Deep Silverは5月20日に『Homefront: The Revolution』を発売した。本作は、他国に占拠され崩壊したアメリカを舞台に、祖国を取り戻すレジスタンスの戦いを描くオープンワールドFPS。前作である『Homefront』は260万本を売り上げたということもあり、続編には期待がかかっていた。しかし発売までの道のりは大変険しく長いものであった。
そもそも前作の『Homefront』はTHQから発売されており、現在のパブリッシャーのDeep Silverではなかった。ご存知のかたも多いと思われるが、THQはのちに倒産してしまい、2013年に同ゲームのIPは5000ドルの金額で、ともに続編を開発していたCrytekに譲渡される。しかしこれで悲劇は終わらなかった。譲渡先であるCrytekもまた経営難によって『Homefront』IPの売却を検討し、もともとパブリッシャーとして契約していたDeep Silverの親会社Koch Mediaに権利が渡ってしまう結果となった。IPが譲渡される際はスタジオとアセットもすべて移るという形をとっており、開発スタッフは変わっていないとみられている。しかしながら、販売元が二度も変わるという出来事に遭遇したタイトルはそう多くなく、発売前から波乱万丈であったといっても過言ではない。そして開発チームは最終的に2014年5月からDeep Silver傘下のもとDambuster Studiosという名のスタジオとして再出発し、2016年5月に『Homefront: The Revolution』は発売される。
その複雑な背景から、開発の苦労を感じさせた『Homefront: The Revolution』だが、やはりその予想は間違っていなかったようだ。ゲームのスタッフロールには開発の歴史の困難さを裏付けるかのように、ディレクターであるHasit Zala氏の溢れんばかりの想いが綴られている。
Just beat Homefront: The Revolution. It ends with a note from the director acknowledging its troubled development. pic.twitter.com/dhau7Cap5u
— The Only Cockroach in Tokyo— aka *Champ AF* Tanner (@DrKarateChop) May 18, 2016
“『Homefront: The Revolution』は4年以上開発されており、その道のりがスムーズではなかったことを知る人も少なくないだろう。最初のパブリッシャーは会社を精算することになり、スタジオの保有者が変わった。しかし、僕らは取り組みを続けた。困難な時期が続いたが、鍵となる人々はIPの信念と名誉を守り続け、開発チームの力によって質のあるゲームが生み出せた。特にKlemens Kundratitz氏とHuw Beynon氏の揺るぎないサポートには感謝したい。彼らなしにこのゲームが発売されることはなかった。”
ほかにもZala氏は不屈の精神で開発を続けてきたスタッフに向け改めて礼を述べ、比較的小さなチームであるにもかかわらず複雑な大作を作り上げたチームの力を賞賛。またゲームにかかわったすべての人に対しても深い感謝を表明している。最後には「これは始まりである」という力強い言葉も添えられている。
文中に出てきたKlemens Kundratitz氏はDeep SilverのCEOであり、Huw Beynon氏は同じくDeep Silverのグローバルブランドマネージャー。さまざまな困難を乗り越えた背景にはDeep Silverファミリーの力強い支えがあったのは間違いないだろう。
PC版にかんしては、ローンチ当初に日本語音声の問題などさまざまな不具合を抱えていたが、アップデートによって徐々に修正されつつある『Homefront: The Revolution』。賛否両論の声があるものの、オープンワールドを彩るグラフィックやライフの制限、難易度から生じる独特の緊張、柔軟な武器のカスタマイズなど光る部分も多い。「これは始まりである」という言葉どおり、Dambuster Studiosのさらなる巻き返しに期待を寄せたい。