『Mighty No.9』が再度延期。膨らみ続けるプロジェクトと度重なる延期、問われるKickstarterの先駆者としての役割

Comceptプロジェクトリーダーの稲船敬二氏は1月25日に公式サイトにて『Mighty No. 9』の発売延期を告知した。主な延期の理由として、ネットワーク関連の不具合があげられている。

Comceptプロジェクトリーダーの稲船敬二氏は1月25日に公式サイトにて『Mighty No. 9』の発売延期を告知した。主な延期の理由として、ネットワーク関連の不具合があげられている。新たな発売予定日は2016年春であり、「現状から見ても2016年春の発売に変わりはない」と述べられている。

『Mighty No.9』は『ロックマン』の開発に携わった稲船敬二氏が、横スクロールアクションの開発に定評のあるインティ・クリエイツとタッグを組んだ新作アクションだ。2013年にはKickstarterで400万ドルの出資を集めたことなども話題となった。2015年には発売日が9月と発表されながらも延期、のちに新たな発売日が発表され2016年2月に発売予定だったが、またしても延期することとなった。

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今回の延期の理由であるネットワーク関連の不具合にかんして稲船氏は、「オンラインプレイのマッチメイキングに関する技術的な問題」と説明している。この問題の対処に時間がかかった要因としては、「対応機種が多くハードごとに解決方法が異なる」ことと「現在更新が終了しているゲームエンジンの調整を自分たちで行う必要があった」ことをあげている。一度目の延期の際にもネットワーク周辺のトラブルについて言及しており、マルチプレイヤーモードの問題であると過去のインタビューで答えている。開発チームも解決すべく取り組んでいたようだが、再び延期する結果となった。

 

肥大化し続けるプロジェクト

Destructoidは度重なる延期にかんして「『Mighty No.9』は将来のKickstarterの教訓にすべきだ」という記事を投稿し、稲船氏のKickstarterの利用について疑問を問いかけている。疑問のなかには、稲船氏がゲームのスケールを大きくしようとしすぎている点を特に強調しており、風呂敷を広げすぎているのではないかと懸念している。

稲船氏は、構想当初からマンガやアニメ、実写化や映画にも展開したいと語っており、メディアミックスを計画していることを示唆している。アニメと実写化についてのプロジェクトは具体的に進んでいるようだ。このスケールを拡大する計画はゲームにも反映され、コレクターズ・エディションの発売や他作品とのコラボレーション、さらにはamiiboへの展開など、目まぐるしく新たな計画が明かされている。

また、『Mighty No.9』は2014年に追加のクラウドファンディングを行っている。7月には「会話のシーンのフルボイス化」を目的としたものが、11月にはキャラクターの追加を目的としたキャンペーンが行われた。これらの要素が開発延期の直接的な原因とは断言できないながらも、ユーザーから出資を集め、さまざまな要素や展開が加えられプロジェクトが肥大化し続ける反面、肝心のゲームがいつまでもリリースされない状況にフラストレーションをためるユーザーがいることは否定できない。

mighty-no9-delayed-again-and-is-crtisized-too-expanded-002稲舟氏は2015年にも『RED ASH – 機鎧城カルカノンの魔女編 -』というゲームのプロジェクトを立ち上げている。同時にアニメ「Red Ash -Magicicada-」も発表されたメディアミックスを意識したプロジェクトであり、コンセプトアートのデザインから『ロックマンDASH』の精神的後継作ではないかと噂されていた。こちらのプロジェクトはアニメとゲーム別々にクラウドファンディングを行い、アニメのファンディングはイニシャルゴールの15万を見事に達成。ゲームは目標金額に満たなかったものの、ファンディング終了間際にFUZE Entertainmentから出資を受け、すべてのストレッチゴールを盛り込んだ製品版の開発ができるようになった。『RED ASH』プロジェクトは現在も進行している。

 

Kickstarterのロールモデルとして

当時Kickstarterは現在ほど日本で浸透しておらず、『Mighty No.9』の成功は、のちの『Bloodstained: Ritual of the Night』や『シェンムー3』といった国産ゲームプロジェクトの立ち上げに少なからず影響を与えたことだろう。そういった点では『Mighty No.9』は、日本のみならず世界で「Kickstarterのロールモデル」と認知されてきたといえる。しかし、今回の延期をうけて稲船氏の“利用頻度が高く、かつ製品化が遅いKickstarterの活用”は世界中で懐疑的な視線に晒されている。

稲船氏はあくまでプロデューサーであり、氏の判断だけですべての物事が進んでいるわけではないだろう。しかし広告塔としての役割を担っているゆえに、氏には真っ先に批判や責任の所在を問う声が投げかけられる。これらのほかにもXbox One向け『ReCore』など複数のプロジェクトを抱えている稲船氏。まずは『Mighty No.9』を発売することでKickstarterのロールモデルとしての尊厳を保ってほしいところだ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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