『Obduction』度重なる延期を経てついに発売、23年前のパズルアドベンチャー『Myst』の精神的続編

アメリカのゲーム開発スタジオCyanは24日、異世界の謎を探索するパズルアドベンチャーゲーム『Myst』の後継作、『Obduction』をPC向けにリリースした。Kickstarterにて目標額を大きく上回る資金を獲得したタイトルで、VRにも対応している。

アメリカのゲーム開発スタジオCyan Worlds(以下、Cyan)は24日、異世界の謎を探索するパズルアドベンチャーゲーム『Myst』の後継作、『Obduction』をPC向けにリリースした。同社のアイデンティティともいえる『Myst』の発売から20年となる2013年に発表されたタイトルで、クラウドファンディングにて初期目標額の110万ドルを大きく上回る開発資金を獲得。VRヘッドマウントディスプレイOculus Riftにも対応している。

 

『Myst』から始まった20年の歴史

『Obduction』は、1993年の『Myst』と1997年に発売された続編『Riven』の“精神的続編”という構想の元、Cyanが開発を続けていたパズルアドベンチャーゲーム。2013年10月にKickstarterのキャンペーンで十分な成功を収め、Oculus Riftを使ったVRへの対応も実現した。過去シリーズ同様、全てが謎に包まれた未知の環境にいきなり放り出されるというコンセプトを継承しており、本作ではエイリアンに誘拐された主人公が元の世界へ帰る方法を求めて異世界を探索することになる。ゲームエンジンにはUnreal Engine 4を採用しており、風光明媚かつ幻想的な世界観が一人称視点で描かれる。当初は2015年の発売予定だったが、度重なる延期の末、2016年8月24日に満を持してリリースされた。対象プラットフォームはMicrosoft WindowsとOS Xで、価格は29.99ドル。公式サイトのほか、Steam・GOG・Humble Storeから購入できる。なお、Macintosh版は後日リリースされる予定。

Unreal Engine 4が描く幻想的な光の演出
Unreal Engine 4が描く幻想的な光の演出

原点となった『Myst』は元々、ハイパーテキスト(複数のテキストを相互に関連付ける仕組みのこと、他の文書への参照情報をハイパーリンクと呼ぶ)という概念を広く知れ渡らせたMacintosh用アプリケーション、HyperCardを使って同プラットフォーム向けに開発された。プリレンダリングした3DCGをスライドショー形式で表示する演出や、QuickTime(Apple社のマルチメディアに使用されているライブラリのこと、アプリケーション動作の中枢を担っている)を活用した部分的な動的表現が特徴で、1993年当時のハードウェア性能では考えられないような美麗な3D空間の生成を実現している。プレイヤーを未知の空間に放り込む没入感や、当時としては斬新なゲームコンセプトが高く評価され、日本国内も含めて世界的なヒットを記録した。コンピューターゲーム史にその名を刻んだ歴史的タイトルの一つといえるだろう。

その後『Myst』は、Microsoft Windowsはもちろん、セガサターンやPlaystationをはじめ、3DO、Jaguar CD、AmigaOS、CD-iへ移植されている。2000年には、オリジナル画像を24ビットでレンダリングし直した『Myst: Masterpiece Edition』や、リメイク版『realMyst: Interactive 3D Edition』がPC向けに登場。最近では、Unityで動作する画質向上版『realMyst: Masterpiece Edition』が、2014年にSteamでリリースされた。このほか、2006年以降、PlayStation PortableやニンテンドーDS、iOSといった携帯機向けのリメイク作も続々と世に送り出されている。また、2012年からは、PlayStation Networkでも配信された。シリーズをとおして発売された続編は5作品に上る。

Ritsuko Kawai
Ritsuko Kawai

カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー。塾講師、ホステス、ニュースサイト編集者を経て、現在はフリーライター。下ネタと社会問題に光を当てるのが仕事です。洋ゲーならジャンルを問わず何でもプレイしますが、ヒゲとマッチョが出てくる作品にくびったけ。Steamでカワイイ絵文字を集めるのにハマっています。趣味は葉巻とウォッカと映画鑑賞。ネコ好き。

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