ディスクではなくカートリッジ式、ネット接続は無し。“Atari Jaguarの型”で蘇る新型ゲームハード「Retro VGS」が海外で始動【UPDATE】

据え置きゲームソフトのメディアはすでにディスクへと完全移行し、次なる世代ではダウンロード購入用のHDDのみが搭載された機体が登場するのではともささやかれている昨今。この時代の流れに真っ向から立ち向かうプロジェクトが海外でひそかに進行している。カートリッジ式の新型ゲームハード「Retro VGS」だ。

【UPDATE 9/30 17:40】プロジェクトリーダーのMike Kennedy氏は、カートリッジ式ゲームハード「Retro VGS」のIndiegogoキャンペーンを早期に終了すると発表した。キャンペーン開始から数日が経過していたが、現時点でまだ初期目標額の3パーセントに当たる6万ドル程度しか集まっておらず、開発資金が獲得できる可能性は低かった。一方でKennedy氏は、今後もプロジェクトをあきらめはしないことを誓っている。近い将来、「Retro VGS」のプロトタイプ版と共に戻ってくる予定であるという。


 

据え置きゲームソフトのメディアはすでにディスクへと完全移行し、次なる世代ではダウンロード購入用のHDDのみが搭載された機体が登場するのではともささやかれている昨今。この時代の流れに真っ向から立ち向かうプロジェクトが海外でひそかに進行している。カートリッジ式の新型ゲームハード「Retro VGS」だ。開発チームは製品化を実現するため、現在Indiegogoにて195万ドル(約2億3400万円)の資金獲得を目指すクラウドファンディングを実施している。

参考記事: 現代に蘇るカートリッジ式の最新ゲーム機「Retro VGS」今夏Kickstarterファンディングを開始

今年5月にその存在が明らかにされた「Retro VGS」は、いわゆる「Retron 5」のようなレトロゲーム互換ハードではなく、新しいカートリッジ規格と共に販売される新型ゲームハードだ。媒体がカートリッジのほか、インターネット接続ポートが存在しないのも特徴。つまり販売された「Retro VGS」では、インターネットを介してゲームのパッチを当てることも、本体システムのアップデートもできないのである。

この進みゆく時代と真っ向勝負するようなゲームハードを推進しているのは、レトロゲーム専門雑誌「Retro Magazine」を長年出版してきたMike Kennedy氏だ。Kennedy氏は「パッチの一切無いゲーム。かつてそうであったように、ゲームは発売前に徹底的にテストされる」「システムをアップデートすることはないし、八方塞がりになることもない。あなたのコンソールは工場から出荷された時のまま」とコメント。また「ネットワーク接続やゲームサーバーは必要無し。お気に入りのゲームが取り上げられたり閉じられたりしてしまう心配は無い!」「ダウンロードあるいはストリーミングコンテンツから来る隠れたコストも無し」と続ける。

ハードウェアのスペックを見てみると、PS Vitaや第3世代iPad、Surface RTなどにも使用されている「ARM Cortex-A9(“Quadrunner” 4-core 1.6 GHz 32-bit)」を中心に、32-bit DDR3-800の1ギビバイトメモリなどで構成されている。セーブやスコアなどのデータはすべて基本的に外部、カートリッジかUSBサムドライブに収納される予定となっている。インターフェイスには電源アダプタを始め、サムドライブを接続するためのUSBポート、クラシックハードと互換のある9-Pinふくむコントローラーの接続ポートや、HDMIおよびS-Videoふくむオーディオ/ビデオアウトプットをひととおり備えている。

価格は限定500台の初期生産ブラックパッケージ版が299ドル、クラウドファンディング中の基本価格は349ドルとなる。PlayStation 4が国内で10月1日より34980円に値下げされるなか、ほぼ同価格帯の「Retro VGS」を購入するのはかなりコアなレトロゲーム好きに絞られると言えるだろう。とはいえ、レトロな最新ハード「Retro VGS」にかけるKennedy氏の熱意には凄まじいものがある。2013年からコンセプト設計や市場調査を続け、2014年にはメカニカルデザインや権利、ツールなどを購入した。その際に経費を節約するため、eBayにて「Atari Jaguar」の型を入手したという。「Retro VGS」が同ハードのデザインに似ているのはそのためだ。

OUYAの際も問題となったが、新型ハード最大の焦点はソフトウェアのラインナップだ。Kennedy氏は、E3 2014で見たインディーゲームの盛り上がりから「Retro VGA」が生き残る可能性を感じ取ったようで、その方向性のタイトルを模索している。現在リリースが決定しているのはいずれも2Dドットビジュアルの作品ばかりで、比較的有名ドコロでは『Shantae and the Pirate’s Curse』や『Double Dragon Trilogy』などが並ぶ。今後「Retro VGA」が盛り上がりを見せることができるのなら、さらに著名なデベロッパーたちが参加することになるだろう。確かにKennedy氏が目をつけたインディーゲーム市場は、2Dビジュアルのゲームで溢れかえっている。

ただそれ以前に、今回の195万ドルの獲得を目指すIndiegogoキャンペーンは、現時点のペースでは初期目標ゴールを突破することも出来なさそうだ。はたしてレトロゲーム愛に溢れた男のレトロ新型ハードがこの世に放たれるのか、続報に注目したい。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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