリを開くと任天堂作品にちなんだ演出と共にカレンダーが出てくるほか、直近のイベントやリリース情報、任天堂作品関連の豆知識などが表示される。表示させる情報はカスタマイズ可能。また昨晩には「ゼルダの伝説」映画情報が飛び出したように、ゲリラ的な発表もあるようだ。
現時点で、任天堂が掲げる「直接」ユーザーに届ける情報発信手段としてはほぼ完璧なツールとなっている。本アプリの意義は多様にあるかと思われるが、その意義のひとつとして「X(Twitter)がなくなった世界を想定しているのではないか」という指摘が一部のRedditコミュニティで話題になっている。
海外メディアOverkillは、任天堂が「Nintendo Today!」を使って大きなテストをしていると指摘。たとえば前出の「ゼルダの伝説」映画情報においては、アプリ経由で発信しXだけでなくRedditや多様な場所で話題になったと分析し、そのテストは成功しているとした。任天堂が自社アプリで発信するメリットとしては、さまざまなSNSにまたがって発信する必要がないことや、SNSの情勢に左右されないことをあげている。
後者のSNS情勢の変化は、深刻な問題だ。イーロン・マスクがTwitterを買収しXへと改称。進化した部分はあるものの、誤った情報が錯綜することが多くなり、差別的な言動が以前より罰せられなくなったり、あるいは公平性や公共性よりもイーロン氏の個人的な都合や事情が優先されるようになったりと、危うさが増している。
任天堂は、外的要因に左右されることを特に嫌う会社である。自社主導主権であることを望み、Nintendo Directの「直接」をテーマとした情報発信は、端的な例である。任天堂はさまざまなSNSアカウントを保有しているが、そのSNSにいずれの形にしても依存することになる。任天堂のXフォロワーは、日本版が508万、アメリカ版が1418万、ヨーロッパ版が70万。そもそも公式発信はキャッチしており、あくまでXをひとつのアンテナとしてフォローしているだけのユーザーも多いかと思われるが、Xが終わればこれらのユーザーへの発信方法が途絶えることになるのも事実だ。

またアプリ内の動画がYouTubeを利用したものではなく、自社での動画プレイヤーが用意されていることも特徴である。以前Googleの従業員がYouTubeにあげられた任天堂の映像をリークしたという報道もなされており、こうしたリスク対策の可能性も垣間見える。
【UPDATE 2025/3/29 17:00】
動画に関する言及を追記
公式サイトという発信方法はもちろんあるが、「サイトに見に来ないと伝えられない」というデメリットもある。スマホアプリでは、よりギミックが詰められるし、通知なども含めてユーザーが能動的に情報をとりにこずとも、情報を伝えられる手段ではある。「Nintendo Today!」を使えば、SNSに依存しないかたちで、正しく深く情報を定期的に伝えられるだろう。
もちろん、前述したように「Nintendo Today!」は多義的なアプリであり、目的はひとつではなく、こうした推測は仮説に過ぎない。ただ、SNSプラットフォームは盤石なものではなく、運用にはリスクもあることを踏まえると、自社発信の手段が強化されるのは自然ではある。SNS運用は今後継続されるだろうが、少なくとも、「Nintendo Today!」は現時点で「任天堂の情報を、より速く正確に豊かに」得られる場所であり、そうした運用をされていくことにはなりそうだ。同アプリは単純にいろいろと楽しげな要素が入れられているので、まずはインストールしてみてもいいだろう。
「Nintendo Today!」は、iOS/Android向けに無料配信中である。