河野一二三ディレクション新作『Project Scissors』発表

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2014年度東京ゲームショウ一般公開日初日、閉幕後のINDIE STREAM FESから引き続き、会場から場所を変え(ホテルニューオータニ幕張)記者会見がひらかれている。『クロックタワー』シリーズの企画・ディレクションなどにたずさわった河野一二三氏の新作発表だ。その名も『Project Scissors』。河野氏は株式会社ヌードメーカー代表であり、Xboxを代表する怪作『鉄騎』や、プラチナゲームズとのコラボレーションによる『無限航路』などにも関わっていた。

「『クロックタワー』誕生から20年」のフレーズがプレスキットの一面に踊っている。『Project Scissors』は、その名がしめすとおり『クロックタワー』の、いわゆる"精神的後継"を目標とした作品のようだ。おもな参画クリエイターは、河野一二三氏(ゲームディレクター)・伊藤暢達氏(クリーチャーデザイナー)・清水祟氏(企画・ティザー映像演出)。伊藤氏は『サイレントヒル』シリーズのボスキャラクター"Red Pyramid Things"などを手がけている。清水氏は和製ホラー映画代表作『呪怨』の監督を務めた人物だ。

――"当たり前の日常が狂気の浸食により、鮮血と絶望の支配する空間へと変貌する…"そんな恐怖が、今回集結したスタッフの手によりユーザーの手へと届けられます。

舞台はとある洋上の豪華客船。この脱出不可能な閉鎖空間で、発生した第一の惨殺事件。果て無く被害者が増え続ける中、生き残ることはできるのか…。

この段階で、『サイレントヒル』成分と『クロックタワー』成分の融合を感じる。そもそもタイトルに「Scissors」とあるのだからどちらかといえば『クロックタワー』を強く想起させるし、(一見するとほぼ)脱出不可能な空間での連続殺人といえばやはり同作である。しかし、「正気が狂気に侵される」といえば『サイレントヒル』だ。

『Project Scissors』の開発はヌードメーカー。ジャンルは「ホラー・アクション・アドベンチャーゲーム」。対応予定プラットフォームは PlayStation Vita、スマートフォン、タブレット(原文ママ)。名前の挙がっている2タイトルはどちらかといえば据え置き機のイメージが強いが、今作はコンパクトで持ち歩き可能な恐怖を目指しているのかもしれない。

 

19:45 会場入り。20:00開始と聞かされていたが誰もいない(そのころINDIE STREAM FESで本作の発表があったよう)

20:00 21:00開始になったと聞かされる。会場には酒と軽食が用意されている。

21:00 ようやく取材陣がそろい始める。驚くべきは海外勢の多さだ。記者のうち日本人はおそらく半数未満だ。これが『呪怨』の力なのだろうか?

21:15 会場からは英語しか聞こえてこない。そして「21:30からスタート」のアナウンス。

21:30 ようやく開始。ジョセフ・チョウ氏。SOLA DIGITAL ARTS社長にして、本プロジェクトのプロデューサー。日本語で。2か国語進行!  

チョウ氏:
ちょうど6か月前に始まったプロジェクト。ここまでになるとは思っていなかった。中心人物である河野氏と清水氏へのQ&Aでお話をできれば。

河野氏:
ようこそ来ていただいてありがとうございます。ヌードメーカーディレクター河野一二三です。

清水氏:
清水です。ありがとうございます。よろしくお願いします。(英語圏的笑い、司会から「One more beer!?」)

河野氏:
『クロックタワー』の逃げる・隠れるをより進化させたアイデアがひらめいたとき、あらためてホラーゲームを創りたいと思い始めた。これが5年前のこと。そのころホラーゲームといえば新しいIPに対して予算が下りることがなかった。パブリッシャーにそういう認識が広がっていた。今回ジョセフ氏とあって、インディーとして挑戦してみないかと言われ、なるほどと。予算少なくても面白いホラーゲームを、と思いプロジェクトを始動させた。

清水氏:
河野さんとジョセフとが組んでやろうという世界観があった段階がある。そこに参画できる、タッグを組めるクリエイターとしてあとで呼ばれた。僕自身ゲームを創ったことがない。業界にも疎い。どういうふうに役立てるのか、という部分はあるが。だがJホラーとよばれる、日本でこそ発信できたホラー映画をゲームに取り込んでいきたいとうかがって。しかもインディーであると。しっかりした予算があるわけでもない、という精神性に惹かれた。そしてタッグを組むことにした。

チョウ氏:
追加の説明をしたい。『クロックタワー』というブランド・IPを築き上げた河野さんだが、独特のゲームにたずさわってきた。『鉄騎』など、普通には想像できないゲームだ。じつは河野さんのことは私は三上真司さんとの付き合いで話を聞いていた。どうやって『鉄騎』プロジェクトが成立したのか? などの打ち合わせの話などを聞いて、いつか会いたいなと思っていた。そこに縁あってお会いできた。そして、世の中にない面白いゲームを創ろうという気概があったというか、意見が合致したというか。いま映画もゲームもそうだが、インディーと巨大タイトルはわかれてしまっている。そこで、『クロックタワー』の河野さんに白羽の矢がたった。サバイバルホラーはどんどんアクションアドベンチャーに寄っている気がする。それはすこし違う気がする。そこで究極のJホラーをやりたい、と思った。そこで清水氏の名前が浮かんだ。手を組んだらできるんじゃないか、となってご連絡した。で、今回みたいに酒飲ませて酔っ払ったときにYESと言わせると(笑) そうしてチームが構成された。河野さんの業界での信頼関係はあつい。大型タイトルにしばられたクリエイターがフラストレーションを感じていることはある。これからも次第に(そのフラストレーションを解消するがごときタイトルを)発表していきたいなと思う。すばらしい日本のクリエイターが集まり、インディーズの良さを発揮できる。いまのシステムでなかなかできないものをできる、と期待している。そこに清水監督が演出やアイデアを出してもらえるだろう。ベクトルがちょっと変わるかもしれない。有機的な状況だ。方向的には決まっているが、面白い展開になるだろう。みなさんに期待していただきたい。

 

質疑応答へ。

Q: なぜ日本のホラーゲームが出てきているのか?

河野氏:
僕が創るの決めたからみんな真似してるんじゃないの?(会場爆笑)

チョウ氏:
三上さんへ河野さんが会いにいったとき、「こんなものしかないのか」ってずばっと言われて、それのカウンターとして出したのが『鉄騎』だ。ホラーというのは、ピュアに考えると低予算のものだ。すぐに挑戦できる。だからといってなんでもいいものになるわけではない。それなりのアイデアがなければ、そもそもこのゲームプロジェクトは始動していない。『クロックタワー』の魂を引き継ぐというのが第一であって、トレンドとは別だ。ただ、ホラーは、人に直接刺さりやすい。

 

Q: 昨今のホラーゲームのトレンドは、『クロックタワー』以降変わってきている。アクション要素が強いものによせるのか、それとも純粋なホラーにするのか。

河野氏:
アクション性の強いものといえば、ゾンビを題材にしたものですばらしいものがたくさんある。あるいは、アクション性はやや弱いが、『サイレントヒル』も『フェイタルフレーム』も僕は好きだ。だが、ホラーの皮を被っただけのFPSとかはまったく好きになれない。いま挙げたゲームはすばらしいから、それがひとつあれば十分。僕が新しくホラータイトルを創るのであれば、元祖『クロックタワー』の特徴、逃げること隠れること絶対的な恐怖を表すホラーゲームにしなければ意味がない。だからそういう方向になるだろうし、時代の流れから外れるかもしれない。だが、だからこそインディーでやる意義がある。

 

Q: インディーはワンアイデアだったりする。逃げることの怖さを突き詰めたようなタイトルは比較的多い。今回のプロジェクトは「逃げる」を突き詰めた体験にするのか、それとも総合的なホラーにするのか。

河野氏:
『クロックタワー』は3作目で"総合的な感じ”のゲームにシフトしたときに、……言っていいのかわからないけど、「これは違うな」と正直言って思ったので(会場笑) 僕は、逃げる・隠れるからもう一歩進化したシステムを思いつかないかぎり『クロックタワー』的なものを創るまいとしていた。だが、そこにべつのアイデアを思いついた。だから、もう一歩突き詰めたものになるだろう。

 

Q: 清水監督におうかがいしたい。突き詰めたところに共感されたのかもしれない。映画で怖さを突き詰めるとき、おもにシナリオ面でのご参加・ご協力ということになるのか?

清水氏:
現段階でお話できるかぎり、ということになるが。ベースとなる背景や世界観は河野さんからある程度聞いた。そのうえで、であれば恐怖の対象となるモンスターやゴーストの生まれた背景はこうだったりする、じつはこういうものが登場する、ストーリー上のちのちこういう展開があるかもしれない、というアイデア出しはさせてもらっている。それはホラー映画を創る映画監督として聞かせて欲しいということで、いろいろ話はさせていただいている。

チョウ氏:
補足する。「こうしたストーリーで創っていきたい」というのをお二人で議論していただいている。ホラーというと両名ともに良いセンスをお持ちだ。だが、最近のゲームはシネマが強く反映されている。そこで、違うベクトルを持っていく際に清水さんの力が発揮され、ゲームでは河野さんが力を発揮する。両者が協力する。ゲームと映画、どちらのベクトルになるかは議論されていくことだ。

 

Q: インディーの形態になることで、これまでの映画作りやゲーム創りと異なる部分があると思うが、どうか。

河野氏:
うーん(「One more Beer!?」) ……とりあえず、めちゃくちゃ人を殺せると思う。それと、なんだろう……おカネがないぶんの不自由さはあるのだが……僕が信じるパートナーたちとゲームを創っていけるというのは新鮮な体験であり、すばらしいことだ。営業や宣伝、マーケティングの意見がわれわれのゲームに入ってくることはないだろう。

清水氏:
たしかに難しい質問だ。いろんな要素がある。僕がこれまでゲームありきの映画のオファーをいただいたりしても、自分から興味をしめすことはなかった。今回はゲーム自体も世界観をふくめゲームクリエイター河野さんと一緒に入って欲しいということだったので、それであれば自分もなにかできるかもしれないと思った。もし意見が食い違えば、「なら映画でやってやる」となるかもしれない、そんな可能性を感じた。原作もののファンタジーをやってみたり、アメリカからのオファーをこなしたりもしてみた。だが、もともと日本の低予算Vシネマ『呪怨』をやったとき、とにかく怖ければいいというオファーだった。「だったらこうやればできる」と、おカネがないぶん好き勝手自由にやれた。最初はなんの反響もなかった。インターネットもまともになかった時代だ。こういうタイトルがVシネマあるらしいんだけど!と口コミで広がった。発想さえ自由でオリジナリティがあれば広がるという実感があり、それで映画デビューした。そういうところに精神的に立ち返れるという思いも個人的にはある。

 

Q: 『クロックタワー』は女性のヒロインを中心に繰り広げられる。近年は女性キャラの概念が変わってきている。強さのある人だったりする。どのように強さを持たせるのか?

河野氏:
今回も中心になるのは女性キャラクターだ。だが、僕も時代の流れを感じている。自立していて強い女性が時代の流れとしてあるものだ。今回、メインヒロインの設定がかなり面白い。メインヒロインのキャラクター性が物語が進むごとにどんどん変わる。これは自信をもって面白いキャラクターができたと思っている。期待してほしい。ま、僕がつきあっている女性もすごく強いので(会場笑) ここに歯型がついているので(会場アメリカンな爆笑)

 

Q: プラットフォームについて。現状Vita/iPhone/Android、いわゆる携帯端末向けのようだが、それにより何らかの深い体験を得られるか?

河野氏:
逃げる・隠れるについて、携帯端末の操作性を活かしたものをいれている。なので、それらを選ぶ意味はある。だが、われわれもより多くの人に届けたいので、可能であれば据え置きハードにも出したい。だからおカネもっとください(笑)

 

Q: ホラー映画を作ると観客が観ているだけだ。ホラーゲームにはインタラクティブ性がある。それらにはどういう違いがあるか。

清水氏:
これまた難しい。根本的に違うところがある。映画は、生身の人間が演じて、その場の空気もあり、撮影のときの空気もある。そこでしか生まれない、生々しい、「レアリティ」がある。その恐怖をどう映画に取り込むか、ということになる。ゲームではライブアクションはできない。ただし自分でコントロールできる。能動的に動ける。映画の主人公は自分の意志と関係なく動くこともあるしそうでないこともある。だがゲームの場合、自分自身になる。シナリオが編集され終わっている映画とは違う恐怖が存在すると思う。そういう意味では、映画にはできない恐怖がありうる。そのあたりを河野さんとゲームに対しいかにサポートがするかが大事だと考えている。

 

Thank you very much!!

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